見出し画像

【天気】なぜ暖かくなると強い雨が増えるのか(その3:台風)

■ 「温暖化」→「強い雨」を考える

 温暖化から強い雨が降るまでの間を埋めていくシリーズ、今日は第3弾です。第1弾・第2弾は↓の記事をご覧ください。

 ざっと知りたい方のために内容をまとめます。第1弾では地球温暖化。第2弾では水蒸気について書きました。

【地球温暖化】
・地球温暖化とは、地球の平均気温が長期的に上昇することを言う。
・実際に地球の平均気温はここ100年間で0.74度、日本ではここ100年間で1.24度上昇しており、温暖化には疑う余地がない。
・地表の気温とともに海面水温も上昇しており、ここ100年で0.55度上昇している。
・水は空気の3000倍以上の熱容量(熱を蓄える能力)があるため、海が温まってしまうと冷ますのが大変。
【水蒸気】
・雨の原料は水蒸気であり、水蒸気は気体の状態の水である。
・海面の水温が上がると、海から蒸発する水蒸気の量が増える。
・大気の温度が上がると、大気中に持てる水蒸気の量が増える。
・水蒸気には二酸化炭素を凌ぐ温室効果がある。

■ 今日の主役:台風

 今日の主役は、台風です。台風も皆さん聞きなじみがある言葉ですね。一昨年は関西国際空港の高潮被害を起こした台風21号、昨年は多摩川氾濫の台風19号が話題になりましたね。

 台風も語り尽くすとキリがないので、ざっくりと知りたい我々の恩師である、Wikipedia先生に尋ねてみましょう。

台風(たいふう、英語: Typhoon)は、北西太平洋または南シナ海に存在する熱帯低気圧で、かつ低気圧域内の最大風速が約17.2 m/s(34ノット、風力8)以上にまで発達したものを指す呼称。

 うおぅ、、Wikipedia先生でもここ最近稀に見る複雑な1文目ですね。なんか定義っぽい。。そうなんです。これが定義なのでしょうがないですね。。

 少し噛み砕いておきましょう。台風はいわば「強い熱帯低気圧」です。世界では強い熱帯低気圧の呼称は「ハリケーン・サイクロン・台風」の3種類があり、中心位置によって呼ばれ方が異なります。

 東経100度と180度の間で赤道より北側にあると台風と呼ばれるため、日本に接近・上陸するものは全て台風ですね。アメリカに上陸するのは全てハリケーンです。

 ※ちなみにこの図を見ると分かるように、ハリケーンで生まれて西に進んで台風になる越境台風もたまにいます。生まれた場所は関係なく、進んだ位置に応じて呼び名が変わる、公平な身分制度の中で過ごしているんですね。

■ 熱帯低気圧って何

 「よし。強い熱帯低気圧で位置によって呼び名が変わる事は分かった。で、熱帯低気圧って誰?」と思われた方のために、熱帯低気圧の説明を簡単にします。私たちが普段目にする低気圧には、熱帯低気圧温帯低気圧の2種類があります。

熱帯低気圧とは、亜熱帯や熱帯で海から大量の水蒸気が上昇することにより空気がを巻いて出来る低気圧のことです。
温帯低気圧は、北側の冷たい空気と南側の暖かい空気が混ざりあおうとして空気がを巻くことにより出来ます。

 どちらも渦を巻いた雲の塊で、近づくと天気が悪くなるのですが、その雲の塊ができる原因が2種類あります、という事ですね。ひとつは水蒸気が一定以上貯まると渦を巻いて大きくなり始める熱帯低気圧(台風)パターン、もう一つが暖かい空気と冷たい空気がぶつかって前線を伴いながら進む温帯低気圧です。

 ちなみに普段私たちが「低気圧」と耳にした場合、9割ぐらいは温帯低気圧だと思います。熱帯低気圧を表す場合は天気図にもちゃんと「熱」とか「熱低」とか書いてあるので見分けがつくと思います。

 覚え方は、「前線があれば温低」です。これだけでほぼ大丈夫です。

■ 今日の主役は熱低

 しかしながら今日の主役は熱低の方なんですね。なぜ熱低が主役かと言えば、もう一度説明を見てみましょう。

・熱帯低気圧とは、亜熱帯や熱帯で海から大量の水蒸気が上昇することにより空気が渦を巻いて出来る低気圧のことです。

 出た出た、、ここできますか水蒸気君。お久しぶりですね。何やら温暖化の影響で最近増えているとかでお元気そうで。。

・・・はっ・・・(;゚Д゚)・・・!!

・・・という事でもうお気づきですね。熱帯低気圧や台風の原料(エネルギー源)は水蒸気で、その水蒸気が温暖化で近年増えてきていると。。なんか嫌な予感がしますね。。

■ 水蒸気の運び屋

 前提として、日本で降る大雨の2大要因前線と台風です。これ以外の大雨はほとんど聞きません。まさに今猛威を振るっているのは梅雨前線で、こいつに停滞されると一瞬にして土砂災害や河川氾濫の危険性が高まります。これについてはまた次回。

 もう一つの大雨の要因が台風(≒強い熱帯低気圧)です。台風は直径が数百キロもある積乱雲の塊ですから、台風が運んでいるのは相当な量の水です。ブログで概算を出してくれている方がいました。

台風の広がりの大きさを100万平方Km、高さを10Km、温度も気圧も一様ではないが、1気圧、10℃、湿度100%の空気で満たされていると仮定すると、飽和水蒸気量は1立方メートル当り9.4gなので、総水蒸気量は940億トンになる。

億トン・・・?お布団・・・?もう聞いたことが無い単位ですね。。全然想像がつかない。。ちょっと石油タンカーでイメージしてみましょう。

石油タンカーは、その使用目的だけではなく大きさによっても分類されている。載貨重量トン数にして数千トン程度の内水面・沿岸用タンカーから、55万トンに達するマンモススーパータンカーまである。2006年6月時点で、1万載貨重量トンを超える石油タンカーは4,024隻ある。タンカーは年間およそ20億トンの石油を輸送している。

一番大きい石油タンカーが55万トンのようなので、1000憶トンを運ぶのには約1800万台が必要ですね。ちなみに最後の文、「タンカーは年間およそ20億トンの石油を輸送している。」なので、世界中の全タンカー全量が年間に運ぶ量の、ざっと50倍ですね。なんだ50年分か。大したことないやん。

・・・それが台風1個あたりに運ばれる水分量。。。台風は年間多い時で30個ぐらい発生するので、、、石油タンカーにもっと頑張ってもらわないといけないですね。。

 という事で、台風は尋常じゃない量の水蒸気を南の海から日本に運んできてくれるんですね。そして、海にあっても水蒸気になっても水は水なので、運ばれてきた大量の水蒸気が雨になって降ると相当な量の雨となり、50年に一度の大雨みたいな大雨をもたらしたりするんですね。

■ 水でいてくれればいいのに・・・

 よく考えると、「じゃあ君、ちょっと940憶トンの水持ってきて~」と言われると大変ですよね。年間の石油タンカーで運ばれる量の50倍の量を日本に運んでくるとなると大変です。それはそれは壮大な国家プロジェクトですよね。でも一度気体の状態の水蒸気にしてしまうと、我々人間は何もしなくても、台風が勝手に運んでくれてしまうんですね。。しかも年間何発も。。

 という事で大気中の水蒸気が増えると、最大の運び屋である台風が運べる水蒸気の量が増えるんですね。そして養分である水蒸気が多い海域では台風君がぐんぐん発達してしまうので、更に大量の水蒸気を運べるようになると。。

 台風は一般的に、海水温が27度以上の海域で発達すると言われています。それだけ水蒸気の供給が活発な海域という事ですね。ですが北上するにつれて海水温が下がり、日本に上陸する頃には勢力は徐々に弱まっていくのがセオリーです。だから沖縄付近で920hPaなどでも、本州付近に来ると970hPaぐらいに弱まったりするんですね。

 ところが、例えば昨年の台風19号を振り返ると、関東地方上陸時には955hPaでした。一昨年の台風21号も950hPaで徳島県に上陸しています。近年大きな被害を出している台風は、あまり勢力が衰えずにそのまま日本付近まで来てしまうため、これまでに無かったような大雨や暴風をもたらしているようです。

 これはなぜか。明確な因果関係は出ていませんが、温暖化により海面水温が上昇していることが一因だと言われています。現代では明確に傾向が出ていなくても、海面水温が上昇する将来は、台風は大型化・強力化すると言われています。

 下の図は、気候モデルによりシミュレーションされた、2005年9月の平均海面水温(左)と、2076年の平均海面水温(右)の図です。どちらの海域で台風が発達しやすいかは一目瞭然だと思います。海面水温の上昇が今後も進んでいくと、台風にとっては格好の餌場を通って元気満タンで日本列島に突っ込んでくることができるため、これまでに無かったような暴風・大雨が起こることが懸念されています。いやはや海面水温の上昇は恐ろしいですね。。

■ スーパー台風

 このまま将来の海面水温の上昇により台風が強大化すると、最大風速が秒速で約70mを超えるスーパー台風が日本に来るだろうと言われています。そうなると雨はもちろんのこと、竜巻のような突風が数百キロの範囲で吹き荒れてしまうと、建物・電柱・車・畑など、生活に大打撃を与えてしまうかもしれません。いやぁ、、来ないで欲しい。。

■ まとめ

 ということでまとめます。今日は台風について書きました。

【台風】
・台風は、北西太平洋または南シナ海に存在する強い熱帯低気圧
・熱帯低気圧は、水蒸気が集まった渦
・台風がもつ水蒸気量は約1000憶トンにものぼる。
・台風の栄養は水蒸気なので、海面水温が高く水蒸気が豊富な海域で発達する。
・温暖化により海面水温が上昇すると、発達して衰えないまま日本付近に上陸するスーパー台風が来ることが懸念されている。

いやぁ。。最近では沖縄付近で「猛烈な」とか「超大型の」と呼ばれる台風が増えてきましたよね。900hPaなどの気圧を聞くことも珍しくなくなってきました。それがほぼそのままの勢力で上陸するとなると、、、考えたくないですね。。

次回は大雨をもたらすもう一つの要因「前線」について書きます!今まさに日本列島に猛威を奮っていますが、前線が温暖化とどんな関係があるのかという点について書いていきたいと思います。

では!(^-^)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?