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兼業(副業)禁止規定の有効性

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当社では就業規則等で兼業を禁止していますが、労働者からこの規定は無効
だと主張されています。どう対応すべきでしょうか?

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まず、兼業禁止は就業規則や労働契約上の制限規定がなければ当然には認
められません。

こうした定めがあっても、勤務時間中はともかく、勤務時間外には労働者は本来、使用者の支配を離れ自由であるはずとしてその効力が争われることがありますが、裁判所の大勢は就業規則で兼業を禁止することの合理性を一応認めています。

例えば、懲戒事由である「会社の承認を得ないで在籍のまま外に雇われたと
き」との規定について以下のように示した判決があります。

「労働者が就業時間外に適度な休養をとることは、誠実な労務提供のための基礎条件であり、また、兼業の内容によっては、会社の経営秩序等を害することもありえるから、合理的である」(小川建設事件 東京地裁 昭57.11.19)

しかし、多くの裁判例は勤務時間外の時間については、本来、使用者の支配が及ばないことを考慮して、例えば、「会社の企業秩序に影響せず、かつ、会社に対する労務の提供に格別支障を来さない程度・対応の二重就職は、禁止規定への違反とは言えない」と限定的に解釈しています。

さらに厚労省の報告書では、以下のように示しています。

・兼業を禁止または許可制とする就業規則の規定や個別の合意は、やむを得
ない事由がある場合(兼業が不正な競業に当たる場合、営業秘密の不正な使
用・開示を伴う場合、労働者の働きすぎにより生命・健康を害するおそれがある場合、兼業の態様が使用者の社会的信用を傷つける場合など)を除き無効とするのが適当

・裁判例では、企業への労務提供に支障を来す兼業について、就業規則の兼
業禁止規定に基づく懲戒処分の有効性を認めたものがあるが、このような事案は本来、現実に企業への労務提供に支障が生じた場合に人事考課や懲戒において対処されるべきで、一律に兼業禁止により対処することは適当ではない。

以上を踏まえ、兼業禁止規定そのものは必ずしも否定されるものではありませんが、実際の運用については「働き方改革」により兼業・副業を促進する社会の要請も考慮し個別事案を精査して現実的に対処すべきでしょう。

〔三浦 裕樹〕

Ⓒ Yodogawa Labor Management Society


社会保険労務士法人 淀川労務協会



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