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エンプラ向けCSチームの能力開発プログラムの現在地

こんにちは、テックタッチのVP of Customer Successをしている垣畑です。

先日、当社が提供する「テックタッチ」が、DAP市場における国内シェア1位を3年連続で獲得しました。

これを受け、今回は事業成長が続く中で、どのようにしてCSチームのスケーラビリティを確保しようとしているか、ご紹介させてください。

なお、この機に私だけでなく代表の井無田や他の経営陣によるnoteも公開していますので、よろしければご覧ください。



これまでの組織づくりプロセスの振り返り

おかげさまで好調な事業を下支えすべく、当社のCSチームは今年度(2023年)の上期に20名を超えました。
生産性の指標も注視しつつも必要と結論づけたこの組織の拡大に伴い、いわゆるCS活動=お客様への支援の高度化と並行して進めないといけないのが、これまで以上のスピードで必要なだけ組織を大きくできることに加え、大きくなっても今まで通りきちんと動けることだと思っています(両方あわせてスケーラビリティだと思っています)。

大きくなったものの今までどおり動けなくなった例
(ドラゴンボール33巻より)

そのため、チームとしての長期目標の設定や、皆で目標を追いかけるときに大事にしたい価値観(行動指針)の言語化(詳細はこちらをご参照ください)に続いて、実際にいかにして必要なスキル・マインドセットを持ったチームを継続的に作る体制を敷けるか、という重要な課題に取り組む必要が生まれます。

能力開発プログラムに特に注力した理由

当然ながら採用も育成も大事な要素で、考えられる様々な打ち手、すなわち「生産性を上げてたくさんの人数を採用をしなくても回せるようにする」、「採用しやすくする」等、今後もできることは全てやっていきたいと思っています。

その中で、2023年上期は特に能力開発体制の整備(下記の図の最下段)に注力しました。
スケーラビリティの観点のみならず、今いるメンバーも強くなるし、何よりチームの心理的安全性やモチベーションも上がると考えたのが理由です。

皆のキャリアの大事な何年かの期間をスタートアップに投下してもらう以上、単に会社が成長しSOでリターンが期待できる、というだけでなく、個人もめっちゃ成長できる環境でありたいと考えています(もちろんお客様の価値提供が最優先ではあるのですが)。
そしてそれは「カオス耐性」のような少し曖昧なものだけでなく、いまだに再定義され続けているカスタマーサクセスという枠に閉じることもなく、世の中で広く評価されるスキルも含まれているべきで、これがキャリア的な意味で安心して働ける職場につながると思い、そこに至る道を整えるのが個人的に一番やりがいがあるなと思ったのも理由です。

ちなみに念のためですが、なぜ能力開発体制を整備すると採用もしやすくなるのかというと、これにより採用できる母集団がずっと広くなるためです。
コンサル、SIer、エンプラSaaSでのプロマネ経験者のような当社のCSにフィットしたスキルを既に持っている方(これまでの採用の主な母集団)に限らずとも、特にカルチャーフィットには確認しつつ、コミュニケーション力や学ぶ意欲等、よりポテンシャル寄りの要件を満たす方々にもJoinしてもらえるようになります。

実際すでにこれまでのキャリアでIT、プロマネどちらにもそこまで触れてこなかったメンバーも、高い思考力・コミュニケーション力を活かしてキャッチアップし大活躍してくれていますし、その土壌が整いつつあるのを感じています。

この方向で突き詰めれば、ずっと先には大企業のように新卒一括採用➔自社内で能力開発という形に行き着きうるのかも知れないななどと考えています。

能力開発プログラムの具体的な設計内容

では、具体的にどんなスキル要件を、どんなプロセスで強化していけば良いのでしょうか
この方法論については数多の先例に基づく書籍・コンテンツがあると思いますので、本稿では当社の具体的な事例(2023年度時点)の共有をさせて頂きます。

①まず前提としての、当社CSで身につけるべきスキルの整理

まず前提として、当社の大企業の社内システム向け事業における、CSチームのコンサルタント職(いわゆるCSM)では、私自身(VP)を除き以下の3つのグレードを設定し、担当範囲を決めています。
(なお、業務の少し特殊なCS活動の概要については、以前執筆したこちらをご参照ください)

要するに、個別案件のアクセスから始めてアカウントマネジメントやチームマネジメントに移っていくというもので、これらの役割に必要なスキルをまとめると、以下となります。

真ん中の列:
エンプラ向けCSに必要なコアスキルであるプロマネや折衝力、それを支える大企業の組織理解をまずは鍛えていきます
DX/情シス部門に加え、営業、人事、経理、調達など様々な部門とやり取りするプロジェクトマネジメントを数多く経験でき、非常に学びがいのあるコンテンツだと思っています

左の列:
シニアコンサルの後半あたりから、上記のスキルをベースにして成約前のPJ計画の提案などの上流工程での合意形成、個別のプロジェクトを超えたお客様との関係構築、およびアップセル機会の模索など、「セールスチームの支援」にその役割を拡大していきます。

アメリカでもCSの役割の拡大がトレンドのようですが(どちらかというと生産性のためにやむを得ずそうなっている模様)、こっちのほうが色々とやれて明らかに楽しいので嬉しい流れだと思っています。
個別プロジェクトのどこにリスクがあり、どう対応するのか、自分の判断が後工程に大きく影響を与える役割を担うことになります。また顧客の組織、担当者ミッションを理解したうえでより深いところで相手の課題を理解することで、支援の幅が大きく広がります
(このあたりの、有償サービス作りや提案についても近々別途記事にまとめたいと思います)

右の列:
またこれと並行してピープルマネジメントも極力、体系的に身につけることが重要です。
まずは自分自身のマネジメント(タスクのみならず、モチベーションなどソフト面も含む)からはじめ、徐々に自分が働くメンバーに視野を広げていき、1on1でのコーチングやアサインによる機会の提供などを通して、うまくステップアップしてもらう経験を積んでもらいます。
言うまでもなく、ここがある意味最も深い領域です(私自身も勉強中の身です)。このスキルを通して一人では到底なし得ない成果を出すことができるようになり、チームの屋台骨となっていきます。

ただし、これは典型的なパスですが全員必須のパスではありません。さすがに全員がピープルマネジメントのパスを進まなくてはならないとも考えておらず、顧客支援のスペシャリストを始め、プロダクトマネジメントやセールスへコンバートするキャリアパスも今後、整備していきます。
(例えばPMMへのキャリアパスとするつもりで、機能要望の優先度付けを行い機能の利用率をKPIに持つ『CSチーム内プロダクト担当者』も設置しています)。

②各カテゴリで、さらにアクションに落としやすい粒度で
 中項目・小項目をまとめる

これらをもとに、特にチーム作りに深い知見と強いパッションを持ってくれているマネージャーの鈴木と共に、要件の小項目まで決め、各項目で各グレードごとに満たすべきスキルのレベルをできるだけ具体的に決めていきました。

グレード別スキル要件(抜粋)

例えば「プロジェクトマネジメント」の大項目には、「青写真を描く力」(リスク検知、PJ計画の策定)などが含まれており、各グレードで目指すべき要件を定めています。
例えば、もっとも基礎的な要件を求められる「コンサルタント」職では「プロジェクトマネジメントの一般的な主要素と、当社における各要素の重要性・リスクを理解し、自分なりにPJのリスク評価ができる」「各システム毎の一般的な業務の理解に基づき一般的に最適な作成スコープを特定できる」といった内容となります。
ここは能力開発を目指す本人が「要するに何ができるようになったら良いのか」「実際に何をすれば経験を積めていると捉えて良いのか」をできるだけスムーズに理解してもらうため、極力、解像度を高めることを目指しました。

色んなCSチームの方とお話をする機会の中で、ここまで詳細に決めている例はあまり多くないようなのですが、この要件の解像度が高いと、能力開発の運用時にアドバイスしたり、期待値を示したりしやすくなる(後述)ので、お勧めです!
(なお、私の前職のコンサルティングファームはもっと細かったのですが、間を取りました。笑)


③運用のプロセスを整備する

ここまでは当社のプロダクトおよびビジネスのモデルから、ある程度は自然に決まる内容だと思うのですが、ここから少しずつ独自性を加えています。
まずは以下の全体図をご参照ください

まず各メンバーの現在地を可視化するための評価の仕方は、一緒に働いた数名のメンバーによる360度評価を採用しています(2023年末時点)。特にシニアコンサルタントの評価に於いて、ピープルマネジメントの要素を評価するためにはジュニアメンバーの評価も必須と考えたためです。

また、MGRと議論して直近、鍛えたいポイント(いわゆるDevelopment Needs)を決める際は、その項目にきちんと集中できるよう、1、2項目に絞るルールにしています。

これに基づきプロジェクトごとの振り返りの際にフィードバックをする(後述)のですが、これをチーム全員にも見えるように共有し、誰でも気づいたときにフィードバックできるようにもしました。

プロジェクト開始前の擦り合わせ用Notionページ

加え、個別プロジェクトへのアサインに際して、支援の質と能力開発の両立のため、案件ごとに最低2名のアサイン体制を敷いています。

もちろん、各人のスキルやナレッジが最も高いところを活かしたプロジェクトにアサインするのが、短期的にお客様に届ける価値を最大化する道ではあります。しかし、それでは成長機会が限定されるデメリットもあります。
そこで、長期的にお客様にさらに幅広い知見・支援を届け、また担当者のキャリアにも幅が出るよう、ある担当者が鍛えたい(今は経験が浅い)要素についてはもう一名の担当者(あるいはMGR)が補助輪としてカバーすることで、チャレンジしやすい環境を作っているものです。
シニアメンバーにとっては相手の強み・弱みをより明確に意識することになり、コーチングスキルが鍛えられる機会にもなることを期待しています。

重要度の大半を占める!現場で運用の徹底

さて、最も大事な運用(上記の図の右側)の部分ですが、当チームでは(少なくとも現在は)担当する全てのプロジェクトの開始前/後に、鍛えたいポイントについて、「ここの経験を積むために、このタイミングでこの論点のオーナーシップを持つ」という議論をしておき、また結果どうだったかのフィードバックを実施しています。

ここの粒度は非常に重要で、例えば前述の「リスクを理解し、自分なりにPJのリスク評価ができる」スキルに関して

  • ①現状を把握し、プロジェクトのリスクを洗い出す

  • ②リスクへの解決策のオプション出しと優先度づけする

  • ③解決策についてお客様の想定される反応を考え、どこまでなら譲歩できるか予め考えておく

など準備すべきことがあるのですが、経験値の高いメンバーは①から全部作り上げてもらう、逆にジュニアなメンバーの場合は、時間がかかりすぎるため①②はシニアメンバーがカバーする、等の分担を行います。
(これを解像度高く行うために最初のスキル要件を決めています)

非常に愚直なプロセスで、工数もかかってしまうのでどこまでやるべきか、鈴木とも議論したのですが、やはりチームの強さの根幹を握るプロセスであり、ここのバッターボックスに何回、立てるかが最重要という点で認識が一致し、今の全件対象の運用に至りました。

エンタープライズ向けに"プロジェクト"と呼べる規模のプロセスを四半期ごとに数件単位で立ち上げ、運用まで回せる経験ができる環境こそが、当社のCSチームのキャリア形成機会として最も顕著な強みだと考えているためです
(今後、継続していく力が問われています!笑)。

運用を回してみての現在地と今後の目標

実は上期に座学中心のオンボーディングプロセスを一生懸命(笑)作ったのですが、やはりメンバーの声としては「座学も大事だがやはりOJT」のようで、明確に狙いを定めたアサインとフィードバックのプロセスはとても有意義だという声をもらっています。
やはりOJTの中でいかに効率的に経験値を積んでもらえるかのプロセス設計が大事だなと痛感しましたし、今後も改善を続けていきたいと思っています。
余談ですが、11月のオフサイトでは、(本プログラムだけの成果ではありませんが)特にメキメキとスキルを伸ばしてくれたメンバーを表彰したりもしました。

上期に、特に行動指針を体現したメンバー、そして大きな成長を遂げたメンバーに
"テックタッチ CSアワード"を授与させていただきました。笑

こちらのプロセスがきちんと回るようになれば、もとの目的である、来年度以降の採用計画の検討に於いて、即戦力重視の採用方針からポテンシャル人材に自社で迅速に立ち上がってもらう採用方針に徐々にシフトできる可能性があります。

また、プロダクトと顧客に触れる機会の最も多いCSというのは本来、人材輩出のハブであるべきだと思っており、上述の通りセールス領域をはじめ多くの周辺スキルが身につく機会に恵まれた当社CSチームが、そのモデルになれたらと考え、CSチームの長期目標のひとつにも掲げています。
またぜひどこかで中間報告をさせてもらえたらと思います。


長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
世の中のベスプラをベースにしつつも、当社の特色をふまえ色々と工夫した点もあるとは思いますので、もし参考にしていただければ幸甚です。


また、当社CSチームは引き続き積極採用中です!
本稿を読んでもし興味を持って下さった方がおられましたら、ぜひご連絡をお待ちしております。

募集職種はこちら
https://herp.careers/v1/techtouch/requisition-groups/8b8afd64-1b56-49aa-b5fc-b2e1068ba693


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