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怪談『虎』

これは、あるおじさんが子供の頃体験したお話です。

ある日、少年が濁りきった川の近くを通ると、水面に何かが浮かんでいました。
それは虎の爪のようなもの。
黒く光り、先端は鋭く、まるで何かを待ち伏せしているかのようでした。
少年は不思議に思い、石を一つ投げてみました。
するとコツンと跳ね返り、爪のようなものは沈みません。
どこまで耐えられるのか気になった少年は、次々と石を投げました。
ですが、その爪のようなものは全く沈む気配がありません。
苛立ちを感じた少年は、大きな石を手に取り、「ドボン」と川へ投げ込みました。
石は直撃しなかったはずなのに、何故か爪は静かに沈んでいきました。
勝ったような気分になった少年は、上機嫌で家に帰りました。

その夜、家で風呂に入っていると、湯船の中に再びその爪のようなものが浮かんでいるのを見つけました。
「なんでこんなところに…?」
少年は不審に思いながらも、目を離さずに見つめていました。
すると、その爪はゆっくりと水面下に沈んでいきました。
次の瞬間、水が激しく波打ったかと思うと、ざばあっという音と共に、水面から異形の者が現れました。
それは4歳ほどの子供の姿に似ていましたが、その体は透明で、その内側で何かが蠢いているような不気味な見た目をしていました。
そして、大きく冷たい目でじっと少年を見つめていました。
その異形の者は「お前か」と低い声で囁きました。
少年が動けないまま見つめていると、子供は突然ガッと腕をつかみ、鋭い牙でかぶりつきました。
激痛が走り、叫び声を上げ、あまりの痛みに目を閉じて悶えていると、いつの間にか異形の者は消え去っていました。
しかし、腕にはくっきりと歯形が残り、その傷は今でも消えていないそうです。

「そりゃあもう、痛かったよ」と、おじさんは笑いながら袖をまくり、腕にぽっかりと空いた穴を見せてくれました。

あとがき

この怪談は、干支をモデルにした連作怪談『十二怪談』の1作として4年前に書いたものを、ChatGPTで怖さを倍増させた作品です。
「虎」というタイトルですが、厳密には「水虎」という中国の妖怪をモチーフにした作品です。

もしこの怪談作品を少しでも楽しんで頂けたら、スキやフォロー、コメントを頂けると嬉しいです。

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