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電脳砂漠に咲いた花

先日から投稿してきた人形劇について、
新たに第2シリーズを以下、記載したいと思います。


本作は、

オープニング
   ↓
メインキャラ4人のコーナー
   ↓
エンディング

という形で、1つの回を構成していく前提で考えています。


今回は、メインキャラ4人のコーナーの3つ目、
「さばみそ博士の『Best Hit DHA』」をお送りします。


<人形劇 登場人物>


・もんじゃ姫

 →本作の主人公。
  頭の上にもんじゃ焼きが乗った、ぼんやりしてて空想好きな女の子。


・さばみそ博士

 →頭の上にさばの味噌煮が乗った、
  語りたがりで、ついウィットに富んだことを言おうとする男の子。


・ハバネロ姉さん

 →メインキャラで唯一の突っ込み役。唐辛子の髪飾りを着けていて、
  ピリッとした性格で、行動的な姉御肌。


・ブルーハワイ兄貴

 →頭の上にブルーハワイのかき氷が乗った、
  きれいなお姉さんが大好きな、能天気で自由な大柄の兄ちゃん。





~さばみそ博士の「Best Hit DHA」~



千葉のヤギ牧場で行われたドローン体験を終え、
海の見える定食屋で、海鮮料理を楽しむ4人。



兄貴「やっぱ、海から近いと魚も旨いぜ!」

もん「海鮮丼めっちゃ美味しい~っ!」

姉さん「寝起きのくせして、よく食べるよな」

博士「姫、スカイツリーはいかがでしたか?」



急な博士の問いに、目を丸くするもんじゃ姫。



もん「…何で、夢でスカイツリー行ったの、知ってるの!?」



ドローン体験の終盤、草原で仰向けに寝始めたかと思うと、
プロポ(コントローラー)を操作するかのように、両手を上に伸ばしながら、
「スカイツリーが…、夢の国が…」などと寝言を言っていたもんじゃ姫。



兄貴「もんじゃはさ。

   ドローンと、羊毛フェルトと、

   …スカイツリーの夢と、アメンボの夢だと、どれが一番楽しかった?」

もん「ドローンも、羊毛フェルトも、両方楽しかったもん!!」



なぜか、ムキになって答えるもんじゃ姫。



博士「まぁ、現実も夢も楽しいというのは、何よりなことです」

兄貴「そのうち、夢の中でも居眠りし始めるかもな」

博士「夢の中の、夢の中の、さらに夢の中へ…、行ってみたいものですな」

姉さん「井上陽水かよ」

もん「もぉーっ、バカにするな~っっ!」



3人に笑われた悔しさで、
海鮮丼を食べるスピードが倍速に上がるもんじゃ姫。



姉さん「夢は別に、見れなくても良いんだけどさ。

    面白いドラマとか、最近観てない気がするんだよなぁー。

    お前、何か観てないの?」

兄貴「俺は、ドラマは観るものじゃなくて、

   …"作るもの"だと思ってるから」



謎のドヤ顔を決める兄貴だったが、軽く聞き流した姉さん。



姉さん「博士は、最近何かドラマ観た?」

博士「私はですねぇ、最近といえるかは分かりませんが、

   平成と令和の変わり目に放送されました、

   TBSドラマ『わたし、定時で帰ります。』という作品が、

   大変面白かったですな」   

姉さん「へぇー、お仕事物か」

もん「これも、OLさんが主人公?」

博士「そうですね。

   正直、このドラマが始まる当初、タイトルを目にした時に、

   つまんなそうだなとは感じていたんです」

兄貴「まぁ、"帰ればいいじゃない"って話だよな」

姉さん「なかなか、そうも言えん社会なんだろ」

もん「はぁ…、美味しかった…」



すっかりお腹もパンパンになったもんじゃ姫。



窓の外をボーッと眺めていると、海辺に立っている看板には、
"東京2020 サーフィン種目会場"と書かれていた。



博士「なので、私もてっきりね。

   吉高由里子演じる生意気なOLが、上司からの仕事を全部断って、

   アフターファイブでハイボールを飲んで満喫するみたいな、

   その程度の内容を想像していたんですよ」

兄貴「"ハイボールと唐揚げ、美味しいよ?"とか言うんだろ」

姉さん「トリスのCMだろ、それは!」



そうは言いつつも、アジフライの後のビールで「あー、旨いっ」と姉さん。



博士「ですが、1話放送直後に、ネットに上がっていた、

    原作者の朱野帰子さんのインタビュー記事を読んでですね。

    

    これは、単なる夢物語でもなければ、

    分かりやすい勧善懲悪ものでもなく、

    働く人の労働環境や、様々な問題、世代間格差や、

    一人ひとりの人生について、かなり深く掘り進めた上で、

    リアルに描かれているということだったので、

    私も、作品に対する印象がガラッと変わって、

    "ちょっと、観てみよう"となった訳です」

姉さん「何か最近、見た目先行の、薄っぺらなドラマが多いらしいけど、

    そういうのとは少し違うみたいだな」

兄貴「本当、こんな薄っぺらなドラマ、

   どんな軽薄なヤツらが作ってんだろうって思うよな」

姉さん「どの口が言ってんだ、バカタレ」



若い女の子を見つけると、すぐさま近づいては、
ぺらっぺらなことを喋る兄貴である。



もん「実際、観てみたらどうだったの?」

博士「第1話を、動画サイトのParaviで観てから、

   その後、第2話はリアルタイムで観ましたが、面白かったですね」

もん「そんなサイトあるんだ」



未だに、PCの文字入力を人差し指で打っているもんじゃ姫は、
SNSや動画サイトのことには、とんと疎かった。



姉さん「全体としては、どんな話な訳?」

博士「吉高由里子演じる、東山さんという32歳のOLが主人公なんですが、

   彼女が勤めているWeb制作会社に、向井理演じる、種田という

   "上司兼元カレ"が出向先から戻ってくるんです」

もん「おぉー、これは一悶着ありそう」

博士「一方で、主人公の東山さんは、Webの競合他社に勤めている、

   KAT-TUNの中丸くん演じる、諏訪という男と、

   現在は交際中であると」

もん「…ほほ~ぅ」

姉さん「何が、ほほ~ぅだよ」

   

他人の色恋沙汰には、
ドラマであってもつい耳を傾けてしまうもんじゃ姫である。



博士「この東山さんという女性は、すぐ定時で帰ってしまおうとする点で、

   一見、怠け者のように思われがちですが、

   実は大変、仕事のできる方なんです」

姉さん「あ、そうなん?」

兄貴「じゃ、タイプ的には俺に近いな」

姉さん「お前は、ただ帰るだけじゃねぇか!」



エビフライの尻尾をポリポリと食べながら、適当なことばかり言う兄貴。



博士「この人は、まず一日のスケジュールを立てると、

   効率よく仕事を進めながら、困っている同僚のサポートもしつつ、

   新人も丁寧に教育していくという、それでいてかつ、

   誰に対しても優しく、職場のバランスを取る役目も果たしている…。


   およそ日本の会社にこれ程の人物がいるのか、と思う位の女性です」

もん「へぇー、凄い人なんだね」

兄貴「なかなか、そこまで出来るヤツって、少ないんだよなぁ」

姉さん「お前、どれ一つ出来ねぇだろ!」



海鮮に飽き足らず、デザートまで頼もうと、メニューを眺める兄貴。



博士「しかし、残業をして当たり前の日本企業においては、

   彼女のように、効率よく仕事を終えて、

   自らのアフターファイブを死守するような、

   そういう働き方に対する逆風が、大変強いんですねぇ」

姉さん「仕事きちっとやり切ってんなら、定時に帰らせろよとは思うよな」

博士「本当にそうですね。


   ですが、日本の企業にはびこる、

   "残業をして当たり前"といった考えや、

   "仕事は人の10倍やって当たり前"、"休日出勤も当たり前"、

   "死ぬ気で戦い、勝利こそ全て"、"産休・育休を取る社員はお荷物"、

   "仕事を取るため、取引先のセクハラ・パワハラも甘受する"、…


   こうした文化や空気感と、

   東山さんは常に向き合っていくこととなるのです」



そこまで話すと、お茶を飲んで一呼吸を置く博士。



兄貴「何か昔、"24時間、働けますか"みたいなCMやってたの思い出すわ」

もん「24時間働いて、日付変わって…、

   また24時間働いたら、24時間じゃ済まないよね」

姉さん「そういう、高度経済成長の頃の感覚が、

    未だに抜けてない連中も多いんだろうよ」

博士「ただ、様々な問題に直面する東山さんですが、

   彼女が正義のヒーローとなって、

   悪を挫く、という程、彼女自身も強くない。



   色々躓き、周りの助けを借りて、その都度何とかしていくという、

   現代に即した、強過ぎず、カッコ良過ぎず、柔軟な彼女の人柄が、

   非常に魅力的に映り、そこからハマっていったという所でしょうか」

姉さん「それ位、人柄がリアルに描かれてると、観てて面白いかもな」



大まかな概要を話した所で、何かを思い出した博士。



博士「そう、それでですね。

   ドラマの内容は、是非ご覧になって貰えればと思う所ですが、

   放送していた時期で、印象的だったことが2つあります」

もん「放送してた時期で?」

博士「そうです。

   まず1つは、"平成最後のドラマ放送"と言われた点ですね」

兄貴「あぁー、あの時期、そうだ。

   やたらと"平成最後の〇〇"みたいのが溢れてたわ」

博士「ありましたねぇ。


   このドラマですと、第3話が平成30年4月30日(火)の22時に放送され、

   他局がこぞって特番を流す中、

   "平成最後のドラマ放送"として話題となりました」

姉さん「そこで敢えて、普通にドラマ流す辺り、

    TBSもなかなか強情だよな」




平成最後の日。



その日の夜、何の夢を見たかを、密かに思い出していたもんじゃ姫。



"平成狸合戦ぽんぽこ"の狸達が、腹太鼓をぽんぽこ叩いていたのだが、
そこに、"令和"と書かれた半紙を持った官房長官が現れ、
元号が変わるにつけ、「あれ、平成終わり?」「もう、ぽんぽこ終わり?」
と言って、顔を見合わせる狸達。



そんな夢を見たことは、恥ずかしくて、とても3人には言えなかった。




博士「そして、もう1つ。

   これは、何と言っても最終回です」

姉さん「最終回の日も、何か起こったのか?」

博士「何と、このドラマ。

   最終回を"2回放送"する羽目になってしまいました」

もん「2回!?」

博士「最終回が放送された、令和元年の6月18日(火)の22時過ぎに、

   新潟県で震度6強の地震が発生して、

   その日の放送は中止となったのです」

姉さん「何と」

博士「放送時間、僅か5分。

   冒頭で、ユースケ・サンタマリア演じる、

   福永部長の激怒シーンのみが放送され、

   続きは翌週に持ち越しとなりました」

兄貴「そのまま打ち切りになってたら、ある意味伝説だったかもな」

姉さん「ユースケ激怒で終わりって、どんなドラマだよ!」

博士「その際、主演の吉高由里子が、新潟の人達を慮って、

   ツイッターに『娯楽は命あってのお話です』

   と書いていたのが、また印象的でした」

もん「新潟の人達も大変だったね…」



デザートのアイスも食べ終わり、宴もたけなわな4人。



博士「当時は、働くということについて、

   個人的に、色々と考えていた時期でしたから、

   あのドラマがたまたまやっていて、

   より共感出来たというのもあったかもしれません」

姉さん「まぁ、この人もそうだけど、32歳で社会人10年目っていうのは、

    色々、人生とか働き方を見つめ直す、大きな時期かもしれんな」

博士「あと、これは大したネタバレでは無いんですがね、

   最終回の終盤、テレワークに言及される場面があったんですが」



そこまで聞いただけで、その後博士が何を言うかが分かった3人。



博士「まさかその後1年で、ここまで急速に普及するとは夢にも思わず…」

もん「ある意味、それも予言になったんだね」

兄貴「俺も、それは予言してたけどな」

姉さん「お前は、ただ家で寝っ転がりたいだけだろ!」





見せかけばかりの働き方改革が進む日本企業で、
心ある職場改善が実現されるのは、果たして何年先となるのか。



テレワークのようにそう遠くない将来、何か大きな変革が、
社会全体に対して起きる日が来るのかもしれない。





~さばみそ博士の「Best Hit DHA」 終わり~





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