タンゴ歌謡の魅力①ブエノスアイレスの小さな喫茶店
タンゴの歌はご存知でしょうか?
「タンゴってダンスでしょ?」と思われるかもしれませんが、歌謡曲としてのタンゴも実は非常に奥が深く、味わい深いもの。
ルンファルドというブエノスアイレス特有のスラングが入り混じったスペイン語で歌われるため、日本人には少しとっつきにくいかもしれません。
しかし詩的な表現や独特のシニカルな視点、演劇を思わせるような雰囲気は、昔の文学作品などが好きな人には親しめる内容かもしれません。
このnoteでも、これからいくつかのタンゴの歌の世界を紹介していこうと思います。
ブエノスアイレスの小さな喫茶店
Cafetin de BuenosAires
1948年、マリアーノ・モーレス作曲、エンリケ・ディセポロ作詞。
ディセポロは「ジーラ・ジーラ」「ウノ」など、世の中の理不尽への怒りをこめたような独特のシニカルで風刺的な作風で知られる作詞家。
劇作家兼俳優でもあったからか、その詩の世界はどこか演劇の長い独白の様な雰囲気が漂っています。
厭世的な歌詞の多いディセポロですが、この「ブエノスアイレスの喫茶店」は毒はやや抑えめです。
歌の舞台はブエノスアイレスの下町の小さなカフェ。
子供のころはだれしもカフェやバーなどの大人の世界にあこがれを持ちますが、小さなカフェにあこがれていた少年はやがて成長し、そのカフェに出入りするようになり人生と挫折を学ぶ・・・
タンゴは遠い異国の音楽なのに不思議と情景が浮かんでくるような作品が多いですが、この曲も誰もがおぼえのあるような青春のほろ苦い1ページを描いています。
子供のころは手の届かない場所のように、窓に鼻を押し付けて覗き込んでいた小さなカフェ
やがて大人になると、そこはまるで学校のように驚くようなことを教えてくれた
タバコ、夢を信じること、愛への希望・・・
どうしたらこの嘆きの中で君を忘れられるだろう?
ブエノスアイレスの喫茶店、もし君が僕の母親のようなものなら
君の物知りと自殺者の奇跡のようなブレンドの中で
僕が学んだのは哲学、サイコロ、ばくち・・・
そして自分のことはもう考えないという残酷な詩!
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