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今そこにいるプロ

 プロってどこにでもいらっしゃるけれど、心動かされるプロに偶然遭遇すると本当に感激してしまう。自分もそうありたいと常に思う。

 百貨店など本当にそうした方が慎ましく堅実にお仕事されており、最近百貨店事業の困難さばかり話題になるけれど、百貨店ならではのソフト面での稀有な価値をもっと知ってほしいものだと思っている。もちろん、百貨店の従業員とブランドから派遣されている従業員とがいらっしゃるわけだが、その箱に見合う接客がされる限り、印象としてはブランドよりも百貨店になる。また、買い物体験によってプロからさまざまアドバイスをいただいて、彼らは当たり前のことを口にしているのだとしても、それが目からうろこの新たな知恵だったりする。こういうときの買い物は本当に心が満たされる。

 私は常々、化粧品カウンターやアパレルでも販売員さんを指名できたらいいのに…と思っていた。最近、コロナで進んださまざまな変化の一貫で、一部そうしたことも適うようになっているらしい。ピンポイントで求める機能の化粧品を、ブランド問わず探しているときに、こちらの悩みに徹底的に耳を傾け「解決をしましょう!」というように寄り添ってもらうと、結果としてトータル購入額が上がっていることが多い。プラスαを買うからだ。一方、「あーその場合はこれですねー」として、記憶している自社ブランドでその悩みに対応していると謳う商品を矢継ぎ早にただ薦めてくる接客だと結局何も解決しないのだ。昨年はこれで2社、ほぼ指名で訪れるカウンターが発掘できた。

 お洋服でも接客ぶりというか、「ああ、こういう販売パターンがマニュアルなんだな」と透けてみえてしまい、顧客(個客)に向き合っていない接客を受けると途端に興ざめしてブランドが気に入っていたとしても寄り付かなくなる。ファッション誌で仕事をしていた際に知ったやや高額ラインのブランド、長いこと自分には無縁と思ってきたのだが、昨年初めて身に着けてその高額の理由を体で理解したのだが、そのときの徹底したつきそい型接客は本当に素晴らしかった。人間の体、その人間の嗜好、分類などできぬくらい多彩なわけで、そして買い物にはその時の心理というものが強く影響するのだから。

 そこにパッと合わせてくるプロの販売員さんに遭遇すると、もうそこのブランドでなら間違いのない、後悔の少ない買い物ができる、とこちらも信頼をして通うようになる。

 とても感動的なことに、日常にプロはたくさんいる。バスの運転手さんでも、運転スキルだけでなく燦然と輝く接遇を発揮する方がおられるし、企業の受付の方も一人ひとり違う。「この人だとなんかうれしいな」という心地よさを与えてくれるものだ。ただ親切、ただ優しい、そういうのではなく厳しさがちゃんとあり、共通しているのは「パターン」ではなく「相手その人」にだけ向き合っていることかも。

 人工知能は膨大なパターンを蓄積して分類し、さっと最適解を出してくれるものだが、効率だけを求めるわけでなく、答えに至る過程のなかで自分がしっかり納得しながら解に到達するには、こうしたプロの存在が絶対に欠かせないと思う。

 

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