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竹下通りのロケ、擬似体験。

夏休みに長男がコロナにかかり、
そこからここまで
なんかもうノンストップだった。

書きたいことは山積みなのに、
マジで時間がねぇ。
本気と書いてマジと読むくらい
マジで時間がねぇ。

そんな中、この前の3連休で
ひっさしぶりに美容院に行った。
前回美容院に行ったのは6月だった。

私の伸びかかっていたボブを目の前に
いつも担当してくれる美容師さんが

「今日はどうします?」

髪の毛と私をチラッと見ながらたずねる。


「いやー、どうしよっかなーと思ってて…」

「切りたいとか切りたくないとかあります?」

「いやー、特になくて…」

「色はどうします?」

「あ、明るすぎなければいいんでお任せで…」


前に雑誌かなんかで
美容師さんのインタビュー記事を読んだことがある。

〝できればお任せは避けて欲しい〟

〝こんな風にしたいという雰囲気でもいいから伝えてくれれば
美容師側もアドバイスしやすい〟

〝イベントが何日後にあるとか、
先の予定があれば事前に伝えて欲しい〟

ほうほう、そうだよねぇ。
と思いながら読んだ記事。
美容師さんの気持ちも分かってはいる。
要望は出来れば伝えた方がいいし、
自分のこだわりがあれば言うべきだ。
でもあえて真逆をいく。
全部お任せで。

そんな私を鏡越しに見ながら、

「オッケーです。
じゃ、なんか良い感じにしますね」

美容師さんがいつもの感じで答える。


3年前、コロナが流行ってすぐに次男を産んだ私は
美容院に行かない日々が続いていた。
久しぶりに行こうとなっても、
少し遠くて人の多い場所にある行きつけの美容院に行くのは抵抗があり、
家の近所にある美容院にしか行けなかった。

(又吉直樹さんから広瀬すずさんへの変貌の一部始終はこちら↓)
※いつものごとく私フィルター満載でお届けしています。

そこもそこで良かったけど、
やはり私はずっと行きつけだった美容院で
いつもの美容師さんに髪を切って欲しい。
そんな思いばかりが募っていた。

今年の6月、
数年ぶりに行きつけの美容院へ行き髪を切った。
結構伸びていた髪をショートボブにした。

翌日の朝、
教室へ向かって歩いていると
たまたま教室から出てきた女の子が
遠くから私を見つけ

ギョエェェェェェェェェェ!!!

と叫んだ。

冗談じゃなく、ギョエェェェェェェェェェ!!!だった。

そのままダッシュで教室に入ると、

「みんなぁぁぁぁ!
先生がぁぁぁぁぁ!!
先生がぁ!
髪切ってるぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

と、
遠くからでもバッチリ聞き取れる声量で叫んでいる。

その声に、
教室の中から子ども達が
わらわらと廊下に飛び出てきて

ギャァァァァァァァァァァ!
とか
ギョエェェェェェェェェェ!
とか
ガァァァァァァァァァァァ!
とか

思い思いに叫んでいる。
冗談じゃなく腹からの叫び。

朝から焼き肉食べれる人には全く驚かない私だが、
朝からあの声量で叫べる子ども達には
驚きを通り越して感動さえ覚える。

余りに騒ぐので、
隣のクラスの子も何人か廊下に出てきてしまった。

こりゃまずい。
私がクラスの子に向かってシッ!と口に手を当て、
そのまま自分の教室にササッと入る。

隣のクラスからも叫びが聞こえる。
叫びは連鎖する。
働いてから知ったことだ。

教卓に立った私を
子ども達はまじまじと見つめながら
興奮冷めやらぬ感じで
今度は大声で感想を言ってくる。
教室の広さを無視した馬鹿でかい声で。

「先生!髪切った!」
「えー!めっちゃ可愛い!」
「超似合う!」
「めっちゃ切ってるーー!」
「ビックリしたーー!!!」
「違う人みたーーーい!」

こういう時、
私は動物園の動物になったつもりで静かに待つ。
だんだん子ども達の感想もおさまり、
冷静さを取り戻す。

ようやく静かになったとこで、

「そうなの!髪切ったの!似合う?」

とニッコリ笑って聞くと、
子ども達は先程よりは小さな声で、
再び反応をくれる。

中休み、再び廊下を歩くと
違う学年の名前も知らない子達もキャーーーー!!!という歓声と共に
「え?!先生髪切った?!」
「めっちゃいい!」
「可愛い〜♡」
と、褒めてくれる。

こんな反応を貰えるのは、
間違いなく行きつけの美容師さんのお陰なのだ。
あの美容師さんが切ってくれた後は
子ども達の反応が格段に良い。

嘘のつけない小学生の子ども達。
髪を短くしても、
「前の方が良かった」とか
「なんで切っちゃったの?!」とか
そういう反応が来る時もある。

でも、あの美容師さんの切ってくれた時は違う。

子ども達は朝からハイカロリーなくらい叫び、
必ずや私を褒めてくれる。

髪を切ってから初めて登校する日。
私は本当の意味で、
広瀬すずさんになった気持ちになる。

原宿の竹下通りでロケをする広瀬すず。
小学校の教室に歩いていく私。

性別が女ということしか
共通点がないかと思いきや、

歓声と悲鳴が渦巻き、
みんなが振り向く。

いや、もうこれ
私、広瀬すずやん。

美容師さんへのお任せは
絶対的な信頼があるからこそ。
私はこの美容師さんへ
揺るがない信頼がある。
美容師さんの言う〝良い感じ〟は
マジで良い感じになる。
本気と書いてマジと読むくらいマジ。
私を本当の意味で広瀬すずにしてくれるのは
この美容師さんしかおらんのだ。


シャキシャキと小気味よい音と共に
髪の毛がパラパラと落ちる。
そんな自分を眺めながら、

〝ここまで、おつかれ〟

自分に語りかける。

トリートメントをしながら、
肩をグリグリゴリゴリやられながら、
ゴッドハンドでシャンプーされながら、

〝前に自分のために何かをしてあげたのって
いつだっけ?〟

と思う。

毎晩入る子ども達とのお風呂。
入ってからも出てからも子ども優先で、
顔がカピカピになってから
慌てて化粧水を塗る。
ドライヤーできるのは、
ほとんど自然乾燥してからだし、
結局30秒くらいしかかけられない。
ご飯も毎食時間に追われながら食べ、
寝る時は子ども達に挟まれて
布団の隙間で寝る日々。
朝起きると痛い身体。

それが嫌なわけではないし、
そんな日々の中に
でっかい幸せがゴロンゴロン落ちてるのは揺るぎない事実だけど、

美容院にいる時間は
自分を労わり、自分を整え、
幸せがジンワリと染み渡るような
至福の時間だなぁと思った。

たった2時間で、
別人のように生まれ変わった私に
最初に会うのは旦那と息子達。
迎えに来てくれた車の中で、
いつだってデロデロの甘々に褒めてくれる。
我が家の男3人の
優しさが身に染みる。

連休明けの学校では、
子ども達から沢山反応をもらい
やはりあの美容師さんって凄いわ…と思う。

朝の髪をセットする時間に
何だか気持ちがシャンとする。

美容院に行くのって、
行ってる時だけじゃなく、
行った後にも嬉しいことが起こる感じが好きだ。

ちなみに最後に言うのもなんだけど、
私は髪を切ったら家族以外には
割とそっとしておいて欲しい派だ。
もちろん子ども達の反応は嬉しいけど
ちょっと恥ずかしいのも本音だ。
だから反応が無くても全然良い。
でも仕事柄そうもいかない。

逆に旦那は反応が欲しい派なのに、
いつも髪を切っても全然反応がもらえず
ちょっとガッカリして家に帰ってくる。

旦那にもいつか、
竹下通りでロケする横浜流星さんを
擬似体験させてあげたい。
旦那と横浜流星さんでは
性別しか共通点がないと思うが、
美容師さんと小学生マジックにかかれば
ありえなくもない。

…いや、やっぱありえないか。
期待させてすまん。旦那。

横浜流星さんとは、
性別が一緒という共通点があれば充分だよ。

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