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大量廃棄とファストファッションからの転換点

ファストファッションが台頭して久しく、安くておしゃれな洋服が、身近で気軽に買えるようになりましたね。衣服費=洋服にかけるお金も下がり続け、コロナ禍で人前に出る機会が減ったことも影響していますが、新しい服を1着買うための金額が、以前と比べてお安くなっている感覚が皆さんにもおありではないでしょうか。

対して地球環境への意識も急速に高まっており、SDGsといったキーワードがあらゆるメディアで取り上げられ、安い服をたくさん買ってすぐ捨てる、という消費行動に対してマイナスのスポットライトがあてられることも増えてきています。

人をわくわくさせることができるファッションですが、それだけでは許されない時代となり、軌道修正を余儀なくされています。
アパレル業界のこれまでの変遷から、特に非難を浴びている大量廃棄の問題と、これからのあるべき姿について考えを巡らせてみたいと思います。

ファストファッションからの脱却

1990年代初頭まではステータスを象徴するような高級ブランドが好まれていましたが、バブルが崩壊すると、可処分所得の減少とともに価値観が変化し、低価格が売りのファストファッションがアパレル市場を席巻するようになりました。

もはやバブル前を知らない方も多く、ファストファッションの定義自体も変わっていますが、ライフスタイルの変化、地球環境への配慮などにより、見栄や金額だけではなく、商品の裏側にあるコンテキスト=文脈を重視する「ポストラグジュアリー」という新しい潮流に変化しています。

売る側・買う側の双方が、従来の消費サイクルから脱却しようと動き始めている時代ですね。

注文服から大量生産、対面販売からECへの変遷

そもそも既製服が一般的になったのは1960年代、それまでは好みの生地を選び、体型にあわせて作る一点物があたり前でした。仕立て屋さんに注文したり、お母さんが夜なべして縫ったりと、新しい洋服を手に入れるハードルが高く、古着市場も活況だったといいます。


その後ミシンが普及し、平均的な体型の型紙から同じ洋服を大量に作れるようになると、誰でも気軽におしゃれを楽しめるようになり、経済の発展にも寄与していきました。

販売の手法も近年大きく変化しており、店員さんが丁寧に接客して好みや要望を聞き取り、サイズが合うかどうか試着した後に購入する従来のケースに代わり、インターネット上で検索して購入・決済まで完結するEC(オンラインショッピング)が主流になりつつあります。

ECの利便性は革命的

通信販売は以前からありましたが、媒体が紙面からデジタルに置き換わることにより、豊富な情報やヴィジュアルから安心して商品を選べるようになりました。

実店舗での購入においては、好みの商品を探すために複数の店舗を回り、サイズがなければ店員さんに在庫を確認し、買った商品は家まで持ち帰らなければなりません。

家にいながら何時でもアクセスができ、大量の選択肢から商品を検索、サイズ感やコーディネートの情報なども参照しながら、ボタンひとつで商品が家に届けられるオンラインのユーザ体験は、コロナ禍でより一層 ECへ傾倒するきっかけになっています。

もともと洋服はオンラインで購入まで踏み切るのが難しいと言われていましたが、急速に浸透している背景としては、こうしたデジタル技術の向上とは別に、大量生産した安価な商品だから失敗を許容しやすい、という側面もあるのではないでしょうか。

大量廃棄がもたらす負担

気軽に購入できるようになった洋服は、より気軽に捨てられるようになりました。
たくさん消費されることで経済が発展し、誰もが新品の洋服を着ることができるようになりましたが、負の影響が表面化し、人々のエシカル=倫理意識の高まりとともに、廃棄に対する目はより厳しさを増しています。

環境における負荷

日本総合研究所によると、国内で供給される洋服から排出されるCO₂は約9500万トン、およそ83億立法メートルの水が消費されます。 1着の服を作るのに、CO₂は25.5キロ(ペットボトル約255本)、水は2368リットル(バスタブ約11杯)が必要となる計算です。

環境に対して多大な負担をかけて作られる洋服ですが、大事に長く着られることもなく、日本の衣料廃棄物は年間約50万トン、うち90%以上が焼却もしくは埋め立て処分されています。

メーカーの負担

ファストファッションのサイクルは、商品を製造して提供するメーカーにとっても負担の大きいものとなっています。

安くないと売れない=大量に作って1枚あたりの原価を抑える必要があり、売り切れを悪とする機会損失という考え方も相まって、過剰に生産して売れ残りを処分する方式が業界のスタンダードになっています。

またスピードの速いトレンドの移り変わりも、流行遅れの商品を生み、処分される在庫を増やす大きな要因になっています。

メーカーとしては、同じ商品を売れる分だけ生産するのがもっとも効率的ですが、長続きしないトレンドと価格競争に巻き込まれる形で、売れた分の原価に加えて廃棄分のコストを上乗せして負担するのが常態化しています。

メーカー側の利益は損なわれ続け、本来めざしたい良質な素材の使用・丁寧なものづくりが、内部的にもしづらい状況になっています。

職人の仕事が表に見える洋服の世界

洋服は他の工業製品と比べて、作り手の技術が品質に与える影響が大きいと言われています。
ミシンなどの性能はもちろん進化していますが、多様な素材にあわせた調整、ステッチや仕立ての美しさなど、職人の技術レベルによって個体差が出やすく、一定レベルを超えると作品に近いプロダクト領域となります。
素材においても、丁寧な工程を経た生地は上質な着心地を与えてくれます。

スピードを上げるために省略される工程、価格を抑えるために安価で雇われる技術者など、ファストファッションにおいては「仕立てや着心地の良さ」も毀損され、それを手に取るわたしたちも、良い商品の目利きができず、生活の質まで落としてしまっているかもしれません。

ファッションがもたらす豊かさを再構築

流行りのファッションを気軽に楽しむことができるようになった時代、SNSで披露するには十分な品質のトレンドアイテムが、スマホで簡単に手に入るようになりました。

その反面、長持ちしない洋服を使い捨てにする文化が定着し、環境への負荷はもちろん、その消費行動自体が批判の対象になりつつあります。

良質な洋服に対するリスペクトと、それを所有して長く大切に着る文化。一度はファストファッションに舵を切ったアパレルメーカーと消費者の双方が、本来あるべき豊かさに向けて、振り子を戻し始めているのかもしれません。

私たち「fitu」は、お直しが当たり前の文化をつくっていきます。

ダメになったら捨てる→より安価な服を選ぶ→ファッション文化の劣化→QOL(生活の質)の低下
といったサイクルを逆回転させ、上質な服が選ばれる世界・丁寧な仕事が評価される世界に転換していきます。

fitu WEBサイト


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