【読書暦】2017年に読んだ本
【★☆☆☆☆】ダ メ【★★☆☆☆】普 通【★★★☆☆】面白い【★★★★☆】お薦め【★★★★★】名 作
★★★☆☆ 「旅のラゴス」筒井康隆 新潮文庫 2017/12/4 【再読】
★★★☆☆ 「薔薇の血を流して」皆川博子 講談社文庫 2017/11/15
★★★☆☆ 「時の石」栗本薫 角川書店 2017/10/30 【再読】
★★☆☆☆ 「すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた」ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア ハヤカワ文庫FT 2017/10/11 【再読】
★★★★★ 「魔界転生」上・下 山田風太郎 角川文庫 2017/9/28
★★★☆☆ 「時が滲む朝」楊逸 文春文庫 2017/9/15
★★★☆☆ 「孤児たちの軍隊 ガニメデへの飛翔」ロバート・ブートナー ハヤカワ文庫SF 2017/9/9
★★☆☆☆ 「侠客」上・下 池波正太郎 新潮文庫 2017/8/29
★★★☆☆ 「野生の証明」森村誠一 角川文庫 2017/8/23
★★★☆☆ 「ラヴクラフト全集 3」H・P・ラヴクラフト 創元推理文庫 2017/8/21
★★★☆☆ 「五千回の生死」宮本輝 新潮文庫 2017/8/1
★★★☆☆ 「真夏の夜の魔法」ジェイムズ・P・ブレイロック 創元推理文庫 2017/7/27
★★★☆☆ 「幻魔の虜囚」タニス・リー ハヤカワ文庫FT 2017/6/6
★★★☆☆ 「金門島流離譚」船戸与一 新潮文庫 2017/5/15
★★★☆☆ 「99999【ナインズ】」デイヴィッド・ベニオフ 新潮文庫 2017/5/11
★★★☆☆ 「思いあがりの夏」眉村卓 角川文庫 2017/5/5 【再読】
★★★☆☆ 「男たちのかいた絵」筒井康隆 新潮文庫 2017/4/28
★★★☆☆ 「草祭」恒川光太郎 新潮文庫 2017/4/18
★★★★☆ 「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス 早川書房 2017/4/12 【再読】
★★★☆☆ 「アンドロイド」エドマンド・クーパー ハヤカワ文庫SF 2017/4/8 【再読】
★★★☆☆ 「ヴィーナスという子 存在を忘れられた少女の物語」トリイ・ヘイデン 早川書房 2017/4/2 【再読】
★★★☆☆ 「愛されない子 絶望したある生徒の物語」トリイ・ヘイデン 早川書房 2017/3/25 【再読】
★★★☆☆ 「幽霊のような子 恐怖をかかえた少女の物語」トリイ・ヘイデン 早川書房 2017/3/21 【再読】
★★★★☆ 「檻のなかの子 憎悪にとらわれた少年の物語」トリイ・ヘイデン 早川書房 2017/3/18 【再読】
★★★★☆ 「よその子 見放された子どもたちの物語」トリイ・ヘイデン 早川書房 2017/3/16 【再読】
★★★☆☆ 「忍者群像」 池波正太郎 文春文庫 2017/3/14
★★★☆☆ 「黒蜥蜴」江戸川乱歩 創元推理文庫 2017/3/1
★★★☆☆ 「銀色の恋人」タニス・リー ハヤカワ文庫SF 2017/2/23
★★★★☆ 「闘士」フィリップ・ワイリー ハヤカワ文庫SF 2017/2/14
★★★☆☆ 「スメラギの国」朱川湊人 文春文庫 2017/2/10
★★★☆☆ 「あなたの魂に安らぎあれ」神林長平 ハヤカワ文庫JA 2017/1/24 【再読】
★★★★☆ 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」フィリップ・K・ディック ハヤカワ文庫SF 2017/1/2 【再読】
この年から記録した本の【再読】が分かるようにしました。東京生活から実家生活に戻ってからなので自分の部屋に残っていた古い本で未読だったものや懐かしい本を再読していました。
気になる1冊目、筒井康隆「旅のラゴス」は最初内容を全く覚えていませんでしたが、再読は非常に面白かったです。これは昔買っていたSFマガジンに連載されていた連作物ですが、まさか後年に新潮文庫の100冊に選出される名作扱いになるとは、ちょっと驚きです(笑)。
かつて角川映画で一世を風靡した山田風太郎の「魔界転生」をついに読みました。ここ何年か山田風太郎を集めていましたが、やはりこの面白さは傑出していました。逆に読んでしまったら、彼の作品でこれより上は無いような気がしてしまいました。
フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」、つまり映画『ブレードランナー』の原作ですが、これはたぶん3読目。読むたびに面白さが身にしみて来ると同時に、映画との連想が非常に楽しいです。映画もとくに好きな作品として所有DVDを何度も観ています。
なんと『ブレードランナー』は続編『ブレードランナー2049』が公開されましたが、評判はあまり良くなかった。しかしその理由を読むと、にわかファンの浅い見方でした。ディックの作品は哲学的な部分があり、普遍性のある寓話だから時代を超えて評価されています。
安っぽいエンターテイメントを期待して観ると、ガッカリするわけです。まだ観ていないのでなんとも言えませんが、公開前に配信されたいくつかの短編映画や予告の空気感は自分の好きな方向のようだと思いました。(この後に続編を観た感想は予想通りでした。お気に入りです)
感想文「時が滲む朝」楊逸(ヤン・イー)文春文庫
2008年・第139回芥川龍之介賞。日本語以外の言語を母語とする作家として史上初めての受賞。“我愛中国”とは。中国人の心情をえぐった会心作。梁浩遠と謝志強。2人の中国人大学生の成長を通して、現代中国と日本を描ききった力作。
終盤のクライマックスで連想したのは、久しく観ていないチャン・イーモウ監督の映画である。中国の良く出来た現代ドラマ風。
著者は丁度同い歳で、25歳の時に中国人として天安門事件に衝撃を受けた世代。あまり政治的なことに関心のない自分だったが、孔子の論語が好きだというだけでずっと中国に親近感を抱いていただけで事件にそれなりにショックを受けたのだから、民主化に憧れていた当時の著者はもっとショックだったことだろう。
日本人はその天安門事件あたりから、中国の共産党は恐いと感じるようになったわけだが、その国で生きる人々にとってはどれほど複雑な感情であったことか。
大戦中の軍国主義の日本では、反戦的な思想の日本人が政府によって狩り出され拷問を受けた負の歴史があり、天安門事件以降に民主化思想を弾圧し続ける中国共産党には、過去の日本の黒歴史が重なって見えた。本書はその辺りのことが中国人の目から見てどう書いてあるだろうと思って手に取ったのだが、予想よりあっさり触れているだけだったので少し物足りなくも感じた(著者はその2年前に来日していたらしい)。
当時日本の報道では、かなりの数の学生たちが銃弾に倒れたという印象を受けていたが、やはり中国ではそういった情報も制約されて、あまり正確には伝わらなかったのだろうか。そんなこともないだろうが、今の中国は昔よりさらに民主化の道からは遠のいたように感じられるのが残念でならない。 孫子が兵法を書き、多くの哲人が育った賢者の国なのだから、民主化すれば、必ずや世界のトップに立てる民族性だろうと思うだけに、共産党支配による思想や言論の弾圧は、むしろ真の国民性を縛り付ける馬鹿げた鎖のように感じられてしょうがないのである。(2017/09/15の文章に少し手を入れました)