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そんなわけで今日、わたしは

 先月買ったサテン生地のアイスブルーのブラウスを初めて着て外出した。
襟はスクエアタイプでボタンがなく、形としてはストンと着られるシンプルなものなので、購入したときは結構出番が多かろうとふんでいたのだが、ひと月は寝かせていたことになる。理由はカンタン、きれいな色なのだけどなんとなく着るのに思い切りが必要なのだった。

 なんでそんな服を買ったのだ?と言えば、本当はこの型のシャンパンゴールドを試着した。グレージュしかり、この手の色合いは好みの王道なので落ち着く。しかし店員さんが「もしかしたら色違いのブルーの方がもっとお似合いになる気がします!」と言って持ってきてくれた。それはそれはきれいな色でテロンとしたサテン生地がゆらめくように光を操ってとても美しい服だった。けれど私はたじろいだ。「え、本当に似合うと思いますか?」。

 店員さんいわく、私には寒色系が似合うと思ったのだけど、試着室に持ち込んだ選んだ服はいずれも黒・白・グレージュだったのでお薦めしなかったのだけど、やっぱりブルーが合うと思ったのだとおっしゃった。普段、そんなふうに他人から客観的な感想をもらうこともないので「それであれば」と着てみると、顔まわりがパッと明るくなるのがわかった。あー、そういえば大昔にパーソナルカラー診断を仕事で受けた際もパステルカラーやブルーが合うと言われたのを思い出した。それなので、そのサテンのアイスブルーのブラウスは、私にとっては小さな冒険ではあったのだけど思い切って買ってみたのだった。

 しかし、どうしてもそれを着ようというエネルギーが出なかった。赤や紫、オレンジといった強い色ではまったくないのに、普段選ぶことのないそのきれいなブルーは私にとって恐れ多い冒険だった。けれど、鬱々としたお天気の日にこんなきれいな色の服を着て会社にいったらさぞ気分を助けてくれるだろうと思えた。それでもやっぱり、朝になってその服に袖を通す気になれないでいた。

 今日は土曜日、所用があって外出するときに、今日ならばいけるのではないか。ふとそんな気がしてきた。頭からするっとかぶって袖を通したらやっぱり見慣れなくて少し胸が不安で覆われたのだけれど、出先で2人の人にそれぞれ「なんてきれいなブルー!」、「とっても似合いますね~」と声をかけられた。そうなのか。じゃあいいのかもしれない。

 色って、服って不思議だ。結構こころへの作用が深い。
 
 そんなわけで今日、私はアイスブルーの服を着た。澄み渡るような空を思わせるそれは、とろけるように光をまとっている。

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