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【考え事】ラストワンマイル(学び編)

 これまで書いてきた「ラストワンマイル問題」の最後、今日は「学び編」です。事例編、解決編①②③で見てきたラストワンマイル問題への対応から、今後似たような事例に当たった時に頭の片隅に置いておくと便利なヒントをまとめたいと思います。過去記事は以下にまとめています。

【調べ物】ラストワンマイル(事例編)
【調べ物】ラストワンマイル(解決編①:物流分野)
【調べ物】ラストワンマイル(解決編②:限界集落)
【調べ物】ラストワンマイル(解決編③:その他)

■ ラストワンマイル問題を図にする

 物流から血液までいろいろな問題があったので、ちょっと考えやすくするために抽象化します。まずは下の図のような感じでラストワンマイルを捉えなおしましょう。

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■ 解決策一覧

 次に解決策の一覧です。これまでの記事で解決例を色々と見てきましたが、それらを無理やりグルーピングしたような感じです。今後何か新しいラストワンマイル問題に当たった時に、一つだけではなく複数のアイデアの組み合わせでも良いので、何らかの改善の糸口になれば幸いです。字が小さくて見づらいかもしれないので、考え方の要点を以下に説明します。

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1.投げない

 まず「末端までどうやって届けられるか」を考える前に、「無理して届ける必要があるのか」という点を疑ってみましょう。管理下に置かれた状況が複雑であればあるほど、管理する側に無理が生じることになります。今後の多様な社会のキーワードは「自律分散型」になると思います。インターネット・ブロックチェーン・C2C・第四次産業革命・AIなど、近年の様々なトピックが「自律分散」の考え方をベースにしています。この流れに任せるという意味では、あまり階層型にトップダウンで管理しないという発想が必要になってくると思います。冷え性の部位を温める、Iターン人材などを起爆剤にして地元のモチベーションを高めて地方創生を行うなど、情報を届けたい末端組織(ユーザー)を支援する形で見守る場を作るというのが良いかもしれません。

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2.球速を上げる

 どうしても投げる(届ける)必要がある場合、まずは球速を上げることを考えましょう。一番分かりやすいのが「電子化する」ことです。これまでハガキで送っていたDMを電子メールにする、ガスの支払い明細をWebで確認できるようにする、など送るべき情報を電子化することで一気に光の速さで相手に届けることができます。光の速さであれば+10往復でも+20往復でも苦ではありません。電子化できるものは電子化してしまいましょう。(※「ぬくもり」や「思いやり」、「今までどおり」などを大切にして敢えて紙で送ることを否定するものではありません。)

 電子政府でおなじみエストニアでは、日本と同じく高齢化問題への対応に迫られており、高齢者が役所へ手続きに行くのが地理的に困難だったため早急に電子手続きを進めざるを得なかったという事情があったようです。ニーズドリブンで電子化された好例だと思います。また、物流拠点を自動化して配送リードタイムを短くすることも有効だと思います。これまでラストワンマイルの配送にかけられる時間が1日だったのが2日になるだけでも改善幅は大きいと思います。

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3.コントロールを磨く

 そうは言っても大体の郵便物が電子化されており、「今ラストワンマイルで悩んでいるのは商品だよ商品。あの段ボールが電子化できれば苦労しねぇよ。」というご指摘が入ると思います。ごもっともですすみません。その次のステップで効果を発揮するのが「予約制」だと思います。事前に「どこに・何を・いくつ運ぶか」が分かっていれば予め準備しておくことができるため、エリア別の見込みなどを建てることができると思います。航空チケットの「早割」など、早く頼んでくれた人への特典などをつける形で、なるべく予約・事前注文の形に変更することが有効だと思います。また、もともとデータを取ることができなければ多様な顧客の要望は見えてこないのですが、予約制にすることでニーズの輪郭が見えてくる効果もあると思います。

 もし事前の注文ができない場合はデータから需要を予測しましょう。Amazonの予測配送がいい例ですが、「毎週木曜日の午後に2リットルの水を必ず注文する人」など、予測可能な部分を予測して配送の不確実性を下げておくことが有効だと思います。

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4.近くから投げる

 これは「1.投げない」に近い考え方ですが、そもそもそんなに遠くから投げる必要があるのかどうかを疑ってみると良いかもしれません。ユーザーからしてみれば注文した商品がロシアから届こうが隣町から届こうが違いは分かりません。無理に配送コストを増やすのではなく、現地調達できないかを考えてみると良いかもしれません。

 また、階層の数を減らすという点で「ラストワンマイル分はユーザーに取りに来てもらう」という発想も当てはまります。人口減少でラストワンマイルの苦労はユーザーも分かってくれる時代なので、「自由な時間に受け取れます!」などをアピールポイントに宅配ボックスや店頭受け取りを勧めるのが良いと思います。電子媒体で言えば「掲示板」等がそれにあたると思います。個人に直接送るのではなく、Webページを見に来てもらうような形です。

 こうして階層数を減らすことで相対的にラストワンマイルの重みを下げる、というのが有効な手段になると思います。組織図で見た「都市型組織」も、トップの直下の階層に部署がずらりと並ぶ形で、部署の数は増えますが階層数を減らすことができ、柔軟性を上げることができるとされています。

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5.球数を増やす

 これらでも解消できない場合は最後の手段、「球数を増やす」という方法があります。これは「そもそもピッチャーが投げる必要あるんだっけ?」という問いかけになると思います。別に方が疲れないピッチングマシーン(ドローン)でも良くて、野手も全員呼んで皆で投げても良くて(共同配送・静脈物流)、何ならお客さんも呼んでファン感謝デーのような形にしたら投げる人がだいぶ増えるよね?(Uber)という発想のようです。ピッチングマシーンや一般への依頼はハードルが高いですが、運びたいエンドユーザーに定常的にタッチしている人についでに運んでもらうという静脈物流・共同配送の考え方は比較的導入ハードルが低いと思います。

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 以上です。今週は「ラストワンマイル問題」を扱ってきましたが、色々な分野から解決策を集めることで、突破口の糸口が少し見えてきた気がします。少なくともこれらの合わせ技も含めれば「打つ手なし」という状況にはならないと思うので、後は粘り強く実装していくのみですね。

 人口減少が続く今後30年ぐらいは至る所でこの「ラストワンマイル問題」が出てくると思うので、その際に「あ、なんか書いてたな」ぐらいの頭の片隅にでも留めて頂ければ幸いです。


【参考資料】

エストニア電子政府


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