(連載:就活サバイバルvol.7)「なんであなたが!?」暇そうにしていた女が内定を取った、カラクリ
ついに本格化した就活。慶應3年の美希は、OB訪問に説明会に忙しい。漠然と大手企業に行きたいと考えており、手広くやっている。が、彼女はことごとくエントリーシートで落ちてしまう。悩む彼女は、内定を掴むことが出来るのか!?
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「勇人、商事決まったらしいよ。物産も、住商も受かったらしい」
地元で英気を養ったはずの美希だが、久しぶりにゼミ仲間と会って、すぐに落ち込んだ。
前回会った時とは変わって、皆、顔が生き生きとしている。
誰々は、広告代理店、誰々はメガバンク、保険…などと、噂話で持ちきりだ。
美希は、内定が一つもない自分が情けなく、ただちにこの場を離れたい思いに駆られる。
さらに追い討ちをかけたのが、麻子の言葉だった。
「私も無事に内定をもらえて」
聞けば彼女は、大手不動産会社の一般職に内定したという。
皆、「さすがだな」などと言っていたが、美希は首をかしげた。
確か、あの企業は一般職の募集をしていない。皆総合職で受けるしかないはずなのだが。
どういうカラクリかは分からないが、一般的なルートではない気がする。
−あんなに暇そうに遊んでたくせに、内定もらって…。
美希の中に、ドロドロした感情が湧いてくる。自分はこんなに頑張ったというのに内定はゼロ。一方、暇そうに優雅に遊んでいた麻子が内定を取っている。
この事実が許せなかった。この場にいたくないと思った麻子が会場を飛び出すと、エレベーターホールでばったり勇人に出くわした。
「美希、帰んの?」
さすがは商事内定。オーラが余裕に満ちている。
「ちょっとね…」
適当な言い訳をして立ち去ろうとすると、何かを察したのか、「一杯飲んで行かない?おごるよ」と、勇人が声をかけてきた。
「ごめん、そんな気分にはなれないから」
「だからこそ飲むんだろ」
そう言って勇人は、美希の腕を掴んで歩き出し、近くのカフェ兼バーのようなお店に入った。
「ビール2つお願いします」
勇人は、美希に何を聞くこともなく、ビールを注文した。
「そんな辛そうな、いかにも不幸なオーラ出してどうしたんだよ」
絶対に理由は分かっているはずだ。あえて質問してこなくて良いのに。
美希が「内定もらえなかったの」と、視線を逸らしてぶっきらぼうに言うと、勇人が「だろうな」と言い放った。
これには、頭にきた。少しは慰めてくれるのかと思ったのに、ただ自分の内定を自慢したいだけではないか。
幼稚舎卒で、父親はオーナー社長でコネもある。そんな勇人に自分の気持ちなどわかるはずもない。
ムカついた美希が、「私なんかあんなにボロボロになったのにゼロ。それなのに麻子は内定もらって…」と、悔しそうに言うと、勇人は「コネじゃん、麻子」とさらりと言った。
「え?」
呆気にとられる美希に対して、勇人は続ける。
「コネの人間と同等に考えちゃいけないだろ。悔しいだろうけど、就活ってそんなもんだよ。
学歴、コネ、ルックス、頭の良さとかさ。自分を客観視しないと絶対に受からないよ。
美希はさ、“自分は頑張ってる”とか“こんなにやってる”ってアピールしてるけど、客観視出来てないと思うよ、自分のこと」
「自分を客観視…?」
勇人は続ける。
「美希はさ、自分の学歴、コネ、ルックス、頭の良さ、それぞれ何点くらいだと思う?
ちなみに、地方出身の慶応経済学部なんて、めちゃくちゃいるんだよ?その中でどう差別化するのか、考えたことある?」
美希はこの時、勇人が何を言っているのか、まだ100%理解出来ていなかったが、少しだけ、明るい未来が見えた気がした。
→続く。
●次回予告
勇人の助言をもとに、自分について考え直す美希。そこで気づいたのは…?
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