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言葉の宝箱 0186【優しさだけじゃ生きていけない。情に流されない厳しさと、ときには狡猾でなければならない】

『崇徳伝説殺人事件』内田康夫(角川文庫2007/8/25)

皇統をめぐる争いに敗れ、呪詛のうちに流刑の地で没した崇徳上皇。
特別養護老人ホームの理事長栗石はこの貴人を信仰していた。
その施設内で老人の不可解な死が相次いだ。
一方、天皇家にまつわる怨霊伝説を追う浅見光彦は京都で見知らぬ女性から唐突にフィルムを手渡され、現像してみると驚くべき光景が。
安楽死、老人福祉問題をテーマに人間の尊厳を真摯に問い直すミステリ。

・新天地が開けると思えば、それもなんとか耐えられるだろう P26

・ぼけたことを言ったりしたりする彼らにだって、
常識や理性が残っている。
その常識と理性は、いまの自分が本来あるべき姿でないことに気づいて、
もどかしく悲しいにちがいない。
しかし、いくら気づいていても、思いどおりに行動に示せないことで、
いっそう惨めになって、
何もかも忘却の底に沈めてしまおうとしている P38

・人それぞれ、立場によって物の考え方も違う(略)
優しさだけじゃ通用しない面が出てくる(略)
人間としての欲望もある。身勝手さもある。狡さもある。
それに対応するには、優しさだけじゃ生きていけない。
情に流されない厳しさと、
ときには彼ら以上に狡猾でなければならない P127

・いつまでも不幸を引きずっていては、
世の中、生きていけないには違いないけれど、
人間の回復力のたくましさに、
いささか鼻白む思いがしないでもなかった P142

・平気で嘘を言える人には、気いつけたほうがええよ P257

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