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2020年7月の記事一覧
神影鎧装レツオウガ 第九十六話
Chapter11 決断 02戻る 総合目次 | マガジン | 進む
月面。
モノクロフィルムよりもくっきりと、白と黒が分かたれた死の世界。
深夜の墓場より静まりかえったこの場所に、動くものなぞ何一つ無い。
筈、だった。
「あン?」
地平線の近く。宇宙と地面の境目辺りに、何やら蠢く点が一つ。よくよく目をこらしてみれば、それは一台のバイクであった。
排煙代わりの霊力をたなびかせ、地面
神影鎧装レツオウガ 第九十四話
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Chapter11 決断 01
五辻辰巳が怪物を消し飛ばした。マリア・キューザックは、その一部始終を横目で見ていた。
怪物――リザードマンと呼ばれるトカゲ頭の禍《まがつ》の群れを、その中核を成していた標的《ターゲット》Sごと、一撃で壊滅させたのだ。
大分手こずらされたが、これでもうトカゲ頭の増殖はあるまい。
「お見事。あれだけ密集してたのを一撃なん
神影鎧装レツオウガ 第九十三話
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Chapter10 暴走 14
ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ。
その音は、辰巳の耳へ、酷く明瞭に届いた。
ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ。
その音を、感触を、辰巳は良く憶えていた。
それは、潰れる音だ。
肉と、血と、骨が。
混ざり合って、ひとつの、よくわからない、赤黒い、カタマリになってしまう音だ。
そう、憶えている。
二年前。辰巳はその音を、他でも
神影鎧装レツオウガ 第九十二話
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Chapter10 暴走 13◆ ◇ ◆
気付くと。
辰巳は、雪の上に立っていた。
「……!?」
訳も分からず、しかし身体に根付いた戦闘技巧は、即座に辰巳へ拳を握らせた。
全周警戒。フェイスシールド遮蔽。
ざっと目についたのは、しんしんと降り積もる白い雪。鋭く空を突き刺す黒い森。妙に目につく丸太小屋。時折うごめく灰銀色の空。
だが何よりも目