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ご近所のラブラドール まるちゃん

向えの家に住んでたラブラドールのまるちゃんのはなし。

まるちゃんの家の人は夜遅くまで帰ってこない。
まるちゃんは庭でいつも過ごしていた。
季節がいいときは気持ちよさそうに走り回っていたし、
宅配のお兄ちゃんにうまく愛想も振りまいていた。
真夏と真冬と雨の日はすこしかわいそうだった。

まるちゃんは人懐っこい。
植え込みの真ん中に丸い穴が開いている。
まるちゃんが通りすがりの人に撫でてもらうために、
いつも茂みに首を突っ込んでいたら丸くなった。

夏のある日、
私が小学校から帰ってきたら、
まるちゃんの様子がおかしい。
いつもの遊んでという声が聞こえない。
お母さんを呼んで門扉の前までいくと
まるちゃんはぜぇぜぇ言っている。
まるちゃんの小屋の前のお水がすっからかんだ。
のどが渇いて苦しかったよね。
お水を上げるとすっかり元気になった。

まるちゃんの家の門が開いている。
まるちゃん道路に出ちゃったよ。
郵便局のおじさんが親切にまるちゃんを家の中にいれている。
ここ僕の家じゃないよおじさん。。。
僕の家は斜め向えだよ。。。
まるちゃんの眉間にしわがよっているような気がした。
まるちゃんを無事にお家に戻してあげた。

まるちゃんはもういない。
今はゴールデンレトリバーの赤ちゃんが住んでる。
君の前には黒いまるちゃんがいたよと教えてあげたい。

人懐っこくてほんとは一緒に遊んでって言ってるのに、
声が大きくておまけに渋い低音だから、
前を通る子供はびっくりして怖がってた。

たまにふと思いだす、まるちゃん。
もう茂みのまあるい穴はないけど。


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