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本は読むためだけのものじゃない

本は“読む”ものだ。この一文に疑いを持つ人はほぼいないだろう。かくいう自分もそうだった。しかもここでいう“読む”は、一人で読む。頭から順々に読む。黙々と読む…という感じではないだろうか。

本を読むという概念が覆された

生まれてこの方、20年以上、本とはそういうものだと思っていたけれど、“ペア読書”と出会ってその概念が根底から覆された。

ペア読書の詳細な解説はこちらをご覧いただきたい。

ざっくり概要だけ説明すると、
・同じ本を
・2人で
・30分で読み、30分で語り合う
という流れで行われる読書だ。

やり方を知った当初、これはぜひとも試してみたいとやってみたところ、あまりの衝撃に笑いが止まらなかった。これは面白いと思った。本を読んでいる行為自体はそこまで変わらないのに、体験としてここまで違いがでるものか、と。

ペア読書のメガネで本を見る

ペア読書にドハマリしたために、なんでもかんでもまずはペア読書のメガネで見てみるようになる。これも、とてもおもしろかった。例えば書店に行って、本を見たときに、ペア読書のメガネを通してみると、全く違う景色が見えるのだ。

今までは、本を見る観点はといえば、自分が興味あるかどうか位のものだった。しかし、ペア読書という観点を得ると、“この本”を“あの人”とペア読書したらどうなるだろう?などと考えて見るようになる。

従来は
 自分(固定値) × 本(変数)
…というふうにしか見えていなかったものが、
 自分(固定値) × 本(変数) × あの人(変数)
…というふうになったといえる。

これはある意味、一人用のゲームに二人対戦のモードが加わったようなものかもしれない。一人用のゲームは、自分自身が楽しみの限界を決めてしまうが、そこに他人とのインタラクションが入ってきたときに、その限界は何倍にも広がる。さらにペア読書は、ゲームと違って制約はない。語り合うフェイズでは特に制限などないので、誰とするかによって無限の可能性があると言っても過言ではないだろう。

本を読まずに本を楽しむこと

先日、代官山蔦屋書店で開催された「五〇〇書店」という企画のトークイベントに参加した。「五〇〇書店」の企画者でもあり、第一回「五〇〇書店」の選書をした若林恵さんがしていた話が印象的だった。

『本を買うのが好き。あと、この本面白そうだな〜と、未読のときに感じた期待を、未読の状態で抱き続けても、別に良いのでは?』

ああ、なるほどなあと思った。ペア読書によって、本を読み方の既成概念が覆されたが、そもそもからして、本を読まずに楽しんでもいいんだなと。
本が「読むという行為と、あまりに強く結びつきすぎているがために、「読む以外の行為」になかなか光が当たらないが、よくよく考えるとアリだなと思えてくる。積ん読だって、立派な本を楽しみ方といって良い。本を読んでいないことに引け目なんて感じなくて良い。

プロダクトとしての本

代官山蔦屋書店からの帰り道、Twitterでこんな投稿を見た。
明治大学の准教授、渡邊恵太氏のツイートだ。
(界隈の人には、「融けるデザイン」という本の著者として有名)

https://twitter.com/100kw/status/1100278335387578368

これもああ…と思った。思うに、文字情報を伝える…という観点からのみ考えれば、物理的な書籍というのは全くの非効率で、電子書籍の方が良いのだけれども、だからこそ、物理的な書籍が持つ、物体としての魅力が逆説的に?際立っているのではないか。

先の「五〇〇書店」でも、その場で買えない本に関しては、Amazonで検索してほしいものリストにメモするなどしていたのだが、棚で見かけた本から受ける印象と、スマホの画面上に表示されている本から受ける印象は、全くと言ってよいほど異なるものだった。店で見かけて、「おっ、この本面白そうだな」と思っても、スマホの中だとその輝き(面白そうさ)が減じて見えるのはなぜなんだろう。

やはり、物理的な本には、もうそれそのものに魅力があるといって良いのではないか。装丁、厚さ、表紙のグラフィック、タイトル、帯の文、裏表紙の紹介文…そういう、本という物理的な物体を成り立たしめるアレコレの要素が、情報伝達のための媒体というよりも、ひとつのプロダクトとしての魅力を出しているのは間違いないと思う。

ここまでの話を踏まえると、「本を雑貨として、プロダクトとして楽しむ」という行為は、なくはないと思えてくる。お気に入りの雑貨を買って、あるいは植物を買って、家に置いてみたりするように、本をそういう対象として捉えても悪くはないんじゃないか。

本をインテリアとして使う…というと、なんだか妙に浅いような感じがしてしまうが、それは「本は読むものだ」という常識に強く囚われているがためで、なんら否定されるものではないだろう。カッコイイ本買って、飾って気分良くなって、なんならたまにパラって開いてみたりして。全然良いじゃない。

結論

本は必ずしも、一人で黙々読まなくてもいい。ペア読書はおもしろい。
本の楽しみ方は自由。本を読まずに楽しむのも自由。
本を読まずに楽しむことに、引け目を感じる必要なし。

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