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よびし通信no.25

よびし通信no.25  令和4年11月12月号

【笑てたらあかん!丁子麩の辛子和えは、怖い顔してこさえるもんや】

 報恩講(親鸞聖人の祥月命日に行われる行事)と、おとりこし(報恩講の期日を繰り上げた家庭などでのお勤め)の時期が今年も巡ってくる。昔のおとりこしと言えば、それはそれは盛大に行われていた。村中の親戚や隣近所をよび、大勢でお勤めをあげていた。母は数日かけて十八~二十品の料理を作りふるまっていたという。台所は料理でいっぱい。大きな鍋やお鉢がいくつも並んだことを覚えている。
 時代は変わり、今では家族だけで集まるささやかなおとりこしになってしまった。それでも昔と変わらず母が作り続ける料理がある。丁子麩の辛子和えだ。年に一度、お目にかかれるよびしの食。それが今、無性に食べたくなっている。おとりこしまで待つか?いや待てない。自分でやってみよう。できればチューブの辛子ではなく、粉辛子を使ってみたい。早速スーパーで材料を調達し、母に連絡を入れる。
 「辛子をかく(練る)時はな、へらへら笑いもってかいてたらあかんで。怒りながらかかんと辛ならへんで!」と母は言う。昔からそう言い聞かされていたらしい。お椀に粉辛子を入れ、お湯を少しづつ注ぎながら勢いよくかいていく。普段のストレスをここぞとばかりにぶつけてみる。目が痛い。ストレスどころか、辛子との闘いだった。辛さが飛ばないようにお椀に和紙を被せ、ひっくり返して寝かせる。不思議と辛子は落ちてこない。この堅さこそが辛さの証らしい。

辛子はお椀でかいてひっくり返す


 ふと、父から聞いた話を思い出す。「丁子麩の辛子和えが好きな人がおってな、鼻がつ~んとするほどの辛さやないと美味ない!甘いのはあかん。もっと辛いのを作ってくれ!って言うってはったな。」「男衆は皆、こんなん辛ない!どうもあらへん!て言うて、ほんまは辛いのに我慢比べしとったな。」
 丁子麩の辛子和えとは、怒りながら作り、辛いとは言ってはいけない料理なのか。でもなんだか楽しそうに聞こえていたのは気のせいだろうか。
 教えられるままになんとか作り終え、いざ実食。丁子麩一切れを口に入れてみた。目に涙が浮かぶほどの辛さだった。「こんなん辛ない。まだまだや!」と笑い合うおっちゃん達の声が聞こえてくるような気がした。


丁子麩の辛し和え
(上級者向けの辛さに挑戦)


材料


丁子麩 16個
きゅうり1/2本
練り辛子大さじ1.5~2杯(粉辛子・お湯 適量)
味噌 60g
砂糖 大さじ8杯
酢 大さじ5杯

作り方 


①丁子麩を水に浸す


②お椀に粉辛子を入れ、お湯を少しずつ加えながら練る。練り終えたらラップ(または和紙)で蓋をしてお椀を裏返しにしておく。


③すり鉢にいりごまを入れて油が出るまでよくする。


④味噌、砂糖、酢、練った辛子を③に入れ、さらにすり混ぜる。


⑤きゅうりを輪切りか半月切りにして塩揉みしておく。


⑥水に浸した丁子麩を巻きすに並べて巻き堅くしぼる。半分の大きさに切る。


⑦丁子麩ときゅうりを④に入れて和える。


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