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押し倒したいけど押し倒せない【恋の備忘録】

恋の備忘録。

先日、むこうこと私の彼女とお出かけをした。これまで数か月単位でのブランクが普通だったから、2週間ちょっとしか経たずに会うのは初めての事だった。だからと言って何か特別感を覚えたわけじゃなく、むこうに会う前の電車の中でのわくわく感はいつも通り。でも普段よりちょっと落ち着いてたかもしれない。

私たちカップルは周りから見たら超奥手系カップルで、付き合い始めてからの5年間でのキス経験はゼロ。別にそういう気持ちが無いわけじゃない。ただむこうがちょっとスキンシップに苦手意識があるのとうちがむこうに合わせすぎた結果、今でもハグより先のことに手を出せないままでいる。

そんな私たちがデート先に向かったのはおしゃれな漫画喫茶。以前友人カップルに「むこう(彼女)と甘えにくい」ことを相談した所「外だと甘えにくいけど、ネカフェの個室とかだとお喋りもしやすいしたくさん甘えられるよ!」と紹介され前回から行き始めた。ネットカフェ、漫画喫茶と言っても形態はさまざまで、場所によっては個室の壁が薄かったり実は半個室だったり雑居感あふれていたりする。そんなところをデート先にはしたくないから、おしゃべりもしやすいような個室で清潔感のある場所をネットであれやこれやと調べ、素直に「貴女に甘えたいのでここに行きたいです!!」と言ったら意外とあっさり了承してくれた。まぁ一応これでも付き合いは長いから…

そうして行った初めての漫画喫茶デートは、部屋に入ったばかりはまだお互い肩に力が入っててお喋りで少しずつ空気を和ませて、お互い話が止まらなくなったあたりでやっと手を繋ぎ始めて退室時間間際でやっとハグして…って結局やってること自体はいつもと変わらなかった。

で、そんな前回のリベンジ?となった今回の漫画喫茶デート。前回の反省から利用時間を少し長めにとった。案の定最初の30分ぐらいはお互い肩の力が抜けなくて、喋ってるうちに段々と打ち解けていく。それからやっと、うちが「手、つなご…?」って言って手を繋ぎ始める。
この時既にお互い個室の中うつ伏せ状態で寝っ転がっていた。本当はもっと体をむこうに寄せて腕を絡めるようにして手を繋いでも良かったのかもしれない、というかそうしたかった。でもこれがな何故か難しい。お互いの距離を近づけようとしても自分の体が「近づいたらだめ!!むこうに迷惑係るでしょ!!」って訴えてくるし、腕もまるで同極の磁石みたいに反発力を受けてるみたいで、むこうの手に自分の手のひらを乗せるのが精いっぱいだった。心臓はバクバクするし何か悪いことをしているような感じがする。でも恥ずかしそうに顔を逸らすむこうをみてちょっと安心する。

それから時間が少し経って、手を繋ぐのにも慣れてきたころに今度はハグをする。横になりながらのハグは初めてで、自分の足の位置が彼女の足よりも下にあったから疑似的に自分はむこうより身長が低くなる。普段なら彼女の頭の先ぐらいの高さにある自分の目が今は彼女の肩と同じぐらい。それだけで緊張感が増してしまう。
緊張のせいか、むこうはあまりこちらに体を近づけようとしない。そこに透明な壁があるのかな、自分も何故か近づけない。むこうに嫌な思いをさせちゃうかもしれないから近づきたくない。でも甘えたい。

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好きな人をを傷つけてしまう事は怖い。相手の困ったような顔を見ると自分に罪悪感が募る。だから今まで無難な方向に逃げていた。
中学時代から付き合ってきたとはいえ高校も大学も違ったし、LINEで日々やりとりはしててもスキンシップに関することは不明なことが多かった。今でも話には聞いてても実際は正直よくわからない。
普段から恋愛相談(8割惚気)している友人にも「付き合ってるんだったらそこまで怖がる必要はないんじゃない?もうちょっと攻めて行ってもいいんじゃないかなって思うよ」ってよく言われる。
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彼女自身、自分がスキンシップに苦手意識あることを少し気にしているようだった。つい最近「確かに苦手、でも特別嫌悪感を抱くわけじゃない」って言われた。さっきまでの雑談の中でも同じようなことを口にしてた。
それでちょっと、今日は少し強引に行こうかなって気になって、見えない壁を右手で突き破ってみた。突き破った右手は床とむこうの体の間を通り過ぎる。むこうは不意を打たれたかのように全身がビクッてして、反射的に更に距離を置こうとした。でもうちの両腕が彼女を包んでるからもう逃げ場なんてない。そのまま自分の胸を彼女の体に近づける。
それでもむこうは力んでこちらに体を預けようとしない。腕一本分ぐらいの隙間がある。
仕方ないから、強引に、むこうが抗えない力で、腕を曲げてむこうの体をこちらに寄せた。「わ」、と彼女の声が漏れる。

ぎゅぅぅぅ。

ちょっと強引だったなって思うちょっとの罪悪感と、でも胸いっぱいにむこうを抱きしめてる幸せな気分と、彼女を独り占めしてるっていうイジワルな気持ちが入り混じって何かが満たされてく。
でもすぐに恥ずかしさが勝って、腕の力が抜けたと同時にむこうの体がするりと抜けた。
幸せだけど、疲れた。でも幸せ。


そのあとはもう横になること自体が疲れて、膝を伸ばして座りながら駄弁っていた。もうこれ実質ピロートークじゃない?(?)

大学生カップルなんてそこそこの歳月重ねたらハグなんてお茶の子さいさいで、いちゃらぶキャッキャウフフも経験してるんだろうな。実際自分の周りでも、ネット上の同世代の人たちのブログ(それこそnote)でもそういう話を聞いたことあるからそうなんだろうな。だから私も先の段階の事を全く想像しないわけじゃない。
でも普段と違うハグだけでこんなに緊張するのにその先なんて…思い出すだけで恥ずかしいしこれ以上はもう無理だろと思ったり、いつか恥ずかしさとかもなくなるのかなって考えたり、そんなことより周りの大学生カップルはすごいな(こなみ)って感じた。

押し倒したいけど押し倒せない、ちょっと気弱な彼氏の備忘録。