タンゴ歌謡の魅力②ノスタルヒアス
「ノスタルジー」という言葉にはなんとなく昔を懐かしんでほっこり…というイメージがありますが、タンゴにおけるノスタルジー=Nostalgiasは激しい慟哭をともなうような強い感情を巻き起こす言葉のようです。
それはかつて思い焦がれて手に入れられなかったもの、喪失してしまった愛や夢、今はもう自分のもとを去って二度と手に入らないもの・・・タンゴとはこのようなノスタルジーを描き出す音楽ジャンルと言ってもいいでしょう。 単なる懐古趣味とは一線を画すのです。
さて今日の一曲はそのものずばりのタイトルである「ノスタルヒアス」。
1935年フアン・カルロス・コビアン作曲、エンリケ・カディカモ作詞。
発表当初は「音楽的に複雑すぎてタンゴらしくない」と同業者からは評判が悪かったようですが、案に反してアルゼンチンばかりか南米各地で大ヒットとなりました。
失った愛への捨てきれぬ激しい思いをうたい上げたタンゴ歌謡の傑作のひとつです。
『哀しい孤独の中、私は青春のバラが枯れ落ちるのを見るだろう』
という歌詞に強烈な情念がこもっています。
まずは名歌手カルロス・ガルデル。
彼の張りのある声と自由自在な間の取り方、独特のリズム感は、他の歌手が生半可にまねできるものではありませんね。
よい歌は楽器で演奏しても良いものです。
こちらは名門楽団セステート・マヨールによる見事なインストルメンタル版の演奏。
アストル・ピアソラによる一筋縄でいかない独特のアレンジ。
ピアソラは時代を先取りしたような斬新なタンゴを数多く生み出したコビアンの作品を重視していたようで、彼の作品のいくつかを編曲しています。
なんとあのプラシド・ドミンゴも歌っています。
ドミンゴが歌うとまるでオペラですね。
タンゴとは「3分間に凝縮されたオペラ」と言えるのです。
最後に私のお気に入りのアレンジ。
スタイリッシュなアレンジで人気のギタリスト、エステバン・モルガドの楽団の演奏です。 オリジナルなイントロがかっこいいですね!
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