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健康福祉確保措置

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 最近、勉強も健康も貯金も、1日でできることではないということを実感しています(遅っ!)。

 毎日の積み重ねで少しずつ改善していくんですね。

 かれこれ13年、ピラティスレッスンを週1回、カイロプラクティック通いを月1回続けていますが、最近のコロナ禍でお休みすることが増えると途端に体の調子が悪くなります。
 つまり、これは積み重ねで健康を維持できている証だと思っています。

 悪い習慣は簡単に毎日積み重ねられるんですけどね~

 良い習慣をもっともっと積み重ねて健康で充実した人生を送りたいです。


 ところで、自分の健康は自分で管理するのが基本ですが、従業員の健康は使用者が配慮しなければなりません。
 労働環境次第で従業員の健康が簡単に害されてしまう危険があるからです。

健康福祉確保措置

 働き方改革関連法による労働基準法の改正により、時間外労働の時間は原則1か月45時間、1年360時間を限度とすることが定められました(労働基準法36条4項)。

 ただし、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的にこの限度時間を超えて労働させる必要がある場合には、1年720時間、休日労働を含めた時間が単月100時間未満、複数月平均80時間以内の時間外労働を年に6回まで労働させることができます(労働基準法36条5項)。
 この臨時の時間外労働の時間は36協定で定めなければならず、その定めたものを特別条項といいます。

 そして、この特別条項を定めた場合には、健康福祉措置を労使で協定しなければなりません。

 健康福祉措置は、「労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針」(平30・9・7厚生省告示第323号)に示されています。

① 労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること。
② 法第37条第4項に規定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について一定回数以内とすること。
③ 終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること。
④ 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること。
⑤ 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること。
⑥ 年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること。
⑦ 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること。
⑧ 労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること。
⑨ 必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等による保健指導を受けさせること。

 この指針では、「次に掲げるもののうちから協定することが望ましい」とされていて、“できるだけ協定してね”という感じで書かれています。

 しかし、労働基準法では、36協定に「労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項」を記載しなければならないことになっています(36条2項5号)。
 この「厚生労働省令で定める事項」の中に、「限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置」があるのです(労働基準法施行規則17条1項5号)。

 ですから、これらの事項、つまり、①医師の面談、②深夜業の回数制限、③勤務間インターバル、④代償休日・特別休暇、⑤健康診断、⑥年次有給休暇取得の促進、⑦健康相談窓口、⑧配置転換、⑨産業医等による指導のいずれかを選択して、36協定に記載しなければならないのです。

特別条項への記載

 特別条項の様式には、「限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置」として、上記の①から⑨のいずれかの措置またはその他の措置を講ずることを定め、該当する番号を記入すると共に、その具体的内容を記載しなければなりません。

 記載例には、(該当する番号)の欄に「①③⑩」、(具体的内容)の欄に「対象労働者への医師による面接指導の実施 、対象労働者に11時間の勤務間インターバルを設定、 職場での時短対策会議の開催」と書かれています。

健康福祉確保措置の実施

 ここに記載した健康福祉確保措置は、実際に実施しなければ意味がありません。

 そこで、実施を確保するため、労働基準法施行規則17条2項は、「使用者は、前項第5号に掲げる措置の実施状況に関する記録を同項第1号の有効期間中及び当該有効期間の満了後5年間保存しなければならない。」と定めています。

 こんなことで従業員の健康を維持することができるのか、と思われるかもしれません。
 もちろん、個人の健康は自身で考えて維持しなければならず、それが基本ではあります。
 しかし、健康福祉確保措置は、それを実施することで労働環境が改善されてより働きやすい職場になるという意味で、大変重要な措置であることに間違いありません。

 会社の実情に合った措置を積極的に活用して、快適な職場作りに励みましょう。


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