2016年、デビューアルバムが全英初登場1位になったViola Beachというバンドを知っていますか？

Viola Beach

2015年春にイギリス北西部の町、Warringtonで結成。
Kris Leonard (ギターボーカル)、River Reeves (ギター)、Tomas Lowe (ベース)、Jack Dakin (ドラム)の4人組ロックバンドViola Beach。

耳馴染みのいいキャッチーなリフと、踊りたくなる陽気なグルーヴはVampire WeekendやTwo Door Cinema Clubらとも比較され、バンドは着実に人気を獲得していき、2015年にシングル『Swings & Waterslides』をリリース。8月にはイギリスの代表的なロックフェス、Reading and Leeds Festivalsにも出演した。

そして、2016年7月29日にデビューアルバムであり、ラストアルバムである『Viola Beach』をリリースする。

2016年2月13日、彼らにとって初の海外公演だったスウェーデンでのフェスティバルの出演を終え、英国に戻ろうとストックホルムを車で走行中、船が通過するため上がっていた可動式の運河橋に橋が完全に閉まりきらないうちに侵入し、車は高さ24メートルから転落。
同乗していたマネージャー含め、メンバー全員が亡くなった。
2015年の8月にシングルをリリースし、翌年2月に初の海外公演とまさにこれからという矢先の出来事だった。

この出来事には、Liam Gallagher、The Stone Roses、Kasabianら多くのミュージシャンから追悼の言葉が寄せられ、シングル『Swings & Waterslides』を1位にしようというという動きにまで発展した。

Viola Beach - Swings & Waterslides - https://t.co/3HTE23kG9S RIP LG X

— Liam Gallagher (@liamgallagher) February 15, 2016

そして何よりも大きな出来事だったのが、
2016年グラストンベリーでヘッドライナーを務めたColdplayのパフォーマンスである。
ボーカルのChris MartinはMCで、
「本来なら（この年に亡くなった）David Bowieの"Heroes"を演奏しようと思っていたけど、今回は違うことをやることにしたんだ」と語り出す。
そして自分たちが1996年に結成し、1999年に初めてグラストンベリーに出演し、新人バンドの出演する小さいテントで演奏した過去の話を、将来の希望にも才能にも溢れていたViola Beachのことと重ねるように語る。

Chrisは最後に「彼らにとって違った未来を作り出したいと思ってるんだ。彼らにグラストンベリーのヘッドライナーとして曲を演奏してもらおうと思うんだよ」と語り、ビジョンに映るViola BeachとともにViola Beachの"Boys That Sing"をパフォーマンスする。

このシーンは当時世界中から大きな反響を呼んだ。
そしてChrisの呼びかけもあり、2016年7月にリリースされたデビューアルバム『Viola Beach』は当初予定していた内容とは異なるものの全英アルバムチャート初登場１位を記録した。

今年で5年の月日が経ち、今でも2月13日が来るとViola Beachのことを思い出している。
もしかしたら彼らが来日していた未来もあったかもしれない、いや必ず来日していたであろう。サマソニやフジロックで演奏している姿が容易に想像できるほどViola Beachの音楽には未来に対する希望で溢れていた。そしてどんどんと大きいステージへと成長していく、そんな姿をつい思い浮かべてしまう。

どうしてもViola Beachの話題を挙げると悲劇的な出来事が先行してしまう。
しかし彼らの音楽は本当に底抜けに楽しくて陽気で、踊りだしたくなるものばかりだ。
どうかこの事故の話がきっかけでもいいので、もっと多くの人に彼らの音楽を聴いてもらいたいと思っている。

彼らの持つエネルギーと輝きは、決して悲劇で終わらせてはいけない程の希望を持っていた。