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言葉の宝箱0673【優しいだけでは辛い。誠実なだけでは傷付く。優しいと誠実さを持ち続けるためには、強さが、ときには狡さと紙一重の強さが必要になる】


『グリーングリーン新米教師二年目の試練』あさのあつこ(徳間書店2018/9/30)


都会育ちの翠川真緑(通称グリーングリーン)は兎鍋村のお米の味が忘れられず、産地の喜多川農林高校で国語の教師として働いている。教師歴は一年ちょっとで頼りなく、生徒に心配される始末。それでも周囲の先生達、家主の藤内さん、そして201号に助けてもらいつつ、生徒と精一杯向き合う。
命を戴くとは?生きるとは?
自然と向き合う農林高校物語。

・都会と同じ、人間が生きているところだ。
苦悩があり、歓喜があり、希望と絶望がある。
懸命に努力する人たちがいて、狡猾で酷薄な人たちがいる。
貧困にあえいで、儲けを手にして、幸せを求めて、自分らしさを模索して、明日を見据えて、今このときしか考えられなくて、恋して、憎んで、謗って、疎んで、愛しんで生きている。
どこも変わりはない。ただ、向き不向きはあると思う P11

・教師は、親もそうやけど、決して友達になったらあかんの。
友達になるんは友達に任せたらええの。
教師には教師の、親には親の立場ってもんがあるんやからね。
友達と違うて、毅然として意見を言わなあかんときも、
叱らなあかんときも、厳しくせなあかんときも、いっぱいあるの。
一線を画すってのは教師にとって、ものすごう大切なことなんやで P18

・謝らんでよろし。謝罪は大切やけど、
この世には謝って解決できることは、そんなに多くありません P18

・筋肉が付いたのは手足だけじゃない。
気持ちの方も、ちょっぴりちょっぴり逞しくなった(略)
うん、やっぱり逞しくなってる。強くなってる。柔軟になってる P20

・生徒を信じるのもええけど、信じ切ったら何にも見えんようなるよ。
信じるて言うたら楽やけど、あえて、疑わなあかんときもあります。
楽な方に楽な方に流れたら、生徒の本当の姿なんて見えんようなるよ P44

・ため息を吐いて、それでどうにかなるほど現実は甘くない(略)
優しくない。だから性根を入れて立ち向かわねばならない P72

・今の時代、優しいことも義理堅いことも誠実なことも、辛い。
いろんな傷を負うことになる。他人に騙され、利用され、搾り取られる。
優しくあれ、誠実であれと大人たちは教えるけれど、
それは建前に過ぎない。
そういう大人たちが、他人を騙し利用し搾取する。
「騙される方が悪いのだ」とうそぶく。
優しい人が最後の最後に、勝者になり、宝物を手に入れ、幸福になる。
そんなことはめったにない。
現実は昔話とは明らかに違う(略)
優しいだけでは辛い。誠実なだけでは傷付く。
優しいと誠実さを持ち続けるためには、強さが、
ときには狡さと紙一重の強さが必要になる P117

・言葉なんてのは時々刻々変わっていくもんや。
日本語としていかがなものでも、
日常で使われとるんやったらちゃんと生きとることやろが P162

・成り行きなんて一言で、手酷く傷つけた P167

・一番楽で、一番傷つかない方法を選ぼうとしている(略)
自分が傷つかないために悩んでいる P172

・死者はもう何も語れない。何も伝えられない。
けれど、生者同士ならできる。
言葉を交わし、伝え合い、聞き合うことができる(略)
生きた人間は生きて言葉でしゃべり合えます。
通じ合えるとは言い切れないけれど、しゃべり合えますから P250


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