言葉の宝箱 1074【スキルを磨いていければいい、理不尽なことが起きたとしても、サバイブしていける自信を培えるように。搾取でもなく、強要でもなく、自分自身のために経験を積んでいけるように】

『二十一時の渋谷で　キネマトグラフィカ②』古内一絵
（東京創元社2021/9/30）

老舗映画会社の銀都活劇が映像配給会社に買収されることが決まった。
ＤＶＤ宣伝チームを率いる
砂原江見は全ての企画が止まった会社で改めて働く意味を探し始めた。
『ミステリーズ！』連載を加筆修正し単行本化。

新元号が発表された日、宣伝部の砂原江見は長く勤めた老舗映画会社の銀都活劇が大手ＩＴ企業に買収されることが決まり岐路に立たされていた。
社内には弛緩した雰囲気が漂い、退職者も続出していた。
ＤＶＤ宣伝を手がける江見の部署も一癖ある部下達も、
この先どうなるかわからない。
では銀活の名前が消えるまでに自分は何がしたいのか。
バブル、ロスジェネ、ゆとり、さとり、
様々な世代から働き方を問いかける。キネマトグラフィの続編。

・令和（略）
和して命令を聞くという情景が広がり、少し背筋が寒くなった。
元号なんて、どうでもいい　P8

・人生の航路はどうあっても厳しい　P11

・人の問題ではない。システムの問題だ　P16

・好きだったから、結婚した。それだけでは駄目だったのか　P31

・和して命令を聞いてばかりいて、たまるものか（略）
歯車を舐めるなよ　P44

・会社に長く残る社員が優秀なわけではない　P52

・楽して生きてなにが悪い。苦労なんてまっぴらごめんだ　P56

・徒党を組んで、ルールを振りかざして、出る杭を打ちまくってきた（略）それが普通だ　P68

・ブラックとかホワイトとか、いろいろ言われますけど、
皆、ちゃんとお金をもらえる範囲で努力して、
自分のために働けばいいと思うんですよ。
どのみち私たち、働かないと生きていけないんですから　P82

・厳しい環境に置かれると、人は我が身を守るために
序列確認（マウンティング）と
生贄探し（スケープゴート）に勤しみたがる。
それが一番手っ取り早い団結の指針になるからだ　P105

・自分勝手にしか生きられない。
どんなに大義名分を言い立てたって、
結局は自分のことばかり考えている　P120

・張り合うんじゃなくて、協力したかった　P122

・誰かをあてにしたり、
吹いてくる風を待ったりしているだけではなにも変わらない。
ちっぽけな種火を大きくして、自ら風を起こすのだ　P124

・持ってる人はね、最初からなにも気づかないの。
奪うばかりで、奪われる人の気持ちを知ろうともしないんだ　P136

・誰かと一緒にいるほうが、寂しくなる夜もある　P140

・善意とは非常に厄介な代物だ。
善意で差し出されたものが、善意のうちに処理されるとは限らない。
それでも誰かを悪者にしたくないからと曖昧にしているようでは、
本当の善意はどこにも届かない　P151

・自分の人生が虚しいか虚しくないか。
そんなことは、
現在進行形で生きている私たちには、そもそも分るはずがない。
ましてや、他の誰かに断じられるものではない　P167

・色々あきらめたら、すごく楽になっちゃった（略）
歳を取るのって、正直嫌なことだけど、
あがいていたことをあきらめるには、いいきっかけになるのよ　P250

・終わりが見えているものに対し、人は往々にして寛大になる　P255

・スキルを磨いていければいい（略）
理不尽なことが起きたとしても、サバイブしていける自信を培えるように。搾取でもなく、強要でもなく、
自分自身のために経験を積んでいけるように　P280

・たくさんの人がいて、たくさんの働き方と生き方がある。
そこには正解も不正解もない。それぞれが選んだ方法でいくしかない　P295