トーマス・クラウン・アフェアーと1999年
「トーマス・クラウン・アフェアー」という映画をアマプラで観た。1999年公開とのことで、タイトルはすごく当時何度も耳にしたのだが興味がなかったので観たことがなかった。これが、すごくよかった!
(画像出典;シネマナビ)
まず、1999年という年は今では都市伝説のように語られる「2000年問題」を前にした年で、、と思い起こしてみれば当時の自分や状況をよく思い出すことができる。あー広告代理店にいた頃だ。でもってまだギャルギャルしいファッションもしていて、業務でキャンギャル(死語に近いがキャンペーンガールの略です)をアテンドしてるのに自分がキャンギャルに間違われることがよくあった。社内のエレベーターに乗っていてもナンパされる、コンビニにランチを買いに行ってもナンパされる、という狩猟される対象としての最盛期であった。そういう意味では自分自身も、生物学的に「狩猟される気満々」な頃であり、今と物事や事象、社会を見る視座がまったく違っているのがわかる。それはもう、いっそすがすがしいほどに「仕事も恋愛も!!!!!」と鼻息荒くしている時代であった。
映画が始まると、強烈なノスタルジーに襲われた。いやこれがなんとも不思議な感覚で。このノスタルジーはなんだ?とある種困惑しながら映像を観る。大都会NYの物憂げな日差し、高層ビル群と行きかうイエローキャブ。私はこの景色を生きたことはないのだし、まったく郷愁を誘われる理由がわからない。では映像としてなのか?90年代後期の当時のトレンドの映像の撮影手法がなせる技なのか?と思うと、ある面ではそれが是と思われる。当時すごくスタイリッシュだったであろう映像、音楽、編集。光。そう、光なんだ!80年代の光の魔術師といえば、エイドリアン・ラインだが、それとまた違う種類で光のライブ感がなつかしい。おそらく私がなつかしさを覚えるのは、このたぎるような生命力を写し取った光の感覚に、郷愁を感じているんだと思う。
さてさて物語もスピード感と機知にあふれスタイリッシュで楽しい。でも主演のピアース・ブロスナンとレネ・ルッソなくしてはあり得ない!というほどに演者が最高にマッチしていた。あの時代の都市景観と光に。
超ナルシストの実業家、トーマス・クラウンにブロスナン。さすが元007です。英国人俳優に特有のほんのひとさじのノーブルが実に効いている。それはもう、一欠片の量でこそあれ、それでこそスパイス足りえる。美しい均整の取れた体で着こなすダークスーツ姿と、盛大に金を使って放蕩するのも様になっている。けれど特筆すべきは絶対的にレネ・ルッソなのだ。
私は自分がたぬき顔犬派なものだから、キツネ目ネコ顔の女性にあこがれてやまない。ほっそりとした肢体で着こなすファッションは、ビジネスからドレスまでなにもかも素晴らしい。きつくくまどったスモーキーアイにブラウンのリップ、男に媚びない女でありながら男と寝るのは大好き。そう、快楽に正直なのだ。仕事を愛し、金を愛し、最終的な番狂わせはトーマス・クラウンを愛したこと。ひえーかっこいい!
この映画はスティーブ・マックイーンの「華麗なる賭け」のリブートで、オリジナルにはフェイ・ダナウェイが出ているが本作にもカメオで出演している。あーなるほど、フェイ・ダナウェイの系譜なのね。んじゃ私が好きなはずですよ。かっこいい女たち。ワオ!
いやぁ久しぶりに鑑賞して気分が上がる楽しい映画を観ました。知ってるようで知らないあの頃の空気感、まるでパラレルのような不思議。最高の娯楽作品でした。
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