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建設分野の外国人技能実習生に「月給制」しか適用できない事への問題提起

国土交通省により2020年1月1日から建設分野の外国人技能実習生の受け入れ基準が強化され「月給制(月給日給制を含む)」により安定的に報酬を支払うことが義務付けられています。

国交省としては技能実習生に日給制や時給制を採用すると、季節や工事の受注状況による仕事の繁閑で他職種との報酬のミスマッチが生じ、就労意欲の低下や失踪につながる懸念があるが故、月給制で安定的な報酬を支払うことで、失踪や不法就労の懸念を払拭することを狙いとしているようです。

このルールは極めて厳格で「他の職員が月給制でない場合も、技能実習生に対しては月給制による報酬の支払が求められます。(特定の職種及び作業に係る技能実習制度運用要領 -建設関係職種等の基準について・令和元年8月出入国在留管理庁・厚生労働省・国土交通省 編)」とされており、いかなる場合でも例外は認められていません。

確かに建設分野における外国人労働者の差別的取り扱いや失踪が解消すべき大きな問題であることは事実です。

ただ、本来であれば「正社員と同等以上の待遇」である事が原則であるにも関わらず、行政が個別企業の労使関係・人事制度に直接介入し、「月給制しか認めない」とするのはさすがにやり過ぎではないかと考えます。(企業には「労使自治の原則」という最高裁判所も尊重する非常に重要な考えがある)

建設会社には正社員でも一律に日給制を賃金の基本制度としている会社が多数あります。
報酬の安定を図るのであれば所定労働日数や時間数を就業規則や個別の労働契約で拘束する事を強化すれば良いのであって、安定的報酬を確保するための手段は月給制の導入に限られません。

正社員という同一属性にありながら外国人だけ月給制、日本人だけに日給制とすれば逆差別になりますから、このような建設会社が外国人を受け入れるためには賃金規程の改定の合理性により日給制から月給制への改定手続きを進めるか、もしくは正社員の希望によっていずれかを選択できる仕組みを検討しなければならなくなります。

建設業態にあっては「月給制>日給制」とは限らず、働いた日数によって賃金が毎月変動する(けれども長期でみれば安定的である)日給制の方がモチベーションマネジメントの観点から月給制よりも効果的に機能することが往々にしてあります。(これは職人の気質やこれまでの習わしの部分にもよります)

少子化や職人の減少により今後も外国人労働力に頼らなければならない建設分野において「月給制の導入を避けたいのであれば事実上、外国人技能実習生を雇用できない」という画一的な仕組みは個別企業の労使自治への過剰な干渉であり、月給制であるかどうかに捉われず、所定労働日や所定労働時間の契約上の確実性等を勘案の上、個別事案における例外対応を認めるべきだと考えます。

〔三浦 裕樹〕

Ⓒ Yodogawa Labor Management Society


社会保険労務士法人 淀川労務協会



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