【文学レビュー】生涯のベスト『星々の舟』
村山由佳/星々の舟
《幸福とは呼べぬ幸せも、あるのかもしれない。》
この作品の最終章に出てくる、象徴的な一節です。
「星々の舟」は、あるひとつの家族の物語を、各章で主人公を変えながらそれぞれの視点で描いています。
《雪虫/子供の神様/ひとりしずか/青葉闇/雲の澪/名の木散る》の短編6連作で構成されており、主人公は話の順番に、三男の暁、次女の美希、長女の沙恵、次男の貢、貢の娘の聡美、そして父の重之です。
あえてここでは触れませんが、それぞれが抱えている心の秘密が辛く重いもので、読んでいると胸が締め付けられます。
それでも、それぞれの主人公が一筋の光を見出していくところが素晴らしく、読み終わったあとで深い余韻が残りました。
愛とは、家族とは何だろう。
普遍的なこのテーマについて考えさせられた、感動的な一冊です。
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