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大阪開催のさとゆみさんイベントに参加。「本を書くために必要なこととは?」

スタートアップカフェ大阪が企画運営する「書きたいが書けるに変わる創作講座」のプレイベントに参加。講師として登壇された、ライター・コラムニストの佐藤友美さん(さとゆみさん)のお話を聞いて、学んだこと、感じたことをまとめました。


会場は、関西大学梅田キャンバス「KANDAI Me RISE」

19時少し過ぎてからイベントがスタート。黄色のブラウスに白黒柄のスカート、赤いネイルとリンクしたカラーの大ぶりなイヤリングを身につけたさとゆみさんが登場し、拍手が沸き起こります。イベントの前置き説明中、会場をキョロキョロ見回して、何か言いたそうな様子のさとゆみさん。説明がひととおり終わると、「この位置で話すと、奥の人たち遠いし見えにくいですよね。私たちが真ん中で話をするから、みなさん椅子もって前に来てください」と。そのひと声で場が和み、各々がペンとノートをもって前方に集まり本題がはじまりました。

書けないときどうするか

「文章が書けないことには理由がある」と、さとゆみさん。
書けない理由として、書きだしに困る・構成に悩む・面白いこと書けない・着地の仕方がわからない…など会場からさまざまな意見がでました。さとゆみさんは、「書きたくなるまで考える(または取材する)。走り出す直前のクラウチングポーズのように、書きたくてたまらない状態にもっていく」と語ります。さとゆみさんは日常生活でも常に考え、頭のどこかに置いておくとか。本の書きだしも非常に重要で、もし10日間あったら、8日目までどう書きはじめるかを考えているそうです。
また、新人インタビューアーさんには「対象者のことを書きたくて仕方がなくなるまで帰ってくるな」と言うほど、取材準備は念入りに行うことが大切だと語っていました。

エッセイ本と無料ブログの違い

無料で読めるブログと、お金を払って買うエッセイ本。この2つの違いは「新しい発見があるかどうか」だそう。じゃあどうやってエッセイの種を見つけるのか。それは、「2つの物事を並べて抽象化する」とさとゆみさん。似ている現象の共通点を見つけていくうちに新しい発見が生まれ、さらにそこから気づく“2つ目の新しい発見”があると、(お金をもらえる)エッセイになることが多いと語ります。いくつかの例をあげて説明してくれましたが、うまく言語化できないからと、後日さとゆみさんから回答ををもらえることに。誠実なお人柄が垣間見えた瞬間でした。

読んでもらう本にするには

「自分が体験したエピソードを盛り込むことで、本を読み進めてもらえる可能性がある」とさとゆみさん。読書の推進力をつけるために、「読み手の頭に情景が浮かぶくらい深く掘り下げる必要がある」のだそう。さとゆみさんは「まったく知らない他人の体験が、自分の体験とつながることで共感が生まれる」と語ります。
ここで例えとして、とあるアパレル企業でホームページの文章書き方講座を行った話をしてくれました。テーマは「父の日のプレゼントを買ってもらうために、親に感謝したいエピソードを書く」です。
エピソードを書くときは、「うれしい・悲しい」という感想を書かず、体の動きや出来事など、脳内で映像を再生できるように書くといい、とさとゆみさん。印象的なエピソードの肝となる瞬間の「何時だった?何を着ていた?車の窓開いてた?」等を思い出し、見えた順番にエピソードを書くことで、読み手の頭に映像が再生されます。
アパレル企業で開催した講座では、そのシーンを見ていないのに感動を覚える、そんなエピソードを書いた方がいて、思わず泣きそうになったそうです。さとゆみさんからそのエピソードを聞いて、私も亡くなった父を思い出し、胸が熱くなりました(まさに他人と自分の体験がつながった瞬間!)。

自分の体験を言語化するために

詳しい描写を言語化するのは難しいと感じる人も多いでしょう。書きたいと思ったときのために、さとゆみさんは、常に自分の体がどう動いているかを観察しています。「手穴が開いた、鼻がひくひくした、空気が乾いていた」など、印象的な出来事の瞬間をしっかり観察しているからこそ、読まれる文章が生まれるのだと感じました。
また、人と違うものを書くには、視覚ではなく、触った感覚や空気など、目以外で感じたものを観察するほうがいいと語ります。インタビューも同様で、深掘りすべき部分が出てきたら、気持ちではなく、そのときどういう体験をしたのか、例えば「どこにいた?誰に電話した?何が見えた?」等を聞いて書く。記事を読んだ人の脳内に、再現VTRのように映像化されるのが理想だそうです。

その他、さとゆみさんが語った印象的なワードをあげておきます。
・本は考えるために読む
・読んだ人の血肉になるのが理想の本
・締め切りなど、制限されたときのほうが思考が定まる
・本の結論は、自分が知らなかったところに行きつく
・本を書いている間に結論が自然と出てくる
・はじめから結論がわかっていて書く本はつまらない

書評は7割がエピソード

Webメディア「telling」で書評も担当されているさとゆみさんが、書評を書くコツを教えてくれました。さとゆみさんは、7割が友人・知人のエピソード、残り3割は本について書いているそうです。これで実際によく本が売れるのだとか。「個人的なエピソードはAIに書けない。本のあらすじはAIに任せればいい。自分の思考がどんな旅をしたのかを書く」とさとゆみさんは言います。
書評イコール読書感想文だと思っていましたが、まったく違います。私はこれまで、山あり谷あり人生を歩んできたので、書評という形でエピソードを書いてみるのも面白そうだと感じました。

何分で何文字書けるかログをとる

さとゆみさんは、朝から15時くらいまでを書く時間にしています。30分置きにタイマーをセットして、何文字書けたかをチェック。何十年もログをとっているので、あと何時間あれば書けると見通しが立てられるそうです。
自著の場合は、書き出しから時間がかかることも多いそうですが、ブックライティングの場合は、ログのおかげでほぼ誤差がないのだとか。
「自分が何時間で何文字書けるかは大切」と以前から聞いていましたが、私はなんとなくしか測ったことがありません。これはやはり真似しなくては。今後のために記録をとって実践していきます。

イベントに参加して夢がひとつ叶った

2年と少し前、『書く仕事がしたい』を読んでライターの存在を知り、未経験でライターをはじめました。今年の1月、京都ライター塾の自己分析ノートに憧れの人として「さとゆみさん」と書きました。今回、その憧れの人に会えたのです。さとゆみさんは想像していたとおり、チャーミングで魅力的な方でした。時間がなくて答えきれなかった質問にも、後日回答しますと約束してくれるお気遣いに、ますますファンになりました。偶然にも、私が座った席の目の前にWebライターラボのメンバーがいたことも含め、奇跡といえるようなひとときでした。

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