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言葉の宝箱 1084【もっとたいへんな人がいる。その言葉を口にする時、人は自分自身の感情をないがしろにしてしまう】

『ガラスの海を渡る舟』寺地はるな(PHP研究所2021/9/23)


兄妹二人が営むガラス工房『sono』は大阪の心斎橋近くの『空堀商店街』にあり、兄の道は幼い頃から落ち着きがなく、コミュニケーションが苦手で、みんなに協調したり、他人の気持ちに共感したりすることが出来ない。妹の羽衣子は道とは対照的にコミュニケーションが得意で何事もそつなくこなせるが、突出した何かがなく、自分の個性を見つけられずにいる。正反対の性格である二人は互いに苦手意識を抱いていて、祖父の遺言で共に工房を引き継ぐことになってからも衝突が絶えなかった。そんなガラス工房にある客から「ガラスの骨壺が欲しい」との変わった依頼が舞い込む。
相容れない兄妹二人が過ごした10年間を描いた長編。


・もっとたいへんな人がいる。
その言葉を口にする時、
人は自分自身の感情をないがしろにしてしまう P23

・結婚したらかならず幸せになるってわけでもないのに P24

・ひとりひとり違うという状態こそが『ふつう』なんや。
『みんな同じ』のほうが不自然なんや P42

・身体がそこにあるうちは、
息をしていなくても、なんとなくまだ「いる」ことで安心できる。
だから臨終の瞬間よりも通夜のあいだよりも、
火葬場で点火ボタンが押される直前がいちばんきつい P53

・幸せだったかどうかなんて、誰にもわからない。
だけど、そうだったらいい。そうだったらいいとは思う P58

・簡単なもんではないのも、保証でけへんのも、
それはなんでも同じやから P62

・他人は、自分が言ってほしいことを言わせるための装置じゃない P85

・前を向かなければいけないと言われても前を向けないというのなら、
それはまだ前を向くべき時ではないです。
準備が整っていないのに前を向くのは間違っています。
向きあうべきものに背を向ける行為です P88

・他人の良いところを認めるより、
批判したり揚げ足とったりするほうが、ずっと簡単やな。
優位に立ったような気分になれるけど、
実際はその場にとどまったまんまや P92

・伝わってないって思うなら、言いかたを変えたらええねん。
なんの工夫もしないくせに
『わたしの気持ちをわかってくれない』なんて、ただのわがままや P112

・記憶って時間が経つと、すごく遠くなるよな P128

・新しいことは、いつだってとても静かにはじまる(略)
はじまったことに気づかないほどに、ひたすらに静かに P129

・他人の感情って、天候なんかと同じやなって。
ぼくがコントロールできるものではない、という意味では。
雨が降ったら傘さすみたいに対処すればええんや P182

・人間は
自分の都合に合わせてものごとの善し悪しを決めているのですよね P193

・世の中には、他人の気持ちがよくわかって、
そのうえで人を傷つけるようなことをしてきたり、
利用したりする人だっておるんや、たくさん P200

・いつまでも悲しむな、元気を出してね、みたいな言葉は、
励ましているようで、じつはぜんぜん違うんです。
その人の感情を否定している(略)
その人を元気づけるためではなくて、
ただ自分が気まずさから解放されたいから
『泣かないで』って声かけて(略)
泣いている人にただ寄り添うことすらできなかったんです P214

・欲しいものができたから。もうすこし、生きていたくなっちゃった P216

・人が亡くなった時というのは、みなさん混乱されますから。
感情のあらわしかたを間違えられることもあります(略)
泣きたいのに怒鳴り散らしたり、
抱きしめてほしいのに突き放してしまったり P223

*メメント・モリ的なことちゃうの(略)
いつも死について考えることで後悔のない自制を送りたいみたいな P231

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