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チームの行動指針(バリュー)をどうやって決める?


こんにちは、テックタッチのVP of CSをしている垣畑です。
今回は今年、当社CSチームがかなり大きくなったタイミング(約20名)で行動指針を決めたときの決め方やポイントを共有させて頂きます。

今回のようなアイデア出し(発散)から収束までを多人数で行う合意形成プロセスでは、メンバーの巻き込みやトップダウン/ボトムアップの釣り合いと、出されるアイデアや収束後の成果物の質、加えて効率性といった意思決定の要件をバランスよく担保するのが難しいと思っていて、これらを解決しようと試みた記録になります。
(「どんな行動指針か」についての記事はあったのですが、「こんな決め方にしました」という記事を見つけられなかったのも理由です笑)

若干、地味なテーマではありますが笑、これから自分のチームの指針(或いはMVV等)を決めていこうと考えている方に、少しでも参考にして頂ければ幸いです!


なぜ今、行動指針が必要だったか

まず、会社としての行動指針は3年以上前からある中で、なぜCS独自のものが必要と考えたのかご紹介させてください。

おかげさまでテックタッチの事業は堅調に成長しており、私のいるCSチームも今後の成長に備え、陣容を拡大してきました(いわゆるCSM=当社のコンサルタント職が23年初から半年で9➔15名。ここに加え、Opsやサポートメンバーもいます)。

これに備え、昨年からチームのスケーラビリティを担保するための取り組みを進めてきました。たとえばCS活動の「型」を洗練させたり、マネージャーをアサインして指揮命令系統を整理したり、またスキル・経験は発展途上でも優れた素質を持つジュニアメンバーに入社してもらうことで、マネージャーやシニアメンバーと協力して品質の高い支援を数多く提供できる体制を築いたり、等の取り組みを進めてきました。

各チームが大きくなりすぎたので、目下CSM-Cチームを組成中


しかし当然ながら、元からいたメンバーも新メンバーも、個々人のスキルや思いの強い領域には差があり、プロセスを固めても実行する内容に差が生まれます。またその前提として、そもそもの自分たちの「らしさ」やCS活動のスタイル、あるべき方向性をシンプルな言葉で共有する必要性が高まっていました。

そこで、こうしたソフト面の背骨を通し、チーム拡大の再現性を担保すべく、今年度に入って以下の施策を新たに立ち上げました。
・    CS行動指針の策定
・    能力開発プログラムの整備
・    評価制度の確立

うち、本日は特に、CS行動指針の策定のプロセスについて共有させていただきます。取り組みは主にTLP(Techtouch Leadership Program)からCSに参画してくれているTommy(富田 雅基)がリードしてくれました(ありがとう!)。


行動指針はどんなものであるべきか

まず要件を以下の通りまとめました。

  • A. CSの業務に根ざし、CSチーム独自のもの(他のチームに当てはめたらフィットしない、くらいが理想的)

  • B. 理念だけでなく、現場での、メンバーの行動を導ける粒度のもの

  • C. 皆で納得感を持てるもの

これはどの会社も似ているのではないでしょうか。ひょっとするとCは必須ではないのかも知れませんが(チームは拡大し続けるため、最初のメンバーの納得感だけ担保することの優先度が下がるのでは?等)、私たちの検討は比較的タイミングが遅く、既にチームが大きかったため、多くのメンバーが腹落ちする内容を自ら提案・議論して決めることが、長期的に効いてくると捉えたものです。またこの後、能力開発プログラムや評価制度に行動指針を紐つけた際の納得感や自分事化にも、強く影響すると考えています。


どのようなプロセスで決めたか

上記の要件を満たしつつ、繁忙期だったこともあり笑、できる限り効率的に進めるため、以下のプロセスで進めることにしました

ステップは多く見えますが、こうすることでVP(私)自身が最も大切と考える要素を込めつつ、チーム全体での質の高いアイデア出し・議論も両立させようと考えたものです(しかもできるだけ短時間で。笑)。

これだけだと分かりにくいので、以下にもう少し詳しく記述します。

①皆の考えるときのとっかかりを作るため、まず他社のバリューや行動指針をざっと調べて整理

いきなり行動指針をつくろうと声をかけても、トピックがフワっとしているだけに、メンバーから良いアイデアを出してもらうのはなかなか難しいと思います。そこで、考えるとっかかりとして他社の行動指針やバリューについてざっと調べました。
(最終的に当社CSにフィットするものを考えていくのですが、参考にすべき他社事例は必ずしもCSに絞る必要はないと考え、全社のバリューの事例を集めました)

バリューというものは、、、などと大上段に語ることはできませんが笑、ざっくり以下の2パターンがあるなと感じています。

  • A. チームが目指す方向や進め方について、状況次第でどちらも正解になりうる選択肢があるときに、「こちらを進め」と明確に示すもの

  • B. チームとして身につける行動特性(こちらは原則として常に正しいと考えられる)について、あらためて明確に強調して示すもの(現状のチームの強み弱みどちらの場合もある)

個人的にはA.のタイプが特にチームとしてのポジションを強く打ち出すことになるからこそ、チームを特徴づける効果が強いなと感じています(一方で、数は少ない印象)。

全部で30-40社くらい参考にさせていただきました

② 他社事例を共有しつつ、チームからアイデアを募集(発散)➔事務局で特に重要そうな4つの概念に絞る(収束)

検討時点で18名での議論が想定されたため、網羅的なアイデアを、極力みんなから集めるべく、まず①で集めた情報を伝えつつ、アンケートフォームでアイデアを広く集めました。もちろん私自身のアイデアもここで出しました。一旦、ウォーミングアップ的に発散させた形です。

その後、本番のオフサイトでの議論で発散させすぎず深さを出すため、一旦、集まったアイデアを整理し、特に要件を満たす(CSチーム独自のもので、皆の行動を導ける)ものを見つけていきました。
ここで巻き込み範囲を少し広げ、オフサイトでの議論を活性化させたい考えから、一度、少人数の有志メンバに入ってもらって対面で議論しています。

例えば、「お客様の耳に痛いことも伝えよう」「もっと社内でフィードバックしようよ」という趣旨のアイデアが多かったのですが、これは「社内外問わず言いにくいことをきちんと伝えるべき。我慢強く気遣いタイプの多いウチのチームの強みの裏返しで、苦手な人が多いよね」というニュアンスとともに、ひとつの概念としてまとめていきました(図の右上の箇所)。数は覚えやすく幅の出しやすい3-5個が良いと思います。

オフサイトの最初にチームに見せた、皆のアイデアのサマリ

③CSオフサイトで班ごとに言語化(領域を絞って発散&収束)

ここが本番です。
班ごとに分かれ、②でまとめた概念をキャッチフレーズと補足文にして発表してもらいます。
メンバー側目線では、オフサイト前に自分が出したアイデアがどこかしらに含まれていて、考えやすくなっていたと信じています笑。

なお、オフサイトの限られた時間でひねり出したキャッチフレーズの中に必ずしもベストなものが揃っていないかも知れないと考え、敢えてここで文言を最終化はしませんでした。

一方、短いキャッチフレーズは自分では思いつかないけれど、コンテンツには強い思いを持ってくれているメンバーもいそうだったので、改めてメンバーの「こういうニュアンスを込めたい」も、シンプルな言葉でなくてもいいので、理由とともに記述してもらいました。

キャッチフレーズとして即採用できそうなアイデアも、長文だけど言いたいことを言い切るタイプのアイデアも出してもらえました


④ オフサイトで言語化されたアイデアを、事務局でファインチューンして最終化

大事なニュアンスは残しつつ、かといって過度に込めすぎず、言葉は極力シンプルにしつつで、思ったより難航しました笑。

まず各マネージャのこだわりコメントをもらい、あとはTommyと私で最終化します。
「ここは敢えて目的語は言い落として想像してもらう方が広がりが出るんじゃ…」「この言葉は平仮名に決まりですね」「このフレーズ最高なんだけど、英語入れたら浮くかな…」「この言葉じゃ勢いつけすぎで当社っぽさが足りないですよ」などなど、俳句教室みたいなやりとりを2-3時間にわたり繰り返し、熱血野球小僧のTommyが実は繊細な言語感覚の持ち主であることを発見したりしつつ、以下の4つのフレーズ、補足文に固めました。

結果的にですが、各指針の位置付けも細かいところで違いが出ました。
『俯瞰』は、エンタープライズ向けCS活動を行う現チームのコアコンピタンスを表していて、『はっきり』は気遣い性の皆の強みが却って弱みにならないようにする決意表明として、『ハブ』は、顧客接点を最も濃く長く持てるというCSの特性を最大限生かして会社・社会へ貢献する姿勢を改めて強調する意図を持った指針になっています。
また『かんたん』は、特に当社CSの現場で多い「巻き取った方が少なくとも目先はお客様のためになる」という短期長期の正解が相反する状況で、長期的なお客様の成功を優先し、シンプルなものを、あくまでお客様自身で作ってもらうことが最善だという意図を込めています

どんな風に役に立っているか

こうして作った行動指針は、幸いメンバーからも好評で、思ったより自然に浸透していると感じています(このあたりはマネージャーの鈴木、安藤がきちんと動いてくれているのも大きい)。
例えばミーティングの場で、策定直後から「これって『かんたんを追究する』からはみ出しかけてない?」、「僕、フカンがまだ弱くてぇ」、「あの場面『はっきり言う』べきところかも」といった形で登場するのを聞く場面がありました。
私自身も1on1などで、このように皆の頭の中に共有された概念があると、当初の目的である「あるべき方向性を示す」ことがこんなにしやすくなるとはと驚くシーンが何度もありました。

また、オフサイトの議論の中で、各自メンバーが特に大事にしたい(オーナーシップを持ってチームに浸透させることにコミットしたい)指針をひとつ、選んでもらいました

自分の好きな行動指針を自分で選ぶ

これに基づいて施策の割り当てをしたり、個人個人の目標に反映したり、或いはチームにその自分の強みを最優先で伝播させる役割を持ってもらったりしています。

あと、もっとも重要なポイントとして、行動指針はこの後に構築した能力開発プログラム作り施策でも考え方の土台になりました。こうすることで、一貫したチーム方針を能力開発、評価に浸透させることが可能になっています
(こちらもいつか共有させて頂ければと思います)


コンテンツは以上となります!
いかがでしたでしょうか。もし疑問点などあればお気軽にDMください。本件についてもCS全般についても、ぜひ情報交換させていただきたいです。わずかでも皆様のお役に立てれば幸いです。

また、当社CSチームは引き続き積極採用を行っています! もしこの記事を読んで当社チームに興味を持ってくださった方がおられましたら、ぜひご気軽にご連絡ください!

以下、主にエンタープライズ向けカスタマーサクセスに関する過去の私の記事もご参照ください!

スーパーエンプラ向けSaaSのカスタマーサクセスのオペレーション、組織づくりで考えたこと(前編)
【後編:これまでの歩み】スーパーエンプラ向けSaaSのカスタマーサクセスのオペレーション、組織づくりで考えたこと


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