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言葉の宝箱 1058【自分で自分が、可哀想になっちゃったの。誰のための人生だったのかなあって考えちゃって。子どものため、夫のため。それは、それでいいのよ。そういう時期があってね。でも、残された時間くらい、自分のために使っちゃいけないかなあって】

『行きつ戻りつ』乃南アサ(新潮文庫 2002/11/28)


どこの家庭でもありそうな、
でも他人には言えない妻の悩み夫との冷え切った関係。
姑との対立、病死した一人息子への想い、受験生を抱える辛さ、
あるいは生活費の工面や、男友達との密会だったり……。
それぞれに事情を抱えた妻達は何かを変えたくて旅に出た。
新鮮な風景と語らいが、少しずつ彼女の強張った心を解きほぐす。
切ないけど温かい、家族を見つめた物語12話。
『姑の写真(秋田・男鹿)』『一粒の真珠(熊本・天草)』
『微笑む女(北海道・斜里町)』『最後の嘘(大阪・富田林)』
『青年のお礼(新潟・佐渡)』『母の家出(山梨・上九一色村)』
『湯飲み茶碗(岡山・備前)』『姉と妹(福島・三春)』
『Eメール(山口・柳井)』『越前海岸(福井・越前町)』
『泣き虫(三重・熊野)』『春の香り(高知・高知市)』


・せっかちで、ぼんやりすることの大嫌いな人だった。
意地悪ではなかったが、気が勝っていて、
とにかく譲るということを知らない P15

・嫌悪を通り越えたもの P16

・「妻」にはなったが「嫁」になったつもりはない P21

・人生なんてね、石段をゆっくり登り続けるようなものよ。
最後まで登ってみなきゃ何が待ってるか分からないし、
見えてくる景色だって変わるに決まってるんだから P24

・せっかく縁を持った人との関わりが、
あまりにも薄かったことへの、微かな悔い P27

・少しばかりの慰めと引き換えに、
噂の種になったり、どこか勝ち誇ったような表情を垣間見せたり、
また的外れなアドバイスを受けることになるのはご免だった P41

・泣いている、困っている人を見るのが好きなのだ。
そういう相手にならば、彼女はいくらでも優しく、
有り余るほどの慈悲の心を持つことが出来た P50

・貝になって、自分の中の色んな思いが
真珠みたいに生まれ変わるのを待つことも大切だと思ってるの P51

・逃げ回ってばかりいては何の解決にもならないことくらい、
頭で十分に承知している P52

・今、自分は何を真剣にやりたいのだろう。
それを考えると、暗い淵に突き落とされたような気分になる。
したいことが見つからない。実は、その事実に気づき始めたからこそ(略)とにかく必死になって小さな問題でもことさら大きくして、
騒いできたような部分がある。心の空白が埋まらなかったのだ。
自分のいる理由が見つからないような気がした P73

・誇りがあるんだろう。
受け継ぐべきものがあるっていうことは、いいことだよ P87

・子どもが逆縁の不幸を詫びるのが「賽の河原」P117

・自分で自分が、可哀想になっちゃったの(略)
誰のための人生だったのかなあって考えちゃって(略)
子どものため、夫のため。それは、それでいいのよ。
そういう時期があってね。
でも、残された時間くらい、
自分のために使っちゃいけないかなあって P130

・口に出して文句を言ったりはしないけど、
それは優しさからじゃないのよ。見えてないの P131

・力の及ばない先で、実を結ぶものがある。
ひたすら、ひたむきに取り組んだ後には、何かに委ねる必要がある P166

・私たちが思ってるほど、強くなんかないのよ、男なんて P185

・彼女は彼と生きる夢を、少しの涙と一緒に流し去った P198

・悩んでいるのは私だけじゃない、苦しいのは私だけじゃない P210

・羽目を外してるわけじゃない。
むしろ、これ以上、何かが壊れたりしないための、
これは小さな反乱だ P234

・夢見る力も情熱もなくなった自分が、
果たして幸福と言えるのだろうか P276

・夢見る力を現実が追い越して、
ふわふわとしたシャボン玉のような夢は、簡単に踏み潰されていった。
まずは、堅実に、確実に歩むことが先決だと、
いつの間にか思うようになり、やがて自分の可能性の限界を知り、
また勝手に決め込んで、安全な道を選ぶ癖がついた P278

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