数学ギョウザ

「数学ギョウザ作って待ってるな。気をつけて、早く帰っておいでよ。」
数学ギョウザの季節だ。お隣の縁側から、毎年、この時期になると聞こえてくる。口癖のように、彼はそうつぶやく。
数学ギョウザってどんなのだろう。私はいつも考える。

***

またこの季節が巡ってきた。
野菜たっぷりのギョウザを包む。熱したフライパンに敷き詰め、水を回し入れ蒸し焼きに。皿に返すと焼き色と匂いが食欲をそそる。いっぱい作ったから、食べ終わるまで帰らないんじゃなかろうか。ギョウザは彼女の大好物だから。
そうならいいな、と今日もギョウザを拵える。

ああ、いい匂い。この匂いに誘われて、今年も迷わず来られたわ。
お元気そうね。何よりよ。また料理の腕上げたんじゃないの。
ああ、あなたのギョウザがまた食べたいわ。

もう来てるかな。さあ、手を合わせて。いただきます。
ああ、うまい。ギョウザスキルだけがどんどん上がる。
すーが食うギョウザを今年もひとりで
 作って供え食う迎え盆

#ショートショートnote杯

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