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自分と他人を結ぶ通路。安部公房「他人の顔」

やーっと読み終わった1冊。
安部公房「他人の顔」

途中体調悪かったり、
そもそもサクサク読みやすい文章ではなかったりで、なかなか読み進まなかったけど、やっと終わった。
ふう。

で、どんな本なのよ?

液体空気の爆発で受けた顔一面の蛭のようなケロイド瘢痕によって自分の顔を喪失してしまった男……失われた妻の愛をとりもどすために“他人の顔"をプラスチック製の仮面に仕立てて、妻を誘惑する男の自己回復のあがき……。特異な着想の中に執拗なまでに精緻な科学的記載をも交えて、“顔"というものに関わって生きている人間という存在の不安定さ、あいまいさを描く長編。

本の概要より

この本、なぜ手に取ったかというと。

確かルッキズム関連の本読んでたら、この本が引用されてたか、参考文献だかで載っていて気になっていて。(何の本だったか忘れちゃった)

で、本の中で顔を喪失した男が
顔のことを
「自分と他人を結ぶ通路」だと言っていたのが印象的で。

これって、
顔という通路をなくした人だからこそ、気がつけることなんだろうなと。

概要にもある通り
他人の顔という仮面を作って、色々と試す男の話なのだけど。

なんかね、内省も内省。
男の特異な独り言を聞かされている感じの、なんとも不思議な世界。

主人公、ストレングスファインダーやったら、確実に内省が一番に出てきそうだなと思うくらい(笑)

正直、最後まで読んだけど
ものすごく爽快とか、「あースッキリした」っていう感覚はない。笑

一体何だったんだろう?
私は、何を読まされていたんだろうか?

という、ほんのりとした不安や、ぼんやりとした疑問が頭の中に残る感じ。
これを余韻と呼ぶのだろうか。

という感じだったのだけど
最後に大江健三郎の解説文があり、それを読んで
やっぱり分かりにくい本だったらしい、ということが判明(笑)
で、ちょっとホッとした。

という、なんとも不思議な本。

こう書くと
「なんだ、退屈な本なのかな」
「これは読まないかな〜」

なんて思う人も多いと思う。

正直、読みやすくはない。
かといって、めちゃ読みにくいわけでもない。

読みやすくないけど、放棄せずに最後まで読んだのは
比喩や表現が秀逸で、素晴らしいなと思ったから。

さすが、増版に増版を重ねている本だけあるなと思った(←何様w)
※図書館で借りた手元の本は、70刷とあった

だってさ、パッと思い返しただけでも
「心理的蕁麻疹」
「生きながらの埋葬状態」
とか。

こんな言葉、出てこないでしょ?
少なくとも、私は出会ったことがないような言葉で
溢れていた。

本を読まなければ、確実に出会わないような表現。
これに出会えたことが、私にとってはすごく収穫だったなと。



もし自分が顔を喪失したら?
もし夫が顔を喪失したら?
どんな生活になるんだろう?

そんな想像をしながら読むのもいいかなと。

気になる方いたら、ぜひ読んでみてくださ〜い。


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