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【読書】博士の愛した数式/小川洋子

先日「どうして理系に進学しようと思ったんですか?」と尋ねられた。

私は両親とも理系出身で研究者をしていたし兄姉も理系に進んでいたから、文系に進む選択肢はそもそもなかった。
けれど、もし何かのきっかけがあるとすれば、その一つは間違いなくこの本だと思う。

この本を初めて読んだのは、小学生か中学生か、そのくらいの頃だった。
数学者の博士が教えてくれる数字の秘密がとても特別なものに思えて、読み終わった後に、理論にロマンを見つけて楽しめる人になりたいと思ったことを覚えている。

その時の印象的な数字は28。
28の約数は1・2・4・7・14・28。
28を除く5つの数字を足し合わせると、1+2+4+7+14=28。

完全数だ。

それを知ってからずっと28は好きな2ケタの数字No.2だ。
実際に大学の部活で『もしマネージャーに背番号をつけるなら』という話が出たときに即決で「27か28」と答えた、どちらもプレーヤーがいたから無理だったけど。


本の中にこんな一説がある。

素数の性質が明らかになったとしても、生活が便利になるわけでも、お金が儲かるわけでもでもない。~中略~しかしそれは数学の目的ではない。真実を見出すことのみが目的なのだ。

私が現在行っている研究の目的は、真理の探究である。
人がどうして/どうやって生きているのか、ひとつのタンパク質が人の体の中でどのように機能しているかを調べている。

ということは、中学生の時に面白いやってみたいと思ったことを、私は今叶えているのだ。
知らず知らずのうちに夢が叶っていた。

私は自分自身でほどほどに頑張って75点、手を抜いて60点くらいの人生を歩むんだろうなあと漠然と思っている。
しかし、こうやって考えてみると、昔からしてみたかったことを既に叶えていて、今の将来の夢のひとつである研究職として就職も決まり、しかもやりたい研究ができる会社で、まあなんというか。
人生上々ではないか。

そう考えていくと、明日からの実験も頑張れそうな気がしてくる。
なんてったって中学生の頃の私が憧れていたことをしているんだからね、頑張って楽しまなきゃ損だ。


理系に進んだことに特に理由はなかったし、
好みから言えばたぶん文系が適している。

けれども、中学生の頃に憧れたことを今している自分を少しだけ誇らしく思えた。
し、「人がどうして人としていきられるのか」という私の長年の疑問の答えを出すための研究ができていることがひっそりと嬉しかった。

これからも頑張ろう。



おわり。

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