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『最近聴いてる音楽の話』 #6月

6月が終わる。上半期が終わる。あっという間だ。あっという間なのは自分だけだろうか。きっと時間の流れる速度は人によって違う。子供の頃は時間が流れるスピードが今より遅かった気がする。気がする、というよりも遅かった、確実に。小学生の頃は15分休みでどうしてあんなに遊べたのだろう。今の15分なんて瞬きしたら終わってしまう。15分間何をしてたか?と聞かれても何かをしていたと答えられる自信なんてない。困ったものだ。
どうやら大人になると経験による「慣れ」が発生するから時間の経過が早く感じるという話もある。子供は知らないことがたくさんあるから、経験のないことをしている時というのは意識が集中するため時間が長く感じる、らしい。それだと大人が圧倒的に退屈すぎることになる。それは切ない。ただそれはつまり大人になったとしても知らないことや経験のないことをやり続けて探し続ければ時間の経過を長く感じることができるのではないかと思った。「慣れ」から遠ざかることは少しでも長生きにつながるのではないかと。よい人生とはどれだけ長く生きたかではなく、どれだけ心が震えた瞬間があったかということなのだ。これはどこかで読んだ一節。長生きしましょう。自分を試していこう。

そんな6月のグッドミュージックを紹介していきます。


SONG

ASIAN KUNG-FU GENERATION "西方コーストストーリー"

この夏を諦められないだけ───。世間的な知名度は低いがファンの間では絶対的な名盤として挙げられることの多いASIAN KUNG-FU GENERATIONのアルバム『サーフブンガクカマクラ』が完全版として帰ってくる。以前からちょいちょいTwitter上でボーカルのゴッチが『サーフブンガクカマクラ』のことを気にかける発言をしていたがようやく完全版として江ノ電を全制覇する。
先行でリリースされた"西方コーストストーリー"は『サーフブンガクカマクラ』の頃のアジカンのギターが前面に出たパワーポップらしさが詰まった楽曲で、つい大学生の頃を思い出してしまう。僕は神奈川県出身の人間なので、夏になれば付き合っていた人と毎週のように江ノ電に乗った。『サーフブンガクカマクラ』を2人で聴きながらアジサイを見にお寺を回ったり、しらす丼を食べたりした。そんな6月のことを思い出しながら今年の夏のことを考えている。楽しみだね。


The Walters "Stuck In My Ways"

「活動休止中に突如としてTik Tokでバズったバンド」という扱いになってしまうのだろうか。僕はTheWaltersを最高のメロディーメイカーバンドだと思っている。2014年にリリースされたEP『Song For Dads』は今でも僕の中では誰にも共有したくないくらい大切に抱えている作品のひとつだ。
その後、2017年に突如活動休止するも2014年にリリースした楽曲"I Love You So"が2021年に突如としてTik Tokでバイラルヒットになりアメリカで400万回ストリーミングを達成。それを受けて2022年にバンド活動を再開した。そんなTheWaltersの新曲はこれまでのイメージにあまりなかったダンスナンバー。切なさと楽しさが交わるメロの良さ、相変わらずのグッドメロディーで超最高なのである。あとはアルバムのリリースと来日を待つだけ。みんな聴いてくれ!みんなが聴いてくれれば来日するから!


KID FRESINO "that place is burning feat. ハナレグミ"

■"好きなことだけでどこまでいけるかな?"、ずっとそんなことばかりを考えてここまで来てしまった。いや、今でもそれこそが正しいことだと思ってる。楽しいこと、優しいこと、美しいこと、素晴らしいこと、それだけをかき集めて抱きしめながら生きていきたいと思う。でも対岸はいつも大火事。それを見つめながら僕らはどう生きるのだろうか。そんなことを考えていた。
KID FRESINOハナレグミこと永積タカシをフィーチャーした新曲"that place is burning"。近年話題によく上がる山田智和が監督したMVは、都会と自然の対比とその中で自由に生きたがる人たちの呼吸が聞こえてくるようでとても美しい。時々こういう音楽に出会うとしっかり喰らってしまうよな…と思い出すような曲。心にゆっくりと時間をかけて染み渡っていく。


ALBUM

Galileo Galilei / Bee and The Whales

背中さすってやれよ"なぁそろそろ外にでる頃だと"────。彼らのサウンドの基盤になっている深いリバーブのかかった歪んだギターとベースとシンセの音が際立つ"ヘイヘイ"でアルバム『Bee and The Whales』は幕を開ける。Galileo Galilei、7年ぶりのカムバックだ。彼らが閃光ライオットでグランプリを獲得した2008年、稚内の自分たちの小さな部屋に学校の先生からもらった機材などをかき集めて作ったスタジオの中で音を鳴らして遊んでいた頃からずっと彼らのことを遠い土地から見続けてきた。
当時16歳だった尾崎兄こと尾崎雄貴は大人になることの複雑さでいつも悩んだり、打ちひしがれたり、怒ったりしながらバンドを前進させてきた。気づいた時には自分たちの秘密基地だった遊び場は大人になるにつれて荒らされていき、2016年にGalileo Galileiという遊び場を捨てたのだ。
そして2023年、7年の月日が経って彼らはこの遊び場に帰ってきた。正直心配だった。捨てるように、逃げるように車を飛び降りた彼らがどんな思いでこの場所を選んだのか。でもそんな思いは杞憂に終わった。「遊ぼう それがまっとうな人生だよ」、尾崎雄貴はアルバムの最後の"あそぼ"でこう歌う。その時にこれまでの時間とこれからの時間とが重なって、お互いに大人になったねと感じた。これからもずっとこの遊び場で僕と遊んでいてくれ。


Brasstracks / Indigo

Brasstracksの現れるところ全てがダンスフロアーに生まれ変わる。待望の2ndアルバムも相変わらずの踊らせっぷりだ。2016年、Chance The Rapperの"No Problem"のプロデュースで一躍知名度を上げたトランペットとドラムの二人組Brasstracks。BTSのアルバム『BE』収録の楽曲、"Dis-ease"にプロデューサーとして参加するも日本での知名度はイマイチ。ずっと来日を心待ちにしているのだけどなかなかそのチャンスが巡ってこない。超ネイビーなアートワークからは想像できないくらい明るいオープニングの"Good Morning, NY"で幕を開ける。Brasstracksが奏でるホーンの音色、ビートには昔から憧れている自分の中だけで膨らみ続けるNYの空気感を感じる。いつかはGREENROOM FESTIVALとかに出演して横浜の夜景をバックに演奏してくれないかなと妄想しているので、さっさと叶えておくれよ。


Valley / Lost In Translation

◻️一番好きな映画は何かと聞かれたら必ず答える映画がソフィアコッポラ監督の『Lost In Translation』だ。海外の人が映す東京の姿が新鮮で、どこにいても見方次第で景色というのはどんな風にでも見えるのだと初めて感じた作品だった。Valleyの待望の新作アルバムはそんな映画と同タイトルがつけられている。
個人的にもValleyがアルバムをリリースするたびに必ず年間ベストアルバムに挙げているほど大好きなバンドだ。いつもキラキラしていながらどこか終わりを見つめているような哀愁がある。それはアメリカ的なエモさでもあり、2000年代のエモバンドが持っていた切なさだと勝手に感じている。1stアルバムをリリースした頃からインスタのDMで「日本に来てくれ!」とやりとりしていたがようやく今年の8月に叶うのだ。嬉しい!国内盤のCDのリリースも決定し、曲に邦題までついている!懐かしい!ユニバーサルがこれから必死で売り出そうとしている心意気が見えるのでそれに乗っかっていきたいと思っている。キャッチーで誰も裏切らない4人組バンドだ!


SHINee / HARD - The 8th Album

◻️きっとK-POPが自分のホームになることはない。多くの人が圧倒的な愛を掲げて、これまでもたくさんの人が支え続けてきたK-POPシーン。僕はそんなK-POPの上澄みだけを掠め取っているような気がしてならない。だからK-POPを聴く時はいつも「お邪魔します」という気持ちで聴いている。僕のような人よりももっとキラキラしている人たちが聴いていた方がずっとバチっと決まるのだろう。そんな気持ちになってしまう。それでもSHINeeというグループが好きだという気持ちは間違いなく自分の中に存在している。
近年のK-POPの歴史の中でもSHINeeはずっと常に新しく最前線を走ってきた。結成から15年にして8枚目のフルアルバム『HARD - The 8th Album』をリリースした。彼らは必ず毎回アルバムごとに異なる音楽性のコンセプトを打ち出し、SHINeeというグループを前に前にと前進させ続けてきた。今回のアルバムもSHINeeの根底にあるヒップホップやジャズの要素もありつつも楽曲の中での強弱がハッキリとした展開を持つ曲も多く収録されている。どれも必ず「かっこいい!」と感じるポイントが存在する。K-POPがなんだとか、何が優れているとかは分からないけど間違いなくSHINeeが好きだということは今作でもやっぱり証明されてしまった。


Beach Fossils / Bunny

◻️ジャケが最高なのである。子供の頃、部屋のカゴいっぱいにマクドナルドのハッピーセットのオモチャが詰め込まれていたことを思い出す。この謎ウサギ。不思議とセンチメンタルな気持ちになる。Beach Fossilsのオリジナルアルバムとしては4作目になる『Bunny』。爽やかであり、哀愁も感じるギターのサウンドが懐かしさと同時に夏の空気を運んでくれる。
Beach Fossilsはずっと変わらずにその音楽性を伝統芸能かのように保ち続けてくれる。安心だ。アルバムの空気感も期待通りに最後までBeach Fossilsらしさが詰まっていて、心地いい。こうでなくちゃ。だからこそBeach Fossilsはいいバンドだなあと安心していつも思っていられるのだ。やっぱりこれがみんな大好きでしょ?でも多分これが最高傑作。きっと更新してくれると思うけど。




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