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言葉の宝箱 0630【逃がした機会。すれ違い。あきらめた思い。長い人生、うまくいくほうがまれ】

『花ひいらぎの街角 紅雲町珈琲屋こよみ⑥』吉永南央(文春文庫2019/6/10)


秋のある日、草のもとに旧友の初之輔から小包が届く。
中身は彼の書いた短い小説に絵を添えたもの。
これをきっかけに初之輔と再会した草は
彼のために短編を活版印刷による小本に仕立て贈ることにした。
そんな中、本作りを頼んだ印刷会社が個人データ流出事件に巻き込まれ、
行き詰まる印刷会社を助ける。
その過程で草は印刷会社周辺の人々の過去に触れ、
ある女性の死にまつわる不可解を解きほぐす。
「一つほぐれると、また一つほぐれてゆくものよ」
逃した機会、すれ違い、あきらめた思い。
長い人生、うまくいくほうがまれだったけど、丁寧に暮らすのが大切。
北関東の小さな町で珈琲豆と和食器の店『小蔵屋』を営む
おばあさんの周囲に温かく描かれる人間の営み、
日常にふと顔をのぞかせる闇が読む者を引き込むシリーズ第6弾。
『花野』『インクのにおい』『染まった指先』
『青い真珠』『花ひいらぎの街角』5話連作短編集。


・昔話をしていると表情が生き生きしてくるから不思議だった。
死は悲しいばかりでなく、時には、幾つもの生を結び直してくれる P24

・あれもこれもなくなった、これもあれも嫌だ、となげくより、
これが一つ残った、あれは好き、
じゃあ何ができるかな、と考えるほうが楽しい。
楽しがる癖をつけると、結局、自分が救われる P48

・あなた、案外、鈍いのね P58

・年をとっても、今だからこそできることがある P67

・言いたくはないが、言わずにはいられない P72

・自分をなだめて、苦しい時を生きてゆくのだ。
いつか抜け出せる日が来る P83

・逃がした機会。すれ違い。あきらめた思い。
思えば、長い人生、うまくいくほうがまれだった P104

・自分のために、動物を飼うようなものだわね。
こういうおばあさんを一日でも健康で長く働かせるには、
どうしたらいいか。面倒を見てやるの。一人二役(略)
時には父親にもなるから三役かしらね。
なまけ心が出てきたおばあさんには、こうパシッとムチを入れてね P122

・傷つけたくないし、傷つきたくない(略)
私、断られたことはあっても、断るのは初めてで(略)
だから、断られる気持ち、すっごくよくわかるんです。
やっぱだめかみたいな、自分に価値がとことんなくなっちゃったみたいな、あの感じ P130

・やればできるのよ、が口癖ですね P141

・捨てたもの、失ったもの、いっぱいあって、この店が残っていた P159

・うちでも外でも機嫌とってなんぼだからね P174

・お見合いは、条件合わせじゃないの? P184

・一つ何かがほぐれると、また一つほぐれる P192

・どんなことも、流れてゆく P230

・好きなものを大切にする人だった。
気に入ったものなら、何年でも待てる人だった。
人に対しても、同じだったのではないだろうか(略)
疎遠な親やきょうだいが近づいてきてくれるのを、
ずっと、ずうっと待っていた P234

・妻を信じ、一緒にいたいと願う P242


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