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【読書】満ちる腕

ほう、と新幹線で息を吐いた。
良いなあ、素敵だな。
あと、好きだ。

液体の気持ちのままで会うときは心の中で「ごめん」と思う

人に会うときに、心一杯の期待をしていると現実が期待を下回る。
相手は全然悪くないのにガッカリして、変な空気になって、(ごめんなさい)と思う。

楽しみだなと思って10分前に着いたら『ごめん遅れる』と連絡が入る。
5分くらい遅れても何とも思わないけれど、私の気持ちとの差に悲しくなる。

会う前に大きな出来事があって、そこに心が取られたまま、待ち合わせの場所につく。
心の用意が整わないままに聞こえる「ごめん、待たせた?」に申し訳ない思いが押し寄せる。
申し訳なく思うけど、減った心はすぐには帰ってきてくれなくて、また会ってくれなかったらどうしようと思いながら想定よりも早く家に着く。


先日、妹の家を久しぶりに訪れた時、なんの心の用意もしていなかったのに、すんなり会えてすんなり馴染めてすんなり会話が始まった。
あんなに世間一般と離れている子にずっと大事にしてくれる友人や恋人が途切れないことが不思議だったけれど、あれは妹が持っている性質なのかもしれない。

液体のままの気持ちでいられる。仲良くしてくれる。

ごめんねと思うこともなく
お互いに気を使うこともなく
そのまんまの自分たちで。

液体の私と正体不明の妹。
仙人にでもなったら良いよ、あなたは。


ーーーーー

べつべつの人間なのに花の咲く匂いで一緒に笑えてよかった


花の咲く匂いで一緒に笑える。
当たり前のような気もするけれど、そうじゃない気もする。

例えば田舎道で何かを燃やしている匂いとか、百貨店に入った時のなんとも言えない緊張感のある匂いとか、アジア雑貨店の深くて重いのある匂いとか。
べつべつの人間なのに、匂いに対して抱く印象は共通している部分が多い。
一生活習慣とか、そういう個々人で違うところ以前の何か人類としての基礎で、感情の大幅な動き方は決まっているんだろうな。

お花の匂いをかいで、
私が本を選んだ理由を話して、
相手の話を聞いて。

その全部で笑えたら良い。

分かり合えなくても同じじゃなくても、
話をして一緒に笑える関係は、
それだけで特別で相手を選ぶことなのだろうと思う。


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たまたま行った本屋さんで
たまたま見つけた本が良きものだった。

また読み返そう。



おわり。

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