敬愛する貴殿へ-op.1
よくも悪くも平和ボケしている日本をふるさととして育った人間にとって、正直どことなく怖いイメージのあるイスラエルに生まれ育ったオーケストラ奏者がいます。
僕にとっての唯一神、Mor Biron様です。
現在彼は世界屈指の実力をもつオーケストラである、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団に在籍しています。
ファゴットという器楽の枠を完っ全に超越した、人の声よりも密度の濃いメッセージ性をもった音をヒョウヒョウと出しやがる。それはもう怖いくらいに!
実はファゴットという楽器の発音方法は、かのギネスブックにも認定された世界一難しいとされているオーボエと同じ。
しかしファゴットはその知名度の無さからスポットライトがあたることは数少ないのが実情ですが、正直言って…結構むずかしいのです。笑
演奏にあたって発音体であるリードのご機嫌に左右されるのはオーボエとまったく同じであるのに加え、楽器そのものの物理的なデカさから指の運動量はとても大きい。
小さい楽器が簡単に吹きこなすパッセージも"機敏なおデブ"を目指さなくてはなりません。
そんな足かせはもろともせず、どこ吹く風といった涼しい風貌。裏付けされたテクニックのもとで”喋りたいこと・伝えたいこと"にひたむきな姿を僕は崇拝しています。
とにかく彼の参加しているアンサンブルは彼がいることによる活力に満ち溢れています。
共にステージに立つ人間を心から表敬し、その場を共有したお客様の手を導いて感情の渦へとド突きまわすエネルギーそのものなのです。その根源は作曲家への愛・楽曲そのものへの愛・ひいてはもはや人類愛というデケぇテーマを背負っているように見えてなりません。
そして彼の魅力を構成する成分はオーケストラでのクラシック音楽に留まりません。この非常事態にあのベルリンフィルでさえ在宅を余儀なくされているわけですが、持て余した時間に投稿される彼のインスタグラムを見ると…
なんとファゴットをjazzピースに馴染ませたり、私には解読不能な右から読むタイプのイスラエルの公用語が使われたポップスを元々ファゴットのために書かれたものなんじゃないかというくらい自然に吹きこなします。
ファゴットは楽器柄どうしてもクラシックの枠を飛び越えようとする奏者がいないものですが、彼のような純粋でフラットな心と奏者としての魅力をもってすれば音楽のボーダーレスさえ実現可能にしてしまう力強さを見せつけられる思いです。
今日も彼のただ一音を伸ばすロングトーンに涙を流しながら寝るとします。彼がいるこの世界に彼以外のファゴット奏者ははたして必要なのか?一生涯この疑問を抱えていくことになりそうです。
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