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#つくルンバ:情熱はアルボンディガスの中に

2020年2月25日

「今日は飲もう。」

かねてより作りたかった料理をSlackで探し、それに合った食材とワインを仕入れ、自転車に積んで帰る。

スペイン在住のグルメライター&フードコーディネーターであり、3人の子供を育てながら奮闘している「つくルンバ」の発起人「塩梅かもめ」さんのレシピを再現するために。

先日は「カリフラワーのオリーブオイル炒め」を再現した。

正しくいえば再現した「つもり」でいた。

その後かもめさんから発信されたnoteを読んだ時、「料理人としてレシピを発信する側の思い」を知ることが出来たので、今度は出来る限り忠実に再現することを決めた。

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話は少し逸れるが、私は2年ほど病院に通っていて、今日は月に一度の通院日。半年ほどかけて「減薬」をしていたのだが、今回から俗にいう「抗うつ薬」をゼロにした。自ら申し出たのだ。睡眠障害はまだ時間がかかるために服薬は続けるが、随分量は減った。もう少し。

「様子をみて、なにか不安ならまた調整しますから、力まずに。」と先生には言われた。

調剤薬局へ行き、手渡された薬袋の重みが頼りなく、一瞬不安がよぎった。

重ねて言えば、明日2月26日は、亡くなった連れ合いの9回目の命日でもある。このタイミングで出来るかどうかも考えた。意識しているつもりはなかったが、不思議なものでここ何日か眠りは浅くなり、あの頃の悪夢ばかりを見ていた。

だがここで敢えて私は、薬に頼ることを止めた。

自分が決めたことはやると決めた。

2年間、充分いろんなことから逃げて、楽をさせてもらった。そろそろエンジンのかけ時なのだ。

気合いの入るものを食べよう。

そう考えた時に浮かんだのが、このレシピだった。

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スパニッシュギターのYoutubeをかけながら、家にあった食パンをちぎり、牛乳に浸す。そこへパセリを荒くちぎって入れて、軽くフードプロセッサーにかけた。生でパセリとニンニクを使うのは久しぶりだ。ニンニクの皮を剥き包丁で刻む。指の匂いを嗅いで、「やっべーキーボードが臭くなるー」と、独りで笑った。

パンチのきいたニンニクと、ふわりとグリーンに彩られたパセリの香りが鼻を通り、元気をくれる。

スピーカーからはスパニッシュならではの軽快且つ激しいギターの音に合わせて、男性の掛け声が部屋中に響き渡る。

私は「150円引き」とラベルの貼られた合いびき肉に卵、刻んだニンニクと牛乳で柔らかくなった食パンをボールに放り込んで、音楽に合わせて思い切り手を突っ込み、ハミングをしながら材料を混ぜ込んだ。

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アルボンディガスの材料を丸めながら、昔子供が小さい頃に好きだったハンバーグを思い出していた。ピーマンが嫌いでよくみじん切りにしてはハンバーグに隠して入れてたな。

主人には「他の食べ物で栄養を補えるのだから、無理して食べさせる必要ない」と言われていた。確かに今思えば、そこまでする必要あったのかなと首をかしげてしまうけれど、あの頃は子供の苦手を克服するために全力でサポートするのが親の務めだと思っていたから。

そうして丸め終わった後、オリーブオイルを熱してアルボンディガスを揚げる。

これだけでも美味しそうだけど、まだ中まで火が通っていないので我慢、我慢・・・

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オリーブオイルを一旦減らし、そのままのフライパンを使ってニンニクと野菜を投じて炒める。100CC…普段使わない量だが、先日のエッセイでかもめさんのアドバイスを学んでいたから、ここは素直に。

野菜がしんなりしたところでトマトピューレとミートボールを入れる。

鍋の中であっという間に水分とオリーブオイルがせりあがる。ひと混ぜしてから火を弱めて蓋をした。

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家には圧力鍋がないので、ここはじっくり腰を据えて煮込むことにし、私はワインを開けた。

かもめさんは、UPされたレシピを再現する人を「つくるんベーロ」と名付けているが、私は親子代々キッチンドランカーなので、作りながら酒でベロベロになる。

つくるんベロベロ」だ。タチが悪い。

少し経って鍋を開け、野菜とトマトスープを味見する。

ああ、「オリーブオイル100CC」の意味が理解できた。野菜から出た水分とバランスが取れて、とても美味しく仕上がっている。

トマトの甘みを感じつつチーズをかじり、ワインが進む。

いい感じでテンションがあがるので、普段やらない拭き掃除やら洗濯ものやら、唄いながら家事を済ませることができるのが唯一、「つくるんベロベロ」のメリット。ここでのワインは家事のスピードを上げるニトロのようなものだ。

そうして過ごしているうちに、鍋一杯に出来上がったアルボンディガス。

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明日はパスタにかけて味わおう。

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これをスペインで食べたら、また違う味になるのかもしれないな。

私は争奪戦にはならない。明日子供のところへでも届けよう。

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ねえ、見てる?

私さ、病気で金もステイタスも社会的信用も資産も失ったけど、

あなたに怒られて辞めていた本も沢山読んで、いろんなところへ足を運んで、素敵な出会いも沢山あった。そのおかげでこんな美味しい料理にも出会うことが出来たんだよ。いいでしょ。

私はますますアホで元気だから、まだしばらくそっちに行けないよ。やりたいことも行きたいところもいっぱいできてしまったから。

だからもう心配せずに、ショートホープでも好きなだけふかして、バーボン片手に下手くそなジミヘンでも弾いて、可愛い天使に囲まれて過ごしてちょうだい。

またね。

(#つくルンバ:情熱はアルボンディガスの中に -Fin-)


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