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91. Zoom授業雑感(Week 3)

1.今週の要約

ヒジュラ暦1441.8.10 (2020.4.2)

今週も長いので、要約を。

サウジでは遠隔授業も3週目になった。教員も学生も遠隔授業に慣れてきた。良くも悪くも慣れた。徐々にリアル教室での学生のふるまいが、同じようにオンラインでも見えてきた。遅刻、欠席が通常と同じように出始め、出席と見せかけ途中消えたりなどが見られるようになってきた。

ただ、少し学生にも同情するのは私自身、学生の時に大学の時間割すべてをオンラインで受講したことはなく、90分近くけっしておもしろいとは言えない中継を見なければならないのは、大変だろうと思う。

これまで自分が学生として受けてみたオンラインコースの10分程度の細切れの動画でさえも、2倍速で見たりしていることを考えると、途中、作業を入れたりするとはいえ、10分以上スクリーンを見るのって、つらいと思う。そもそも学生がPCやスマホで見ていたコンテンツは楽しいものばかりだったはずだ。それに比べると、多少準備したとはいえ、60分や100分の「授業」というコンテンツは長すぎる。

私の授業では、Zoomで学生がビデオを使わない問題がでてきたため、今週は
①ビデオの背景を変えてみる。
②AI肖像画で学生のプロファイル画像を変えてみる。
という2つのことを試した。

結果、顔情報は大切だと思うに至った。

あと、大学の新学期が近づいてきたこともあるのかnoteを始め、いろんな媒体でzoom授業にまつわる知識や経験の共有記事が増えてきた。今週、見たり読んだもの中で特によかったものを最後にあげておきたい。

2.Zoomで学生がビデオを使わない問題

先週から言っているのだけど、zoomで授業をしていて思うのは、学生の反応が見づらいことだ。パワポのスライドなどを共有していると、こちらでは参加者が数名しか見えない(だいだい授業は20名程度参加)。ビデオ参加してたら、まだ表情が見えて、ついてきているかどうか反応も見えるが、3週目ともなると、授業によっては全部の学生が音声のみで参加している。どうも話を聞いていると、こちらの先生方でも音声のみで授業をされている方が多いようだ。文化的なことも関係あるのかもしれない。家や家族の様子が見えてしまうのをよしとしない人もいるだろう。

というわけで、ビデオ参加を強制はできない。それなら顔を出したくなるような仕掛けをと言うことで一計を案じた。

① 背景変えてみようよ

Zoomではビデオ会議などで、自分の居場所の背景を見せたくない人のために背景が変えられる機能がある。

まずは私がいつもとは違う背景で登場し、学生にも「みんなの自慢の背景を見たいなぁ」と言えば、どこからか写真を持ってきて背景に使うだろうと。そうすれば、自動的にビデオ参加になる。しめしめ。

そこで、私はちょうど桜がきれいな季節ということもあり、自分の写真の中からこの写真を選んだ。

画像1

この中心に私の上半身が映る感じになった。授業の前にベテランの同僚の先生とzoomで話す機会があったので、これで登場したら、いたく感動されて「それ、どうやってやるんですか?」「やぁ~桜いいですね~」と上々の反応だった。

桜を背景に私が登場し、学生が興味を持ったところで、「みなさんも好きな背景持ってきてください」と言ってみよう。その作戦でスタート。

一つ目のクラスは、全員がビデオ参加しないクラスで、私のzoom授業の中では最も反応が薄いクラス。授業開始になり、さっそうと桜のど真ん中に登場。開始20分、誰も学生が背景に触れてこないので、そのまま、日本の花見や桜の話をして、それで私の今日の背景は桜なんですと、自分からべらべらと話すことになった(笑)そう、私は忘れていたのだ。どうもこちらの学生は「花」というものにそれほど関心がないのだ。そのことは以前、書いた。

ここは、zoomのデフォルトの背景にある、「オーロラ」かなんかで登場した方が効果的だったかもしれない。これは、私の画像の選択ミスだ。

もう一クラスで試したところ、今度は反応してくれて、じゃあ、次の時間までに、自慢の背景を探してきてくださいと言って宿題にした。そして、いざ次の授業になってみると、10人中5人くらいで問題が発生

1.スマホの縦置きで授業に参加すると画面の大半は学生の姿が映るため背景を変えてもあまり見えず、いまいち盛り上がらない。
2.学生のいる環境によって、人間と背景をうまく判別できず、学生の中に写真が映りこんだり、学生がちらついて映ったりと、見にくくなってしまう。
3.スマホの機種によっては、機能的に負担がかかり実行できない?

というさんざんな結果に(笑)自分で試した時に、うまくいってしまった分、環境によっては、こんなにできないとは予想していなかった。

② ビデオじゃないくていいから、顔を見せて

というわけで、ビデオの背景を変えるのは、いまいちだった。もしかしたら、私がビデオにこだわりすぎているのかもしれない。もう、いいじゃないか。NHKのラジオ講座的に聴いてもらえばとも思ったのだけど、でも、私が無反応なスクリーンを見ることで乗り気になれないのなら、それは彼らにとっても損なはずだ。

それに、他にもビデオ参加しないことには問題があって、今回、初めてzoomを使い始めた学生もいて、特にプロファイル画像も設定せずに使っている。そうすると、こちらのPCの画面には授業中、彼らの名前が黒のバックに白字で表示される。

それがファーストネームだけだったりすると、これが大きな問題で、こちらの学生は、同じ名前の学生がとても多いのだ。つまり私のPCの画面には、「ムハンマド」という名前の学生が何人もいて、どのムハンマドさんかわからない。画面の下により多く名前が表示もされるのだけど、小さくて視認性に乏しい。

せめて、プロファイルに顔写真ぐらい見せてほしいとも思った。ただ、これでも問題はありそうで、遠目の写真だったら、結局わからない。結果的に授業中、学生がこちらを呼び掛けた時に声だけで当該学生を判断しなければならない。そこに私の認知的資源を使うのは、あまり好ましくない。

そんなことを、考えている時、ちょうどこんなものが流行ってると、流れてきた。

知らない人のために説明すると、自分の写真をこのページに持っていくと、AIが西洋風の肖像画に変えてくれるのだ。

私はまた一計を案じた。学生にここで自分の肖像画を作ってもらって、プロファイル画像にしてくれたら、私は学生の顔を見ながら話せるし、学生も自分の顔写真をでかでかと出さなくて済むという、両者の絶妙な合意点に達しそうな、そんな予感がした。

早速、学生に試してもらったその結果が下の写真。私のPCにいつもの教室が戻ってきた。

スクリーンショット 2

*上段のビデオ参加の学生及び、学生の名前等は加工処理している。

私の個人的な感想を言えば、"決して悪くない”。ちょっとした美術館に来た気分だ(笑)ちなみに私の学生は全員男子学生。

何となく学生の特徴をとらえているため、どの学生かわかるし、肖像画だけあって、みんな比較的こちらを見ている。視線がこちらに向いているのだ。

これは学生側にも意味があった。ビデオで参加していない学生だと発言しても、他の学生たちも今、誰が話しているのかわかりにくい。しかし、肖像画だとzoomのスピーカービューにすれば、話している人が大きく表示され、そこに肖像画が映りわかりやすいのだ。

写真の大きさも、均一になるので、見やすく、全体的に統一感があるので、バラバラな背景の学生の写真が並ぶよりも一覧性に優れているようにも感じた。

私的には、これは一つの解決策かなとは思ったものの、これはこれで問題もあって、必ずしもうまく肖像画が出てこず、学生が満足しない場合があること。また、これはもろ刃の剣なのだが、結局、これは目くらましともいえるわけで、寝ている人のまぶたに目玉を描いて、私、起きてますと言っているのと似たよう気もする。つまり、私はなんとなく学生が目の前にいるつもりになるのだけど、当の学生は画面の向こうで何をやっているかはわからないのだ(笑)下手に、顔が出ていることで私が油断してしまったような気もしなくはない。

3.今週、特に勉強になった発信

今週はZoom授業関連の記事や動画がたくさん日本語で出てきた。個人的に特に参考になったものをご紹介。

藤本かおる先生の動画で、どうやって遠隔授業したらいいか、ご自身が担当されている授業を中心に提案されている。動画の24:00ぐらいから始まる語学科目担当の先生向けの「サンドイッチ方式」の提案が、参考になった。

角南先生の以下の部分に特に共感した。

優先したいこと
・学習者がスマホのみ+貧弱回線でも問題を最小限に
・リアルタイム&双方向は、どうしても必要な場面に限定
・教師にとって再編集・使い回しがしやすいフォーマットで

スマホだけで受講している学生が、確かに私の学生にもいて、教室で使っているスライドを見るには、かなり不便な印象がある。また、教材や音声ファイルを同時に扱うといったことはスマホだけだと難しそうなので、このあたり配慮が必要。

また、この状況になって、便利なアプリなどたくさんある情報もよく見聞きするのだけど、すべてを試している時間もない。そんな中で、角南先生は入手しやすく、汎用性が高いものを選ばれている気がしていて、参考になった。

ビデオで授業をする際に、学生の通信環境にも配慮する必要があるのだけど、この辺りの数値に詳しくないので、大向先生のtweetは参考になった。

[大学] オンライン授業における著作物利用の注意
Independent Librarianの小嶋智美さんのスライド。これまで教室で使っていたスライドをそのまま、オンラインに持ってくると問題が出てくるかもしれないから気をつけなきゃという話。

<終わりに>
今週試した方法は、どの方法も本質的な解決ではないかもしれないが、ずっとPCやスマホを長時間、見つめている中で、ちょっとした笑いも生まれたし、よいtryだったと思う。これまで対面授業で関係を作ってきた教員と学生なので、遠隔授業でも声だけではない顔情報も大切だと3週目にして思うようになった。

Portraits Create False Rapport



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