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言葉の宝箱 0577【喜び二倍で、重荷は半分。いろいろあっても夫婦でいる最後の理由】

『雲を紡ぐ』伊吹有喜(文藝春秋2020/1/25)

壊れかけた家族はもう一度、一つになれるか?
羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた
「時を越える布・ホームスパン」をめぐる親子三代の「心の糸」の物語。
いじめが原因で学校に行けなくなった高校生・美緒の心のよりどころは
祖父母がくれた赤いホームスパンのショールだったが、
このショールをめぐって、母と口論になり、
美緒は岩手県盛岡市の祖父の元へ家出をしてしまう。
ホームスパンの職人である祖父と共に働くことで、
美緒は職人たちの思いの尊さを知る。
一方、美緒が不在となった東京では父と母の間にも離婚話が持ち上がり、
とても短い「家族の時間」が終わろうとしていた。
「時代の流れに古びていくのではなく、熟成し、育っていくホームスパン。その様子が人の生き方や、家族が織りなす関係に重なり、
『雲を紡ぐ』を書きました」と著者が語っている。

【第一章】六月:光と風の布【第二章】六月下旬:祖父の呪文
【第三章】七月:それぞれの雲【第四章】八月:美しい糸
【第五章】十月:職人の覚悟【第六章】十一月:みんなの幸
【第七章】その手につかむもの【エピローグ】ホームスパン

・器用か不器用かより、作りたい気持ちがあるかどうかだ P59

・本当に大丈夫なら、わざわざ言わないものだ。
気に掛かっていることがあるんだろう P116

・良い職人の仕事は調和と均衡が取れていて心地よいんだ P119

・責めてばかりで向上したか?
鍛えたつもりが壊れてしまった(略)
大事なもののための我慢は自分を磨く。
ただ、つらいだけの我慢は命が削られていくだけだ P122

・言葉にしなきゃ伝わらないことって絶対あるからね P134

・『大丈夫、まだ大丈夫』。そう思いながら生きるのは苦行だ。
人は苦しむために生まれてくるんじゃない(略)
楽しむために生まれてくるはずだ。
毎日を苦行のようにして暮らす子を追い詰めたら姿を消すぞ。
家出で済んでよかった。少なくともこの世にとどまっている P158

*岩手県庁の近く、
櫻山神社の鳥居前にある「白龍」はじゃじゃ麵発祥の店(略)
じゃじゃ麵とは、盛岡冷麺、わんこそばと並ぶ郷土料理の麵だ。
中華料理のジャージャー麵が、この地で独自のアンレンジがなされ、
名前も短く(略)なったらしい P160

・言えないでいる相手を思う気持ちは、口に出して言うより強い P223

・ある程度学べば身につく。
必要なのは、美しいものを美しいと感じられる素直な心だ P226

・自然が生み出すものには命という力がある。
人間がつくるものには命がない。
だからこそ職人は、自分がつくるものに命を吹き込むことを夢見る P285

・前例のない道を進むとき、不安はつきもの。
空に手を伸ばすようで、手応えのなさに絶望することもある。
でも、誠実な仕事をしていれば、応えてくれる人は必ずいる P289

・あとから考えれば、いくらでも賢明な方法は浮かぶ。
しかしいざ、それに直面しているときは、何も思い浮かばないもの P290

・叩かれた痛みと心の痛みは、どちらが痛いのだろう。
気持ちを汲み取れと言われても、どう汲めばいいのかわからない P299

・手のかかるうちは助けて、あとは見守る。
それがジジババの役目ではないですか。
頼りにされた時期があるだけ幸せだ P302

・話してもわからない相手がいるから、争いは起きる。
そういう相手とは離れるべきだ。
どうしても離れられないのなら、つかず離れずの距離を保つしかない P304

・一つのことを仕上げると、次の目標が生まれてくる P306

・女性が本気で別れを決めたときは、
気付けれないように着々と身辺整理をしていって、
めどがついたところで最後通牒を出すものだ。
離婚届を突き付けられずに別れ話が出たときは、相手も情が残っている。
まだやり直せるぞ P313

・望んでも得られぬものがあるとわかるのが、大人になるってことだ P347

・喜び二倍で、重荷は半分。
いろいろあっても夫婦でいる最後の理由って、
結局、そういうことじゃないかな P352

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