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人間失格(挿絵付き)第9話_竹一

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 自分は震撼(しんかん)しました。ワザと失敗したという事を、人もあろうに、竹一に見破られるとは全く思いも掛けない事でした。自分は、世界が一瞬にして地獄の業火に包まれて燃え上るのを眼前に見るような心地がして、わあっ! と叫んで発狂しそうな気配を必死の力で抑えました。

 それからの日々の、自分の不安と恐怖。  表面は相変らず哀しいお道化を演じて皆を笑わせていましたが、ふっと思わず重苦しい溜息(ためいき)が出て、何をしたってすべて竹一に木っ葉みじんに見破られていて、そうしてあれは、そのうちにきっと誰かれとなく、それを言いふらして歩くに違いないのだ、と考えると、額にじっとり油汗がわいて来て、狂人みたいに妙な眼つきで、あたりをキョロキョロむなしく見廻したりしました。

 できる事なら、朝、昼、晩、四六時中、竹一の傍(そば)から離れず彼が秘密を口走らないように監視していたい気持でした。そうして、自分が、彼にまつわりついている間に、自分のお道化は、所謂「ワザ」では無くて、ほんものであったというよう思い込ませるようにあらゆる努力を払い、あわよくば、彼と無二の親友になってしまいたいものだ、もし、その事が皆、不可能なら、もはや、彼の死を祈るより他は無い、とさえ思いつめました。

しかし、さすがに、彼を殺そうという気だけは起りませんでした。自分は、これまでの生涯に於(お)いて、人に殺されたいと願望した事は幾度となくありましたが、人を殺したいと思った事は、いちどもありませんでした。それは、おそるべき相手に、かえって幸福を与えるだけの事だと考えていたからです。

 自分は、彼を手なずけるため、まず、顔に偽クリスチャンのような「優しい」媚笑(びしょう)を湛(たた)え、首を三十度くらい左に曲げて、彼の小さい肩を軽く抱き、そうして猫撫(ねこな)で声に似た甘ったるい声で、彼を自分の寄宿している家に遊びに来るようしばしば誘いましたが、彼は、いつも、ぼんやりした眼つきをして、黙っていました。

しかし、自分は、或る日の放課後、たしか初夏の頃の事でした、夕立ちが白く降って、生徒たちは帰宅に困っていたようでしたが、自分は家がすぐ近くなので平気で外へ飛び出そうとして、ふと下駄箱のかげに、竹一がしょんぼり立っているのを見つけ、行こう、傘を貸してあげる、と言い、臆する竹一の手を引っぱって、一緒に夕立ちの中を走り、家に着いて、二人の上衣を小母さんに乾かしてもらうようにたのみ、竹一を二階の自分の部屋に誘い込むのに成功しました。(つづく)

→第10話


ども!横井です。ピッコマで縦読みフルカラーコミック「人間失格」を連載しております。

さて今回は絵の話でもしましょう。

自分はこれまで漫画はいろいろと描いてきましたが、いわゆる縦スクコミック(縦にスクロールして読み進める漫画)というものは上記の「人間失格」が初めてで、それまでやったことがありませんでした。
縦コミはフルカラーが原則なのですが、カラー原稿の経験もほとんどありませんでした。

さて困った。どのようにやればいいのだろう。そんな時大きな助けになったのが
「YouTube」でした。

縦コミの描き方やカラー原稿のテクニックなど必要なものすべてを学ばせていただきました。

特に参考になった2つのチャンネルを紹介させていただきます。

一つ目は

さいとうなおきさんのチャンネル

こちらはかなり有名なイラストレーターの方でポケモンの絵なんかもやられているそうです。

そしてもう一つがディープブリザードさんのチャンネル

こちらも40万人近い登録者がいるチャンネルで、しゃべり方にややくせがありますが、内容は大変わかりやすかったです。

こういったチャンネルで学ばせていただいたことで、なんとか形にすることができました。
ほんと「YouTube」と動画配信者さまさまです。

そうして自分的にかなり有用だったテクニックの一つが「オーバーレイ」です。

言葉の意味はよくわかりませんが、ペタッとしたカラーイラストを瞬時に深みのあるカラーリングに変貌してくれる効果なんです。

ご興味ある方は是非一度両チャンネルをご覧になってみてください。
最後に「オーバーレイ」を使ったイラストの手順を載せて終わりたいと思います。
それではまたお会いしましょう!

下描きをします。
ペン入れをします。
ベースカラーを塗ります。
影を塗ります。
オーバーレイで深みを出します。光も足します。
とにかくやり方さえ分かっちゃえばめっちゃ簡単です!
レトロフィルターというフィルターを一枚かませて出来上がり!

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