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ミシュランへの道 やきとりや人生

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#焼き鳥

ミシュランへの道 やきとりや人生22

甥からの暴言の仕打ちは、◯さんには非常に効きすぎる過ぎるくらい効き過ぎた。逢うたびに 「なんで?こんなことになったのか?」と いつも嘆いていた。そりゃそうだろう。同情するしかなかった。 期待のホープの甥にここまで酷い仕打をされたら、誰だってノイローゼにもなるだろう。そんな中、 からだの調子も悪くなる一方で改善の余地がない。 食事たびにインシュリンも欠かさず、食べたいものが制限されていた。 グルメの◯さんには、厳しい日々が続いていた。 それでも体重は減らず、100キロ以上の

ミシュランへの道 やきとりや人生19

Oさんと弟の溝はさらに深まり、もはや修正不可能だった。Oさんは幼い頃の話をした。いつも人気の的であったOさんは、兄弟の自慢の兄だった。 地元スーパーのモデルになったことがある。当時、弟はそのモデルになった兄の広告を友人たちに見せびらかしたという。 それだけ昔から仲が良かった。トラブルやけんかや一切なく、ごく普通の仲の良い兄弟として一つ屋根の下暮らしていた。 時とともにお互いの生活になり、離れ離れに生活していると、いいことも悪いことも、誰かの責任にしたがるものだ。 弟は

ミシュランへの道 やきとりや人生18

弟は、高齢両親の離婚を企み実行した。その結果、小さな街では珍事となり、ウワサになった。Oさんの母は認知症の初期段階だった。 弟にそそのかされて、離婚届にハンコを押してしまった。まさに実弟の意のままだった。都合いいように弟は母を手なずけた。 高齢になると誰か一緒にいないと不安になるという、心理を利用したのだ。 長年、仲の良かった両親の縁を切り裂き、ただ財産目当てで母親を支配した。さらに母親にもDV 暴力をふるい、金をむしり取っていくようになった。 ある日、郵便局から電話

ミシュランへの道 やきとりや人生17

◯さんの大成功を地元では、不思議に思っていた。 「たかが焼き鳥だろ?」 「新宿で焼き鳥?」 「どうせ安い焼き鳥とお酒を出す店だろ?」 「どうせ失敗するのに決まっている」 「一串500円?」 「焼き鳥屋で新宿で成功するなんて、あり得ない」と 嫉妬とねたみで親戚がウワサしていた。 Oさんは、北海道美〇市という地元に住民票を置いていたので、確定申告の際、納税額がケタ違いで田舎の税務署をビックリさせた。市でもトップ3に入る高額納税者だった。 なぜ?都民じゃなかったのか?それは地元

ミシュランへの道 やきとりや人生16

ミシュラン受賞後、前年比の倍の売り上げで経営状態は順風満帆だった。経営に長けていたというか、Oさんは事業経営に向いていた。 〇〇大学では経営学を専攻していたわけでもなく、ただただ熱意と努力の結果だった。成功したコツとは?誠意とセンスらしい? さらにすごいのは、開業以来赤字を出したことがなかった。そしてOさんのライフスタイルも、どこかのセレブ?のように変化していった。 住居も店の繁盛と同時にエスカレートしていった。代々木時代の当初は新宿御苑の見える上層階のマンションだった

ミシュランへの道 やきとりや人生15

あれから、ミシュランの電話があってから数か月が過ぎた。その間にもミシュラン関係者が来店したのか?していないのか? わからないが、実際に連絡があるまで、期待と緊張そわそわした落ち着かない興奮がつづく毎日だった。この時期のOさんは、会うといつもミシュランの話をしていた。 うれしさと期待が交差していた。 「もし落選したらどうしよう?」 という不安があった。だからこの時期は店のスタッフ全員に、 「どんなお客さまにもそそうがないように・・・」 と以前よりも強く言っていた。 そして

ミシュランへの道 やきとりや人生14

開業して6年目になると、口コミや食べログなどで評判になり、そんなウワサを聞きつけた外人さんや、日本全国から、さまざまなお客さんが来店するようになった。 その中にはミシュラン関係者もいた。ミシュランとは、評判いいのお店やグルメ店を紹介する世界一有名な情報誌だ。 ミシュラン関係者が来店した理由は、〇〇〇がオリジナリティに溢れたメニューで、お店のコンセプトや雰囲気が、ミシュランが評価すべき対象にあると言う基準があり、〇〇〇に目にとまったのだ。 ミシュラン関係者は一般客に紛れ、

ミシュランへの道 やきとりや人生11

西新宿本店に移転してお店は順調に滑り出した。しかし頭痛のタネが一つ二つ・・・人を雇うというのは、簡単にはいかないものだ。 機械じゃないし、意志があるし、生活があるので、めんどくさいイロイロな個性を持っている。◯さんの言うことを、素直に受けてテキパキ動く人がいなくなった。 社会経験のない学生であればなんとか、社会に厳しいOさんの叱咤激励にもめげず、反発せず「ハイ」と言うのだが、社会を経験している社会人や特ア留学生は、なかなかうまくいかない。 言えば反発されることもしょっち

ミシュランへの道 やきとりや人生7

代々木の半地下の店舗に、新規オープンした。ちょっとおしゃれで、隠れ家的なダイニングキッチン焼き鳥と地酒が飲める店「◯◯◯」をオープンした。オープン前には、友人たちを集め開店のシュミレーションをした。 ただ酒と比内鶏の焼き鳥が喰えるので、腹いっぱい食べて飲んだ記憶がある。前の夜勤担当の木村さんは、ここぞとばかりに死ぬほど食って飲んでいた。店内はカウンター席が10、テーブル席が3というこじんまりした店だった。厨房は狭く巨漢の◯さんは、汗だくになりながら、テキパキと狭い厨房を動い