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大量消費社会からポリファーマシーについて考える③

前回は、大量消費社会と循環型社会について少し学んでみました。

今回は、サーキュラーエコノミーについて学んでいければと思っています。

サーキュラーエコノミー(循環経済)

サーキュラーエコノミーとは、従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄」のリニアな経済(線形経済)に代わる、 製品と資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小化した経済のことを指しています。*24
前述の循環型社会と似たような意味合いを帯びていますが、循環型社会の中にサーキュラーエコノミーが位置づいているような印象です。
日本では、2004年のG8サミットで、「3Rイニシアティブ」を提案しており、これは、リデュース(発生抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再生利用)の3つのR を推進しようとする取り組みになります。*25

環境省.平成16年度循環型社会の形成の状況より引用(2024年2月24日参照)

その後、ヨーロッパで2015年に「Euro2020」が表明され、その中の一つとしてRE政策があげられました。*26 また、サーキュラーエコノミーパッケージとしてCE政策も表明され、サーキュラーエコノミーの概念が広まって行くことに繋がっています。*27,28

経済産業省.資源効率・循環経済政策に関する動向と 今後の政策展開より引用(2024年2月24日参照)

上図の経済産業省のスライドにも書いてある、REの基本目的である「デカップリング」とは、通常、経済成長していくと環境負荷も拡大していきますが、資源の利用量や環境負荷を比例拡大させず、デカップル(切り離し)していくということです。
これは、ジョンエルキントン氏が、1994年に持続的な経営のためには、経済的側面・環境的側面・社会的側面の3つの軸で評価をすることとして、トリプルボトムラインを提唱されていることにもつながっています。この3つの視点は、経済的利益(Profit)、地球環境(Planet)、人々の幸福(People)の3Pとして言われることも多いです。*29
また、このスライドからは、RE政策とは、今までの「3Rイニシアティブ」だけでなく、シェアリングやIoTまで拡大して解釈していくことにも触れられています。廃棄という観点からの3R だけではなく、利用者目線でのそもそも所有せずにシェアするなどの近年の考え方が拡充されているものと思います。
Accentureのレポートでは、シェリングサービスの普及の現状に触れられています。*30 シェアハウスやレンタカーなど、単価の高いもののシェアから徐々に広がっており、身の回り品まで浸透してきている現状が見られています。

Accenture.サーキュラー・ エコノミーより引用(2024年2月23日参照)

また、同レポートでは、サーキュラーエコノミーの5つのビジネスモデルについても挙げられております。*30

Accenture.サーキュラー・ エコノミーより引用(2024年2月23日参照)

この5つの視点は、今までの供給視点中心ではなく、利用視点中心に構築されているビジネスモデルということなのかと思います。
また、とは言っても急に今までとは違う取り組みに対応していくのは難しいかと思います。PwCコンサルティング合同会社では、エネルギーセクターに関してではありますが、サーキュラリティ向上のための6つのステップを挙げてくれております。*31

PwCコンサルティング合同会社.サーキュラーエコノミーの台頭 エネルギートランジションの未来を考えるより引用(2024年2月23日参照)

まずは、現状の理解と自分達が取り組むべきサーキュラリティの特定とビジョンのすり合わせ、そして、先進的に動いていくことでルールメイキングをしていくことが重要になるのかと思います。
また、産業ごととしましては、ファッション業界で大きな取り組みが起きております。*32
2022年3月にEUROPEAN COMMISSIONでは、ファストファッションを時代遅れとし、「持続可能な循環型繊維製品戦略」で以下のような対策を提言しております。*33

・デザイン要件の設定
・情報提供の強化
・過剰生産・過剰消費をやめる
・未使用繊維製品の廃棄をやめる
・生産者責任の見直し

JETRO.2022年04月04日.欧州委、持続可能な繊維戦略を発表、ファストファッションは時代遅れと批判より引用(2024年2月23日参照)

また、その後具体的なアクションプランについて、8つの領域に分けて50項目を公表しています。*34
以下直訳で一旦メモがわりとして載せておりますが少し長いです。

・持続可能な競争力
1. 社会的経済企業(サービスとしての製品モデル、引き取りサービス、中古品および修理サービス、革新的な分別とリサイクルなど)を含む、循環および持続可能性の実践、サービスおよびビジネス モデルをHorizon Europe、LIFE、「ReSet the Trend #ReFashionNow」キャンペーンや社会経済行動計画の活動を通じて促進、支援、実装する。
2. たとえば、安全で持続可能な設計化学物質や材料の採用促進、EU エコラベル制度の可視化と普及促進などを通じて、業界が取り組んでいる特定の持続可能性実践を認識し、評価します。
3. 自由貿易協定の貿易と持続可能な開発の章および一般特恵 制度(GSP)を通じて、貿易を促進し、貿易相手国との環境および社会的権利の尊重を支援するために貿易政策を 引き続き活用する。
4.SWITCHプログラムからの資金提供により、発展途上国における繊維エコシステム製品の持続可能な消費と生産の普及を促進します。
5.REACH4Textiles などの EU 共同行動プロジェクトを実施および開発するための EU 製品コンプライアンスネットワークとの協力を通じて、エコシステムに対する市場監視 を強化します。
6.権利所有者、仲介者、公的機関の役割と責任を明確にすることで知的財産権侵害との戦いを強化し、協力とデータ共有を改善し、新技術の使用を促進するため、偽造品に対するEUツールボックスを作成および立ち上げます。
7. 美しさ、持続可能性、包括性といったバウハウスの価値観をこの分野で高め、広めるために、ファッションに関する新しい欧州バウハウス活動を展開する。
8. グリーン移行を革新し加速するために、ヨーロッパ企業ネットワーク(特に EEN 繊維セクター グループ)、ユーロクラスター構想、EU 循環経済ステークホルダープラットフォーム を通じて中小企業を支援する。エコシステム内の中小企業に、専用のビジネスプランからイノベーション、さまざまなタイプの資金調達やEUプログラムに関するアドバイス、法律、ネットワーキング活動、イベントに至るまでの分野でEENアドバイザリーサービスを提供します。
9. Enterprise Europe Network (特に EEN Textile Sector Group を通じて) と Eurocluster イニシアチブを通じて、見本市の開催、企業間のマッチング、資金調達と規制の枠組みに関するアドバイスの提供により、国際的に成長する中小企業を支援します。
10. リスク評価を実施し、世界的なサプライチェーンの潜在的な混乱に備えた管理計画を作成します。
11. ReSet the Trend #ReFashionNow をモットーに、認知度を高め、消費パターンを再構築する消費者キャンペーンを開始することで、持続可能な製品に対する需要を高め、消費者をグリーン移行に参加させます。また、人々が使い続けたいと思う製品をデザインすることで感情的な耐久性をサポートします。
12. 年間のファッションコレクションの数を減らす。
13. 移行経路ステークホルダーサポートプラットフォームの一部として、繊維エコシステムの実践コミュニティを確立する。

・規制と公共ガバナンス
14. 特定のエコデザイン要件、デジタル製品パスポート、繊維廃棄物の循環的かつ持続可能な管理、および可能性のある拡大生産者責任規則を含む、持続可能かつ循環型繊維に関するEU戦略における行動をフォローアップし、関連する協議への業界の参加を奨励する。
15. 提案されているデジタル製品パスポートおよび計画されている繊維ラベル規制の改訂を通じて予期されるエコデザイン要件の文脈において、また情報要件の文脈において、製品の持続可能性の側面に関する消費者への情報の強化を期待し、規制後のグリーンウォッシング慣行との戦いを期待する。 グリーン移行とグリーンクレーム提案において消費者に力を与える。
16. 予見されるエコデザイン要件に照らして繊維製品の持続可能性パフォーマンスを評価および比較するための共通の方法を見つける。
17. 提案されたデジタル製品パスポートを通じて繊維バリューチェーンにおけるトレーサビリティと透明性を向上させる。
18. 「欧州産業エコシステムのモニタリング」プロジェクトの枠組みで、グリーン変革とデジタル変革の進捗状況を監視するための繊維エコシステムの KPI を開発する。

・社会的側面
19. 欧州社会権の柱と社会経済行動計画を通じて、より公平でより包括的な欧州連合を支援する。
20. 男女平等の欧州に向けて前進し、女性と男性の両方の利益と懸念を考慮したジェンダーの視点を主流化するために、EUの男女平等戦略を実施する。
21.労働者がツインへの移行に向けたスキルを確保できるように、繊維エコシステムのため のEUスキル協定などを通じて、スキルアップと再スキル、生涯学習と訓練の機会 へのアクセスを支援する。
22. 繊維エコシステムに関する欧州部門別社会対話を通じて、エコシステムへの取り組みの方向性と内容について社会パートナーと協議する。

・R&I、技術、技術ソリューション
23. 製品を循環させるための新しい安全で持続可能なバイデザイン化学物質や材料の開発のため、Horizon Europe、Digital Europe、LIFE の作業プログラムの下で、持続可能な製造プロセスと低炭素排出量の革新的技術に関するイノベーションと研究を促進し、新しいデジタル技術の開発をサポートします。
24. Horizo​​n Europeのもとで、繊維分野のR&Iに対する集中的かつ包括的な支援の可能性を探る。
25. 繊維エコシステム内の中小企業の技術サポート構造へのアクセスと交流を増やす (例えば、技術連合、デジタルイノベーションハブ、キャンパス、インキュベーター、クラスター、業界提携を通じて)。
26. EDIHのネットワーク内の繊維エコシステムにおけるデジタル革新に関するテーマ別グループを作成し、ネットワーク内の協力とボトムアップの貢献を促進するとともに、EDIHマッピングツールのエコシステム固有の指標を作成する可能性を検討します。–たとえば、エコシステムのアクションをサポートするハブをより適切に識別できるようになります。
27. 地方および地域レベルでのマルチステークホルダーのスキルパートナーシップと協力して、 繊維エコシステムのためのスキル協定を通じて中小企業のデジタルスキル開発を支援す る。
28. CEN/CENELEC/ETSI および関連する利害関係者による、提案されているデジタル製品パスポートの IT 標準およびプロトコルに関する標準化要求を実装します。
29. デジタルヨーロッパプログラムを通じて、この分野のデジタル製品パスポートのプロトタイプ をテストする研究プロジェクトを支援する。
30. 欧州標準化団体(CEN、CENELEC など)および業界との協力を確立し、繊維エコシステムに関連する革新的なデジタル技術の主な標準化ギャップを特定し、埋める(欧州標準化のための年次連合作業プログラムを含む)。
31. 繊維エコシステムを支援する活動の受益者である Horizon 2020 と Horizon Europe を「Standardisation Booster」プラットフォームに接続します。
32. 2025 年 1 月時点での繊維廃棄物の分別収集を含む、廃棄物枠組み指令の実施。
33. ホライズン・ヨーロッパが資金提供するHubs4Circularityの支援、国家復興・強靱化計画、国や地域の投資、インフラ開発プログラムな どを活用して、ヨーロッパ全土で繊維廃棄物管理に特化した革新的な分別・リサイクル拠点の創設を促進する。
34. デジタルヨーロッパプログラムなどを通じた、データ駆動型のビジネスモデルの開発を可能にする、繊維エコシステムの関係者と関連するヨーロッパの共通データスペースとの接続。
35. ホライズンヨーロッパプログラムにおけるデータスペースの開発など、データ主導のビジネスモデル開発のための資金を繊維エコシステム関係者が利用できるようにする。
36. 再生可能エネルギー(ソーラーパネルなど)のエコシステムに対する資金提供の機会を伝え、認識を高める。再生可能エネルギー(ソーラーパネルなど)のエコシステムに対する資金提供の機会を伝え、認識を高める。

・スキル
37. 単一市場プログラムからの献身的な支援を受けて、繊維エコシステムのための EU スキル協定に基づくマルチステークホルダーローカルパートナーシップを関連する加盟国/地域 に設立する。
38. エコシステム企業、教育提供者、労働組合、その他の利害関係者を巻き込んで、繊維エコシステムのためのスキルに関する EU 協定に基づいて共同で合意された行動と目標を約束する。たとえば、メンタリングや見習い制度の利用と利用しやすさを高め、対応する新しいスキル プロファイルを組み込む。 職業、教育、訓練方針、カリキュラムにおけるグリーンスキルとデジタルスキルのニーズに対応します。
39. Textiles EU Pact for Skills マルチステークホルダーローカルパートナーシップおよび Textiles Skills Observatory を通じて、グリーンスキルとデジタルスキルに関する情報を収集する。
40. 欧州技能年に合わせて、この分野の魅力や業界で働く新た な機会に関するイベントや意識向上活動を企画する。
41. 職業教育および高等教育のためのエラスムス + モビリティの機会を通じて、繊維 エコシステムの教育スタッフと学生のスキルと能力を開発する。
42. 例えば、EU 繊維技術協定エコシステム活動を通じて、企業の管理職および上級職への女性の参加を促進し、若い起業家のための エラスムスなど、起業家および経営経験の交換を促進する EU プログ ラムについての意識を高める。

・投資と資金調達
43. 繊維エコシステムへの資金調達の機会についてコミュニケーションを図り、意識を高めます。
44. パートナーシップの可能性を含め、Horizo​​n Europe のもとで繊維製品に関する R&I への 支援の可能性を探る。 Horizo​​n Europe およびその他の EU 資金提供プログラムに基づく、関連する欧州パートナーシップやイニシアチブへの参加と協力を構築します。
45. グリーン公共調達基準を利用および推進し、グリーン要件を公共入札書類に含めることを促進する。
46. 技術支援手段を通じて繊維産業の移行の持続可能性、デジタル 化、回復力および社会的側面を支援するための改革に着手する。

・EU の戦略的自治と防衛努力をサポートするエコシステムの準備
47. 国防当局と連携して、生態系が軍事能力の発展にどのように貢献できるかを確認する。
48. 戦争状況を考慮した技能協定による労働者の再訓練。
49. 戦争の危機に備えて、軍、防衛企業、その他の関連部門を維持するために、生産シフトの準備を強化し、防衛目的での納入を優先する計画を策定する。
50. 投入資材、水、エネルギーの供給の途絶に対処するための緊急時対応計画を策定するとともに、戦争遂行のために労働力が動員される状況に対処する計画を立てます。 これらの計画は、サプライチェーンと依存関係のマッピングに基づいて構築する必要があります。

European Commission, Directorate-General for Internal Market, Industry, Entrepreneurship and SMEs, Transition pathway for the textiles ecosystem, Publications Office of the European Union, 2023, https://data.europa.eu/doi/10.2873/86186より引用・日本語訳(2024年2月23日参照)

直訳であったり、EU独自のものもありそうなので、わかりにくい部分も多いですが、個人的に気になった部分は、デジタル化の利用、ジェンダーレス、また戦争の文脈も盛り込まれていることでした。
特にデジタル製品パスポートは、労働搾取を抑制するための透明性向上やサーキュラリティ向上のためにもなり、以前のブログで触れたヘルスケアジャーニーと通じる部分もあるように感じました。製品が生まれたところから廃棄されるところまでをトレースしていくことで、廃棄されるものを削減していくということなのでしょう。

今回、サーキュラーエコノミーについて、自分なりに調べさせていただきました。これら学べたことから次回、当初の目的であるポリファーマシーについて何か参考になる部分などないかをアナロジー的に考えていけたらと思います。

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【参考資料】
*24:経済産業省.2020年5月18日.サーキュラー・エコノミー及びプラスチック資源循環分野の 取組について(2024年2月22日参照)
*25:環境省.平成16年度循環型社会の形成の状況(2024年2月24日参照)
*26:JETRO.欧州 2020(EU の 2020 年までの戦略)の概要(2024年2月24日参照)
*27:EUROPEAN COMMISSION.2.12.2015.Closing the loop - An EU action plan for the Circular Economy
*28:経済産業省.資源効率・循環経済政策に関する動向と 今後の政策展開(2024年2月24日参照)
*29:Wikipedia.トリプルボトムライン(2024年2月25日参照)
*30:Accenture.サーキュラー・ エコノミー(2024年2月23日参照)
*31:PwCコンサルティング合同会社.サーキュラーエコノミーの台頭 エネルギートランジションの未来を考える(2024年2月23日参照)
*32:NewsPicks.2024/1/14.【教養】ファッションを「捨てない」時代がやってくる(2024年2月23日参照)
*33:JETRO.2022年04月04日.欧州委、持続可能な繊維戦略を発表、ファストファッションは時代遅れと批判(2024年2月23日参照)
*34:European Commission, Directorate-General for Internal Market, Industry, Entrepreneurship and SMEs, Transition pathway for the textiles ecosystem, Publications Office of the European Union, 2023, https://data.europa.eu/doi/10.2873/86186より引用・日本語訳(2024年2月23日参照)


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