見出し画像

言葉の宝箱0889【広げたものを畳んでいく未来が、迫っているのかもしれない】


『めぐりんと私』大崎梢(東京創元社2021/4/23)


めぐりんが本と人々を繋ぐ移動図書館ミステリーシリーズ第2弾、
5話連作短編集。
『本は峠を越えて』
家族の希望で縁もゆかりもない土地で一人暮らすことになった節子。慣れない町で移動図書館を見かけた事をきっかけに本と共にあった彼女の半生を回想していく。
『昼下がりの見つけもの』
偶然にも失くしたはずの十八年近く前に図書館で借りた本を見つけた優也。なぜこんなものが家にあるのか……ふと「めぐりん」で疑問を口にしたことをきっかけに、当時の出来事が明らかになっていく。冒頭で名前が挙がる『安楽椅子探偵アーチ―』は喋る安楽椅子が探偵役の異色の“安楽椅子探偵”もの。
『リボン、レース、ときどきミステリ』
派遣社員として働きつつ、趣味の手芸に力を入れている佳菜恵は二週間に一度の「めぐりん」の巡回日を息抜きにしていた。ある日見知らぬ男性社員に声を掛けられ、一緒に食事をすることになる。彼はミステリ好きで、佳菜恵のこともミステリが好きで「めぐりん」に通っていると勘違いしているようだが……?
『団地ラプンツェル』
めぐりんのステーションで60年ぶりに友人と再会を果たした征司。次の巡回日にまた会おうと約束したものの、友人は現れなかった。連絡先を聞かなかったことを後悔する征司だったが、そこへ二人の小学生が「あのおじさんの部屋を知ってる」と話しかけてきて……。
『未来に向かって』
小学生のころの移動図書館「ほんまる」と担当司書との出会いがきっかけで司書を志した典子。紆余曲折を経て司書になった彼女は「ほんまる」の廃止とそれにかつての担当司書が関わっていることを知る。そして、「ほんまる」廃止について調べていくうちに、その担当司書の思惑も明らかになっていく。

・不完全で欠けている部分があるからこそ新しい出会いがある P51

・力を入れなくては身体が揺れてしまうほど気持ちがぐらついていた P88

・慣れてきたので自分なりの裁量で仕事が進められる P99

・ただの趣味ではなく対価を求めるのならば質の高さは必須で、
ひとりよがりではなく、個性的でなくてはならない P139

・想像力さえあれば、一冊の本から宇宙旅行もできる P142

・広げたものを畳んでいく未来が、迫っているのかもしれない P206


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?