知らなかったお父さん

父親の話をしよう。

私のお父さんは、音楽と読書が好き。
音楽はジャンル問わず、洋楽、邦楽ロックからジャズ、クラシック、民族楽器まで音が出てメロディーが奏でるものであればなんでも好きらしい。
レコードとCDで埋め尽くされた部屋がついこの間まであった。

定年を控えて、大量のレコードを業者に売った。家にはトラックがきて25箱の段ボールが巣立っていった。相当な金額で売れたらしい。
整理が好きで、PCでレコードやCDのジャケ画像を載せた一覧表で管理されていた。研究者気質の彼ははまるととことん突き詰めるようで、趣味に関しても。趣味だけじゃなくて毎日の血圧や体重も記録を作成しグラフで分析している。

お父さんと私はものの考え方が似ているのか妙にウマが合う。芸人の又吉のすこしシュールな笑いが好きだし、日曜の朝の、儲かっている会社を紹介するTV番組のがっちりマンデーは一緒によく見ている。私もお父さんも口数は少ないけれどなんか通じるものがあるかもしれない。

そんなお父さんが最近バンド活動に精を出している。
毎日帰宅後に2時間くらいベースやキーボードの自主練をしている。なんと、職場仲間とライブハウスを貸し切りワンマンライブをするというではないか。是非とも生で見たい、どんな仲間とどんな音楽をやってるのかとても気になる。めったに数カ月先の予定は入れないが、これだけは半年前から楽しみにしていた。

ライブの前日、何を着ようか迷っているお父さんは、遠足前日の少年のようにワクワクそわそわしていて可愛かった。

ライブは知り合いや同僚が見に来ており、30人くらい集まっていた。ミスチルといった王道のカバーを1時間ほど。知っている曲が多くて楽しかった。昔音楽をやっていた人ばかりなので演奏は慣れていて、MCも客を巻き込む上手さ。おじさまばかりなので落ち着いていて、意外に面白かった。

ライブハウスFUZZでのライブ

その後の打ち上げでお父さんの意外な一面を知ることもできた。
お父さんの仕事関係の人に職場での印象を聞いてみた。
いつも機嫌がよくて楽しそうにしているらしい。
確かに家でイライラしたり怒っているところは30年以上一緒にいるが見たことがない。人の悪口を言うこともないし、好きな仕事をしているせいか愚痴もほとんど聞いたことがない。
当たり前と思っていたけれど、
これってすごいことだし、
究極の菩薩なのかもしれない。

家族としてのお父さんじゃなくて、
外の世界でのお父さんを見るのは新鮮だし、やっぱりすごいなって思った。自慢のお父さんだな。

来ている人も、研究一筋みたいな人が多くて、
一つのことを突き詰めるのって、
地道な努力と根気強さが必要なわけで、それが人柄にもよく出ている

私も好きなこと仕事にそろそろしてもいいのかもと思った。
効率よく仕事をさばいて早く帰る会社員も向いているけれど、
もっと好きなことをじっくり、すぐには解決できないし、
答えもないし、正解もない。そういうことに向き合うのもいいのかなとぼんやり思った。

このnoteは2023年度3月の最終出勤日の仕事終わりに書いている。
4月から新しい年度が始まる。
新しいこと・好きなことを突き詰めること、じっくり向き合うことに時間とお金を使ってみよう。
その分何かできない犠牲がでたとしても、後悔はしないと言い聞かせて。自分がどうしたいかを大切に、つい人からの評価が気になるけれどそれは少し横に置いておこう。