見出し画像

事故欠勤休職の期間が満了したら、解雇それとも自然退職?

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 宝塚歌劇月組の大劇場公演もあと1週間余りになりました。
 本公演では、主要なパートの演者が2人もケガで休演に追い込まれ、パズルのように代役を立てて大変そうです。

 会社でも従業員がケガや病気で休むと、その人のポジションは置いたままで他の人が補填に入らなければならなくなるので、休む本人だけでなく、会社も他の従業員も大変な状況に追い込まれます。

 このケガや病気が業務から発生したものであれば、その治癒にどれだけ時間がかかったとしても、療養のために休業する期間とその後30日間は解雇してはなりません(労働基準法19条1項、ただし例外あり)。

傷病休職

 他方、業務とは関係のないところでケガをしたり病気になったりして出勤できなくなった場合には、その療養期間中、会社が面倒をみることは求められていません。

 通常は、就業規則で、業務外の傷病による長期欠勤が一定期間に及んだら、傷病休職をとらせることにしている会社が多いと思います。

 その傷病休職の期間は、勤続年数や傷病の種類で決められていることが一般的です。

 そして、傷病休職の期間が満了したのに復職できないときは、会社を辞めてもらうことになります。

解雇か自然退職か

 傷病休職期間が満了したにもかかわらず復職できないとき、会社が改めて解雇の意思表示を行うこととしている場合には、その時点で、解雇の要件を満たしているかどうかを検討することになります。

 つまり、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効」(労働契約法16条)となりますから、傷病期間満了時に、解雇をすることについて客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当かどうかを検討しなければならないのです。

 おそらく、復職の可能性が全くないことが客観的な証拠(例えば診断書など)によって明らかで、復職の可能性について本人と何度か話し合いを行うなどの手続きを踏んでいれば、解雇は有効とされやすいと思われます。

 他方、傷病休職期間満了時に、解雇ではなく「自然退職」としていた場合には、休職を命じた時点で、解雇(条件つき解雇)も同時に言い渡したことと同じことになります。

 つまり、それは解雇予告と同じなのでは?という疑問が生じるのです。

 解雇予告であれば、復職できようができまいが、時期が来れば解雇処分が発効しますし、解雇予告は30日以上必要ですから、もし、休職期間が30日よりも短ければ、解雇予告よりも不利な状況下で実質的には解雇を言い渡したことになってしまいます。

 それでは、法が解雇予告に30日以上の期間を要求した意味がなくなってしまいます。

 したがって、傷病休職期間満了時に自然退職とするなら、傷病休職期間は30日以上に設定しておくべきですし、休職を命じる時点で解雇権濫用と類似するような事情がないことが必要でしょう。

 解雇とするにしても、自然退職とするにしても、いずれにしても権利の濫用は許されませんし、会社の都合で従業員を辞めさせることは難しいと心得てください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?