海

わたしは海の底から脱した。

小さな浮島の上で一人夜空を見ている気分だ。そこにはたまにボートでひとがやってきてお話ししてまた彼らの場所に帰っていく。わたしの脳内は今こんな情景のように感じる。
穏やかだ。

孤独ではない。
現実ではありがたいことに多くのやさしい友人たちに恵まれ、楽しく日々を過ごしている。なのにどうしてこんなに穏やかな静けさがあるのか。
包み込みたくなるようなあたたかくやさしい何かがこころにあるからだと思う。このこころにある何かは穏やかでやわらかい。絵を描くとき、私はいつもこのこころの感覚を描いている。人と接するときもだいたいそう。余裕ができた証拠だとおもう。たまにこれがこの何かがわからなくなって乱暴になってしまうけど、それは余裕がないのだろう。

ひとにやさしくしたい。包み込みたい。なんだかんだ私も人類愛みたいなものがあるんだと思う。この世は地獄。でもだからこそ、その世界でがんばる人々のことは切ないくらい好きだ。昔のわたしならここまで寛容にはなれなかったし、もっと殺伐としていた。

この変化は、わたしが海の底から脱することができたからだと思う。海底から見る遠い水面と陸地から見える輝く海は違った。私はどちらから見た景色も忘れずにいたい。

わたしひとりでできることは限られている。だからこそ、いろんなひとの手を借りる必要がある。小さな世界からこの世の生きづらさをすこしずつ減らしていきたい。
でも実際にはあそこにいて救われたのではなく、離れることで寛解に近づいた。運営自体がしんどかったというのもあるけど、それだけじゃない。

私はもっとより良い場所や環境をつくっていきたい。水面に向かって勇気をだして泳ぎ始めたひとを支え応援できるようなコミュニティをつくりたい。寄り添うだけじゃ足りない。もっとこれについてかんがえなきゃいけない。

わたしに今できることはなんだ。