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スキー休眠者を復活させるための施策

星野リゾートの星野社長が、「スキー休眠者を復活させる」ことがスキー業界再生のキーだとおっしゃっているそうだ

確かに、20年前は今より1000万人以上多くの人がスキーをしていたわけなので、そこには大きなポテンシャルがありそうだ。

ターゲットは、35〜40歳以上で、バブル時代にスキーをしていた人たちといったところだろうか。

実際、私もいろいろなひとに日本のスキー業界の現状について話すと、「昔は毎週末行ってたよ」という方にたくさん会うので、そういう人は確かにたくさんいそうだ。

そういう方と話していて感じるのが、「この人たちの多くはスキーというスポーツ自体が好きでゲレンデに行ってたわけじゃないな」ということである。

具体的には、デートとか、出会いとか、そういう場所としてスキー場がたまたま当時はものすごく適していたということだなと。

私は、昔やっていた人の中でも、スキー場に戻ってきてもらえる可能性にある人は「スポーツとしてのスキー自体も多少は好きだった人」に限られると思う。

滑ること自体には興味も楽しみもなかったけど、とりあえず女の子と出会えたり、ラグジュアリーな気分に浸れたり、行っているというだけでかっこいい感じがした、という人は少なくとも私の力では連れ戻すのは難しいなと。

じゃあ、スキーは好きだったけど、最近は行かなくなっちゃって、という人にはなんと声をかければまたスキー場に来てもらえるのか。

今回はこれを考えてみたい。

スキーはやらなくては死んでしまうものではなく、余暇を過ごすエンターテイメントである。

そしてエンターテイメントは常に新しいものを打ち出していく戦いだ。つまり、限られた余暇の時間を使ってもらうためには飽きられたら終わりなのである。

ゲームでも映画でも、毎年何百本も新しいものが出てきていて、サッカーもテニスも新しい選手が出てきたり毎回違う内容になるからファンは何度も試合を見る。

特に映像コンテンツやゲームの進化は、本質的なルールには100年間変化が無くて、写真で見たらほぼ変わっていないスポーツに比べて圧倒的に早い。

私は、スポーツ業界や、観光業界の人は、ゲームもやって見たほうがいいし、NetflixやAmazonPrimeのドラマや映画を見てみたほうが良いと思う。「Tiktokって何?」と言う人には、とてもスキー場に人を連れてくるアイデアは浮かばないだろう。(言い過ぎか)

そういうコンテンツに毎日何時間も使っている人に、なんと声をかけたら、氷点下のスキー場に何時間もかけて来てくれるのかを考えないといけないのである。

具体的に私が考える方法は2つ。

1つ目は、「20年前と同じスキー、スノーボード」で戦う方法。これは20年前、10代や20代、もしくはそれ以下だった人が、スキーで楽しかった経験を当時の自分と同じ年代の子供に伝えるということだと思う。

20年前、自分1人とか友人/彼女と少人数で楽しんだことを、こんどは子供や家族と楽しむわけなので、スキー場は家族連れでもストレス無く楽しめることをアピールしなくてはいけないだろう。

親もゆっくりできるホテルや温泉などの宿泊施設なども重要な要素になるはずだ。ここの戦略は詳しく無いのでこのくらいにする。

もう1つは、「20年前と違うスキー、スノーボード」で戦う方法。雪の上を滑るというスキーという行為そのものには100年変化が無いが、20年前には出来なくて今は出来ることが1つある。

「滑れなかった場所を滑れる」つまりパウダーやバックカントリーといったスキー場の間や外側にあるゾーンを滑走することだ。

もちろん20年前にもやっている人はいたが、スキー場の規制や道具、セーフティに関する方法論、商品としてのバックカントリーガイドツアーなどが整備されているという点で、手の届きやすさは20年前とは比べるべくもない。

しかし、私は自分でも2012年に初めてバックカントリースキーガイドツアーに行ってハマり、仕事でもう5年ほどバックカントリーおよびスキー場のエリア内でのフリーライドの普及をやっているが、

1.まずそもそもそんなことが出来ることを知らない人がほとんど
2.知ってても危ないからとても自分でやるアクティビティだと思っていない人が多い

スキー産業のレポートを毎年出している矢野経済研究の方にヒアリングしたところ、現在のスキー人口約700万人の中でバックカントリーやフリーライドをやっている人は、定量データは無いが、5%以下だろうという事だった。

スキー休眠者や、今もスキーをやっている人の中でもその95%の人に「新しいスキー、スノーボード」を知ってもらい、やってもらうためにはどうすれば良いのだろうか。

続きは次回。

フリーライドスキー/スノーボードの国際競技連盟、Freeride World Tour(FWT)日本支部で、マネージングディレクターおよびアジア事業統括をやっています。