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【文学レビュー】生涯のベスト『星々の舟』

村山由佳/星々の舟

禁断の恋に悩む兄妹、他人の男ばかり好きになる末っ子、居場所を探す団塊世代の長兄と、いじめの過去から脱却できないその娘。厳格な父は戦争の傷痕を抱いて──平凡な家庭像を保ちながらも、突然訪れる残酷な破綻。性別、世代、価値観のちがう人間同士が、夜空の星々のようにそれぞれ瞬き、輝きながら「家」というひとつの舟に乗り、時の海を渡っていく。

「星々の舟」あらすじより

《幸福とは呼べぬ幸せも、あるのかもしれない。》

この作品の最終章に出てくる、象徴的な一節です。

「星々の舟」は、あるひとつの家族の物語を、各章で主人公を変えながらそれぞれの視点で描いています。
《雪虫/子供の神様/ひとりしずか/青葉闇/雲の澪/名の木散る》の短編6連作で構成されており、主人公は話の順番に、三男の暁、次女の美希、長女の沙恵、次男の貢、貢の娘の聡美、そして父の重之です。

あえてここでは触れませんが、それぞれが抱えている心の秘密が辛く重いもので、読んでいると胸が締め付けられます。

それでも、それぞれの主人公が一筋の光を見出していくところが素晴らしく、読み終わったあとで深い余韻が残りました。

愛とは、家族とは何だろう。
普遍的なこのテーマについて考えさせられた、感動的な一冊です。

直木賞受賞

※stand.fmでも映画や音楽の話をしています。よかったら聴いてみてください。https://stand.fm/channels/6655ca62316143a771ce9aa6

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