見出し画像

Carl Hansen & Sønの椅子をセミオーダーした話

話は4月の下旬、GW前まで遡る。

前回この話の冒頭で「妻は座る椅子がなかった」とあるが、これには理由があった。
私より物の購入に数段決断力のある妻は、比較的早々に自分用のチェアを見つけていた。
しかしタイトルの通り、セミオーダーをしたおかげで椅子が家に届くのに時間がかかってしまった。
かかりまくってしまったのだった。

4月23日のオーダーから、到着が6月22日。実に8週間かかった。
確かに店員さんは「6~8週間はかかるわ」とは言っていたが、そういう時は多めに見積もっていて、実はなんちゃって5週間くらいで届きましたー!みたいなのが、日本じゃない?
デンマークはたっぷり8週間、なんなら9週間目に足突っ込みそうなくらい待った。
たぶんヨーロッパ住まいからしたら、「いやいやちゃんと期間内に届いたんだから凄いよ!」と言われるかもしれない。
なので公正を期して、非常に正確な見積もりであった、というところは評価したい。

そんな8週間を待てず、業を煮やした結果が前述のHAYチェアだったのだ。
いや、全然お買い得のとてもいい買い物だったけれども。
だけど一応、こちらが本命でしたよ、というお話。


さて、今回の椅子は妻用に買ったものではあるが、実は今年の2~3月に私が目をつけていた椅子のうちの一つなのだ。
正確に言えば、「この椅子すごく良いよね~どうかな?どうかな~?」と妻に勧めたのがこの私。
その結果、気に入ってくれたので購入という流れである。
持つべきは、感性が近いパートナーである。

そんなこんなでこの度迎え入れたチェアはコチラ。
Yチェアでお馴染みCarl Hansen & SønのCH88P

圧倒的な佇まい

このCH88P、背もたれも座面も脚も異なるマテリアルで構成されているのに何故か凄くバランスが良い。
調和を感じる。
まず、背もたれから肘掛けにかけての手に馴染むウッド。
肘掛けの部分が、牛の角のような形をしているのが特徴的だ。
椅子に座って自然に肘を置いた時のフィット感たるや。
物凄いしっくりくる。
我々の肘はこの肘掛けのために作られたのかもしれない。
続いて、そこから生えるステンレス部分がソリッドな緊張感を生み、デザインを引き締めているように見える。
直接触れる部分ではないので、冷たい印象も受けるが使用感では感じない。
最後に、座面は高級感を持たせながらリビングでも違和感のない、しっとりとした佇まいをしている。

下からのアングルまで幾何学的でカッコ良い

そんな上記に書いた3要素がセミオーダー可能な部分となる。
・背もたれ:オーク材/ビーチ材 × ソープ/オイル × カラーリング
・足部分:シルバー/ブラック
・座面:ファブリック/レザー
特に座面は様々なシチュエーションに合うよう、素材や色のバリエーションが豊富に用意されている。
うちもここを一番悩んだ。
ファブリックも可愛くて正直捨てがたかったのだが、レザーとファブリックどっちが現地でしか手に入らないか?を考えた時にレザーが勝ってしまった。
もちろん日本でもレザーの張替えはしてもらえると思うのだが、Carl Hansenが卸しているレザーで張り替えることはほぼないだろう、と。
そしてカラーリングやテクスチャーの微妙なニュアンスも同じものはないのではないか?
という打算と、家のリビングのカラーリングの関係から薄ピンク系の本革(鞣革?ヌメ革?)素材にしてみた。
カタログ名で言うところの、Thor 325。
選択できるレザーのラインナップの中でも上位の方を選んでみた。
これがダイニングテーブルのホワイトオークや床の木目に良く馴染む。

柔らかそうなのに、しっかりとした座面

マテリアルの話に熱が入ってしまったが、このCH88Pの一番の良さは何といっても肘掛けなのだ。
背中を付けて腰を深く座り、リラックスして脇を少し開く。
すると腕が肘がそこに乗る。
そして、先端のカーブで止まる。
このフィット感を知ると病みつきになってしまう。

この角先の角度が良い。計算尽くのエルゴノミクスデザイン

こんなカッコいい肘掛けの先端、冒頭で"牛の角のようだ"と書かせてもらったが、別称Cow Horn Chairとでも言うのか?と思っていたら、実はCow Horn Chairはすでにリリースされていた。
しかもデザイナーはあのYチェアをデザインし、CH88Pも手掛けた巨匠。
Hans J. Wegner

CH88Pは2014年リリースなのに対し、Cow Horn Chairことpp505は1952年リリース。
70年も前にこのとても座り心地良さそうでアイコニックな背もたれと肘掛けをデザインしたのは凄い…。
70年の時を経て現代風にスタイリッシュにデザインし直したのかもしれない。
椅子デザインの歴史が面白そうなので、系譜が分かるものがあれば見てみたいものだ。

pp505に浮気しそうにもなったが…。
でも大丈夫。
CH88PはCH88Pでカッコいいんだ。
ほら、見てよこの異マテリアルの共存、融合、調和。
これが多様性の時代だよ。

後ろ脚の垂直を意識して撮ったらとても男前だった

そして、上の写真を見るとよくわかるが、実はCH88Pの脚は地面に垂直ではなく少し開いた形をしている。
ワザとらしくないこの角度もいい。
この微妙な開きが、この椅子の印象を柔らかなものにしている一因であったりもするのだろう。
見ていて飽きない。

この記事が参加している募集

買ってよかったもの

このデザインが好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?